「ゆるむ」と「ゆるす」の不思議な関係とは?
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振子運動は楽しいぞ
みなさんこんにちは。
突然ですが、ゆる体操でいわゆる「振子系」の体操ってありますよね。「腕プラーンおじぎ体操」とか「腕プラーン振子体操」とかです。
あの体操ってすごいんですよ。
今日は自分がリハビリや教室でした経験をもとに「振子系ゆる体操」の素晴らしい効果についてお話をしたいと思います。
子供は振子の動きが大好き
ゆる体操では体の部位が振れる体操が多いですよね。「腕プラーン振子体操」や「腕プラーンおじぎ体操」などは代表的ですが、「すねプラプラ体操」や「手首スリプラ体操」も振れる動きが入っています。
この「振れる動き」というのは子供は大好きです。適当にプラーンプラーンやり出したら楽しくって止まらなくなったりする”いちびった”子もいますよね。
特に腕は構造的に振りやすい上に、振っている感じが他の部位に比べてわかりやすいのでプラーンプラーンやっていると楽しく感じるのでしょうね。
しかし、素朴な疑問として
「なんで腕振ってたら子供は楽しく感じるのか?」
という疑問も湧いてきます。
それを少しご説明いたします。
実際に本物の振子の運動を見てみましょう。
振子が運動をしている時、外からかかっている力は何でしょうか?
そうですね、基本的には重力だけです。
振子が左右に振れる時、実は左右への力は働いていません。
見た目は左右に振れているので一見何かの力が左右方向へ働いているようにも見えるかもしれませんが、振子の運動を起こすのは下向きの力である重力だけなのです。
横向きの力は振子の運動には不要ですので、振子がぶら下がっている支点部分の摩擦がなければ、理論上は振子は重力がある限りいつまでも振れ続けます。
人間の腕を前後に振る場合は、肩関節の摩擦が普通の振子より大きいのでいつまでも振られるわけではなく、実際には前後方向の力も必要です。それでも重力を最大限利用して、前後方向の力を最小限にすることができれば、腕が実際の振子のように感じられます。
実際に振子系のゆる体操をやればわかりますが、この時腕は力が抜けて勝手に振られているような感覚になります。
子供はそもそも無駄な力が抜けている存在なので、それに親和性のある振子の運動は本質的に楽しく感じるのです。
私はこれが子供が振子の運動が好きな理由と考えています。
大人も実は振子の運動が大好き
では振子の運動が好きなのは子供だけなのかというと、実は大人(というよりも人間であれば)も振子の運動は大好きなのです。
私は別に振子の運動なんて好きじゃありません
と思う方もいるかもしれません。
でも私が務めているクリニックで肩回りのリハビリをしているとこんなことがよくあります。
リハビリで腕プラーン
50肩や肩こりがひどい人たちには私は腕プラーン振子体操を必ず指導します。
リハビリですので普通に教室で体操を習っている人に比べて肩の動きは悪い方ばかりです。
ですので肩の痛みが出ないように注意深くやる必要があるのですが、場合によっては達人調整も入れながらある程度の時間かけながらやっていくと、肩が悪い方でも次第に腕が振子のように感じられるようになります。
そして最初は悪い方の腕だけやっていただくのですが、効果が出た頃を見計らって、両腕同時にやってもらうと、むしろ、腕プラーン振子体操に関しては悪かった方の腕の方が上手になっています。そうなると患者さんはモチベーションが一気に上がりますし、左右の違いにより、
「振子の運動は快適だなぁ」
という感覚を思い出すのです。
そして反対側も同じようにやっていただいて両方が揃ったな、と思われる頃に両手同時にやってもらうのですが、効果が十分に出ていると私が感じられたら、医学的な背景を踏まえて患者さんに何が起こってそのようになったかを簡単に説明するようにしています。
通常のゆる体操の教室ではこのような説明は必要ないのですが、リハビリとしてやっている必要上この説明はある程度必要なのですね。
さて、この時ほぼ全員の方が面白い反応をします。
なんと私が説明をしているあいだ、ずっと両腕をプラーンプラーン振り続けているのです。
普通の大人は、その人から見て先生にあたる人が言葉で説明を始めると体を動かすのはやめると思いませんか(笑)?
でもほとんどの人が私の説明を一生懸命聞きながら腕を振り続けています。
私は整形外科のリハビリで最初にこのことに気づいた時、正直びっくりしました。
何がって、それだけ子供の意識状態に戻っているということですよね。
子供なら先生が喋っている時に体を動かすことは普通です。これは一時よく言われた「多動」などということではなく、子供は体がゆるんでいるので止まっているより動いている方が自然なだけです。ですから大人が自分の立場を利用して、(顕在的にも潜在的にも)動きを制止しない限り、ほとんどの子供は生理的欲求に従って体を動かしてしまいます。
そしてそれは身体意識に基づく欲求なのです。
それに比べて大人は動いているより止まっている方が自然(というより動くのが苦手)です。
これに関しては高岡先生の理論であるフリーフルクラムとレギュラームーブメントの関係で説明できます。ご興味のある方は以下の書籍をご覧になってください。
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ですので普通の意識状態では大人は動く必要がなくなると途端に動かなくなってしまいます。
しかし、この腕プラーン振子体操は他の体操よりも強力に子供の頃の意識状態に戻してしまう作用があるのでしょうか。
この体操をやってもらうと(他にも増して)本当にみんな楽しそうに腕を振り続けるのです。
そして、ある時期から私はそれを指摘して説明することにしました。
具体的には
「〇〇さん。私が説明している間もずっと腕を振っていますよね?」
こう言うと大抵みなさんハッとされます。要するに自分で腕を振っていることに気づいていないのです。そしてみなさん
「あっ、すみません。本当だ〜」
と少し驚かれるのです。
「いえいえ、謝ることはないんですよ。それがこの体操の効果であり、この体操で肩回りがゆるんだ人の普通の反応です。」
「そうなんですね、つい気持ち良いのでやってしまっていた、と言う感じです。」
こうなると、その方はたいていご自宅でもやってくれます(笑)
実際にひどい50肩ではこの体操だけで腕が上がるようにはなりませんが、自分が痛みによる不安から肩回りに無駄な力をかけていること、また本来のゆるんだ状態を思い出してもらうには非常に役に立つ体操です。
高岡先生の書籍にもよく書いてあることですが、人間はゆるんだ時は非常に快適感を伴うものですし、加えて幸福感も伴うものです。
ですから、そう言う時の患者さんはいつも顔がニコニコしていて、血行も良くなっているのか少し赤らんでいます。
ニコニコして赤らんでいると言うともう赤ちゃんですね(笑)
実際に赤ちゃんほどゆるむわけではもちろんないでしょうけど、脳がそういう意識状態に近くなっているのでしょうね。
どうでしょうか? 意識状態まで子供にもどってしまうってすごい効果だと思いませんか?
ということで、大人も振子の運動は大好きなんですよ。
みなさんもぜひやってみて下さい。
子供の頃を思い出すかもしれませんよ!
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