スポーツ選手はもちろんのこと、ヒップアップ効果や疲労をためにくくなるなど美容、健康にも必須!
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良い「感覚」に頼っていませんか?
みなさんこんにちは。ゆる体操やっていますか?
ゆる体操をやっていると色々な良い感覚ができますよね?
フワッとするとか、暖かいだとか、人それぞれだと思います。
しかしこの「感覚」というものは中々曲者なのです。
特にスポーツやダンス、武道武術などで上達を目指している人にとっては体に関する「感覚」は大事なことではあります。体の「感覚」なのでスポーツ業界では「身体感覚」と呼ばれることもありますが、「身体感覚」に頼るといわゆる「上達落下線の法則」(上達のための努力がいつの間にか上達に寄与しなくなってしまうこと)にハマってしまう事があります。
「え?身体感覚って身体意識と同じ意味ではないの?」
と思われる方もいるかもしれませんが、実は明確に違うものです。
今日はその「身体感覚」と「身体意識」についてお話したいと思います。
ー目次ー
1.「身体感覚」と「身体意識」は別物
まずここで「身体意識」と「身体感覚」は別物であるということを明記しておきたいと思います。
入手困難となっていますが、高岡先生の著作「身体意識メガトレーニング」の表でもはっきりと別項目の事として描かれています。
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とは言っても、スポーツやダンス、武道・武術をやっておられるみなさんは、試合や練習等で、良いパフォーマンスができた時、その時の「体の感覚」=「身体感覚」というのが記憶として残っていると思います。
例えば早く走れた時などは「羽のように体が軽い感覚」がするでしょうし、すごいピッチングができた時は「腕が鞭のようにしなる感じ」がするでしょう。
そして、ある意味当然のこととして、その後のトレーニングはそれを頼りにさらにトレーニングをすると思います。
しかし、本当に絶好調の時の「身体感覚」を別の時になんとか再現しようと思ってもできない事ってありませんか?
いくら「羽のように軽い体」を再現しようと思ってもできない、「鞭のようにしなる腕」を再現しようと思ってもできない、そういうことは多いと思います。
なぜこういうことが起こるのかというと、「身体感覚」というのは結局のところ、身体に起こっていることを言語化したり画像化(=イメージ)で表現したものにすぎないからです。
人間はおよそ200の骨と600の筋肉で構成されています。合わせて800のパーツの組み合わせを考えてもその数は天文学的な数字になります。その組み合わせの妙を言葉で表現することは特別のセンスがないと、実は大変に難しい事なのです。
「身体感覚」とは、その時ただ単にそのように感じた、というだけのことで、実際に体に起こっていることと、自分が表現している事には単純にデータの量だけでも雲泥の差があります。その乏しい「身体感覚」だけで実際に体に起こっていること、脳に起こっていることを的確に再現しようとしてもそれはかなり難しいと言えると思います。
つまり「身体感覚」は頼りにならないということです。
さらにわかりやすい例として(古いですが)野球の長嶋茂雄さんの例が挙げられます。
彼は特に現役時代は独特の表現で知られていましたが、
「ボールが来たらバーッと行ってスパーンなんですよ」
みたいな表現をよくしていました。まさに彼にとってはそういう「身体感覚」がしていたので、そう表現したのだと思われます。
しかし、これではもとから「バーっと行ってスパーン」な人?でないととても理解できません(監督になってからは、それでは伝わらないことを感じたのか、さすがにそのような表現は減っていきました)。
トップの選手が自分の体のことをどう感じているか、どのような「身体感覚」をもっているか、それはそれで大変興味深い事ですが、だからと言って他人では聞いてもわからない事が多いですし、それを自分の参考にしようと思っても競技レベルに差があればあるほど、それは難しくなります。
昔から武術の世界では「達人の真似をしてはいけない」という言葉がありますが、特に武術の場合はどのような動きをしているかがわからないように技術が発達する傾向が強いので、見た目を真似しても正しい方向にはいけませんし、ましてや達人の「身体感覚」は、聞いても意味がわからない事が多いです。
では、「身体意識」はどうでしょうか?
