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子供の「ゆるす」力
子供は体の深いところからゆるんでいる。
子供の体に触れると、全身の筋肉が大変柔らかくみずみずしく、フワフワとしています。関節も柔らかいですよね。赤ん坊や幼児が仰向けで眠っているところを見ると、太腿を大きく開いていて、ほとんどの大人にはできない姿勢だけに、その股関節の柔らかさに驚いたりします。
同様に体の中にある筋肉や、内臓や血管や脳なども、子供はとても柔らかく弾力があるのです。そのように子供は大人よりもはるかにゆるんだ体をしているのです。
子供は体だけでなく、気持ちも心もゆるんでいる。
小さな子供、とりわけ、まだ自分の力で立てないような赤ちゃんは、健康である限り、基本的にとても機嫌が良いものです。例えばやっと体を起こして座れるようになった子供が、何かが楽しくて笑い転げているところを観察すると、本当に体の深いところから笑っています。横隔膜や肋間筋のような呼吸筋だけでなく、体幹の深いところにある腹筋群が使えていますし、さらに、腰背筋も笑いと共に動いていて、さらに背骨全体が楽しそうに揺れており、全身が笑いの運動に加わっています。まるで「存在全体」がゆるみ切って笑いの波の中にいるような感じです。これが大人だったらどうでしょうか。大人は何か楽しいことがあったら笑いますが、楽しいことが無い時は結構不機嫌そうにブスッとしています。子供はそうではなく、もともとゆるんでいて、いつも体が気持ちよくて、ゴキゲンで、楽しくてしょうがない存在なのです。
子供は簡単にゆるす
小さな子供は体も気持ちもゆるんでいますので、何かあった時に「ゆるす」力があります。例えば、子供同士がおもちゃの取り合いなどでケンカになっても、一方が「ごめん」と謝ったら、「〇〇ちゃん、もういいよ」とその場ですぐに赦します。そして夕方になったら「また明日遊ぼ!」と笑顔でバイバイしていたりします。その様子は、さっきのケンカのことをもうすっかり忘れてしまったかのようです。これが大人だったらどうでしょうか。一度ケンカになったら何ヶ月でも何年でもずっと覚えていて、時々思い出しては「あのヤロー」と呟いていたりしますよね。(私なども、とくべつ執念深い性格ではないと思いますが、そうです。笑)
子供同士だけでなく、子供は大人の失敗もゆるします。よくある例としては、親や祖父母が子供にした約束を忘れてしまうことがありますね。日曜日にテーマパークに連れて行ってやると約束していたのを大人がすっかり忘れてすっぽかした場合でも、子供は「いいよ」と案外、あっさりとゆるします。「お父さんは仕方ないなあ、忘れっぽくて。でもまあ、いいよ」というような感じです。そういう時、子供の寛容さにハッとしたり、感心したりしたことのある人は多いのではないでしょうか?
「ゆるむ」と「ゆるす」は語源が共通している
「ゆるむ」というのは固く締まった何か、例えば固く結んだ紐がほどけてゆるむとか、冬の早朝に凍っていた池の氷が正午近くになって、気温が上がったために融けてくるような時に使いますね。
一方「ゆるす」という言葉は、人と人の関係で何か良くないこととか、楽しくないことが起こって、気持ちがギュッと固まっているのを、柔らかく解き放つことを指します。どちらも固く締まった不自由なものを解きほぐすという意味で、もともと同じ意味を持つ言葉なのです。
子供はよくゆるんでいるから、ゆるす力がある
子供の心身は深いところからよくゆるんでいて、それが子供自身にとってとても気持ちが良いだけに、何か不快なことがあっても、すぐに元のゆるんだ快適な状態に戻ろうとする力が働くのです。
しかし子供から成長して大人になっていくまでに、子供の体はだんだんと固まっていき、気持ちも心も固くなっていきます。(非常に稀にそうならない人々が居ますが、その多くは天才です。)ですから、子供の頃からゆる体操に親しんでいると、固まる度合いが少なくなり、他の人への寛容さや許容力を育むことができる可能性が高まります。
ただし、カチカチの大人になってからでも、遅くはありません。ゆる体操を行なって体のだんだん深いところまでゆるんでくると、少しずつ、子供の頃のゆるんだ心身に戻れます。ゆる体操を始めてから、職場や家庭内の人間関係が良好になってきたという話をよく聞きますが、それは体がゆるんで気持ちもゆるみ、相手の立場になって考えることができる心の柔らかさが戻ってくるために、「ゆるす」力がついて来るからなのです。