「身体意識」には発見者である高岡先生による明確な定義があります。ここでそれを説明するのは大変なので詳しい定義にご興味がおありの方は高岡先生の書籍にあたっていただいた方が良いと思うのでご紹介しておきます。
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この本にもあるように「身体意識」は「体性感覚的意識」の省略表現で視覚的意識・聴覚的意識(映像化や言語化と密接な関係がある)とは違う系統の意識である体性感覚的意識によりできる意識で、生物の機能として原始的な時代から(視聴覚的意識より以前に)成立しているものです。これを考えると「身体意識」はその定義の通り体性感覚をベースに、「身体感覚」は体性感覚を一部含みながら、より視覚・聴覚をベースにしている表現であるといってもよいでしょう。
結局のところ視覚的意識・聴覚的意識は身体を直接的に動かすものではありませんから「身体感覚」に頼ったところで、一部の天才的な人たち以外は上達は難しいと言えます。
ですので、身体をコントロールすべきは身体意識の方であって、「身体感覚」で表現されるものは自分の体でおこっていることの、ほんのわずかなものに過ぎないのです。
しかし、身体意識を頼りにすべきと言っても身体意識は顕在化しにくいという問題があります。
そして、よほどの才能がないと、良い身体意識である「極意」を備えている人はいないのです。
そのようなわかりにくいものを頼りにしろと言われても、実際にはどうすれば良いのでしょうか?
身体意識を頼りにするには
実際の日々のトレーニングではどうすれば良いのでしょうか?
野球でもサッカーでもバスケットボールでもなんでもいいのですが、トレーニングにおいて自分の「身体感覚」が頼りにならないとすればどうすれば良いのでしょうか?
実は話は簡単なのです。
それはゆる体操、ゆるトレーニングの種目を準備運動に取り入れるということです。
ゆる体操、ゆるトレの一つ一つの方法はそれぞれが良い身体意識が作られるようにできています。
ですので、専門の種目を始める前にゆる体操・ゆるトレをやっておくのです。
ちゃんとゆる体操・ゆるトレができると、専門種目の動きを始めた時、今までにない動きが「勝手に」生まれてきます。
上手くはまると、「なんでこんな避け方をできたのか?」とか、「なんでこんな鋭いボールが飛んでいくのか?」とか、そういった感じになります。
なんで?と言っても、それはもちろんゆる体操・ゆるトレの効果なのですが、自分がゆる体操・ゆるトレをすることよって一時的に身についた身体意識でも、自分ではその全容を認識することは実は難しいので、「なんで」という感じがするのです。
ゆる体操・ゆるトレによって生まれた動きは、正しい方向性であることは間違いありません。そして、ここからが大事なことなのですが、その一時的に身についた動きが全て正しいわけではもちろんありません。バスケでいうと、MJやレブロンがとりあえず最高だとして、彼らと同じ身体意識のレベルに高々数十分のゆる体操・ゆるトレでなれているはずがないのです。(逆にそうでないと「人間の可能性」という面から考えて、非常につまらない状況になってしまうでしょう。)
そして、そのように不完全であるので、次に同じようにゆる体操・ゆるトレをやって良い効果が出たとしても前回と全く同じ状態になることはあり得ません。
また、さらに厄介なことは良い身体意識が一時的に身についたとしても、それをその都度同じような「身体感覚」として感じるかはまた別問題なのです。
トレーニングをした結果、同じように良いセンターが通っても、また同じように良い裏転子ができても、それをどう感じるかはその時の体調や状態、その種目での考え方にも左右されます。
例えば裏転子が出来た時の感覚として
脚の運びの軽さ、高重心、強い加速力
などがあります。
しかし、「強い加速力」は相撲の立ち合いでもあり得ますが、「高重心」は相撲の立ち合いとしては良くない感覚として捉えられているかもしれません。
しかし、この両方は裏転子がある時に得られる「身体感覚」です。
また、腕プラーン系の体操で得られる身体意識として「重」というものがあります。
「重」が効いていればいるほど体はゆるんでいますが、「腕が重い」という「身体感覚」は普通は五十肩や極度の疲労を表現するものです。
一般の方にとっては腕プラーン振子体操で得られる「身体感覚」は「腕が軽い」というものです。「重」が生まれた方が腕はゆるんで動きやすくなるので、動かしやすい事が目的の場合、動かしやすさを「軽い」と表現してしまうのです。
そのように様々な要因によって、表現される「身体感覚」は変わってしまうのです。
しかし、実はその都度同じ「身体感覚」でなくても良いのです。なぜならば身に付けるべきは「身体意識」だからです。
むしろ良いイメージを求めようとすると失敗するという事はゆる体操・ゆるトレの世界では最も注意すべき事です。
頼るべき身体意識は正しくゆる体操・ゆるトレをやっていればいずれ身に付きます。
最初は自分に身に付いた身体意識が顕在的にはわからなくても、何か専門の動きをしたときに(一時的に)身についた身体意識が発動して、それは必ず「良い効果」となって現れます。
それを繰り返していけば、「身体感覚」の奥にある「身体意識」の世界が見えるようになってきます。
ここを間違えて、「身体意識」でなく「身体感覚」の方を追うと、「上達落下線の法則」にはまってしまい、壮絶なスランプに陥ります。
この点はぜひ気をつけたいものです。
最後にゆる体操・ゆるトレを競技に活かそうとしておられる方々のために、注意する事を何点か挙げておきます。
注意する事
- ゆる体操・ゆるトレ以外の方法で良い動きを再現しようとしない
- 常態化するまで粘り強くトレーニングする
- 脳疲労に注意する
1.ゆる体操・ゆるトレ以外の方法で良い動きを再現しようとしない
バスケやサッカーで、日頃からゆる体操・ゆるトレに取り組んでいる方が、例えば相手をかわすときに良い動きができたとします。そしてその動きが鮮烈であればあるほど、その動きのイメージ、感覚は忘れなければなりません。
なぜかというと、そのイメージ・感覚は、あくまでも一時的に身についたゆる体操、ゆるトレによる身体意識が発動した結果であって、原因ではないからです。
そして、それはあくまで一時的に身についたものなので、次第に失われていきます。
この時にやるべきことは、もう一度ゆる体操・ゆるトレをやって身体意識の方を強化することです。
ゆる体操・ゆるトレ以外のトレーニングは基本的に身体意識の理論に基づいていないので、良い身体意識を身に付けることでパフォーマンスアップを狙うならば、よい身体意識が身に付くゆる体操・ゆるトレ以外のトレーニングに頼るべきではありません。
そして、体操をやっている時はプレーのイメージも捨てなければなりません。
なぜならば具体的なプレーのイメージをすることによって体操の課題への集中力が削がれてしまうからです。
例えば、大腰筋の代表的なトレーニングであるチャップリンプリン体操をやるとします。
この時に
「さっきこの体操やってからプレーすると、足が軽く動いて、しかも体幹にキレが出たんだよなー」
と思いながら体操をすると、もうチャップリンプリン体操の効果が出ないのです。
足が軽く動く事と体幹のキレというのは確かにチャップリンプリン体操の効果ではありますが、課題ではありません。
チャップリンプリン体操の課題は(ゆる体操初級レベルでは)「チャッ・プリン」というリズムと擬態語の語感、そしてプリンを落とさないこと(笑)です。
そこをちゃんとしないと体操の効果はそれなりになってしまいます。
このように、余分な情報は必ず体操の効果を削ってしまうのです。
2.常態化するまで粘り強くトレーニングする
1で述べたように、結局のところ自分の感覚やイメージなどはたいした役に立たないので、求める身体意識が自分のものとなってプレー中に自然に発動ようになるまで繰り返しトレーニングするしかありません。
そして、身体意識を身につける事を目的にトレーニングするにしても、広い視点で取り組むことが必要です。
例えば身体運動に必須の身体意識である「裏転子」を身につけたいとします。
裏転子を身につける初歩的で代表的なトレーニング方法はウッススリスリ体操(ハムスリ)です。(初歩的だからと言って、熟練者が無視して良いトレーニングでは決してありません。)
ハムスリはゲーム中でもすることが可能なので、スポーツ選手は特に習熟する必要があります。
だからと言って、同じことをやっていると必ずマンネリになってしまうのが人間の常ですし、脳への刺激も単純化してしまうので、別の裏転子系の体操にも取り組んだ方が当然良いのです。
その取り組み方は、これというものがあるわけではありません。人によっても違うし、その時の体調によっても違うでしょう。
ただ、熟練するためにどれかのトレーニングを中心に据えて、一定期間取り組むことは大事です。
そのバランスは人それぞれだということです。
3.疲労に注意する
1や2の内容に注意しながら毎日トレーニングに励んだとしても、どうしても良い結果にならない事があります。
そういう時は疲労、特に脳疲労を起こしていないか注意した方が良いでしょう。
体を動かすためのソフトである脳が疲労していては、そもそも良い身体意識を身につけることは難しいと言えるでしょう。
しかも脳疲労も短期的なものから中長期的なものあります。
短期的なものは、その日のゆる体操・ゆるトレーニングで脳が疲労してしまう状態です。
これは比較的わかりやすいです。やっているうちにどうにもこうにもゆるんでこない感じになってくるからです。
そういう時は怪我の防止のためにもトレーニングをやりすぎないで、軽く動かすだけにしておくか、さっさと寝ゆる黄金の3点セットやブレインゆるをやると良いと思います。
中長期的な疲労はうっかりすると気が付きにくいですが、もう最初から全然効いてこない感じがする時は相当の疲労がたまっている事が考えられますので、注意してください。
また、他の原因としては全然別の部位が極度に疲労を起こしていることも考えられます。
例えばこんな例があります
裏転子系のトレーニングをしたら調子が良かったので、その後真面目に取り組んでいたのだが、少しずつ効果が出なくなり、気が付いたら体がガチガチになってしまっていた・・
などの例です。
これは裏転子の効果が素晴らしかったので、裏転子系ばかり取り組んでいたところ、知らない間に別の部位が固まってしまっていることに気づかず、それが徐々に裏転子にも影響を及ぼし、最終的に全身が固まってしまったという事が考えられます。
これは結局のところ、裏転子が身についた時の良いイメージを追ったために起こった事です。
身体意識「裏転子」についての詳しい記事は・・・
このように疲労に注意しないと、トレーニングの効果が最大限発揮されず、時間ばかり消費することになりかねません。
私も疲労には注意しているつもりですが、調子の良い時ほどやり過ぎてしまって、好調が維持できないことは多々あります。
理想は最短の時間で最高の結果を産むことですから、無駄な疲労には気をつけたいものです。
まとめ
私もどうしても自分の感覚に頼ってしまうことはあるのですが、結局のところ最初からできる天才と言われる人と、頑張ってもなかなかできるようにならない私のような普通の人を分けるのは、身体意識を頼りにできるかどうかの部分が大きいと思います。
ただし身体意識のトレーニングは城攻めに例えられるように、これだけやっていればOKというものではありません。常に多角的に取り組む事が必要です。
ちなみにゆる体操は基本的なものを一通りやると多角的に取り組めるようになっているので、初学者には最適な体系と言えるでしょう。
ちなみに最も頼るべき身体意識はやはり地芯(重力中心としての地球の中心が身体意識化されたもの)と軸(=センター)だと思います。
この記事が皆様の健康・美・高能力の助けになればと思います。
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