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ゆる体操初級で大事なこと
ゆる体操も長くやっていてだんだんゆるんでくると、ゆるむことが気持ちよいということがわかってだんだん貪欲になってきます。
そして、
「中級ってどんなことをするのかな〜」
と自然に気になってきて中級教室に通うようになる方も多いでしょう。
そうすると裏メカ・裏テクなるものがある事を知って
「へぇー、ゆる体操って実はこんな体操だったんだ〜」
と皆さんびっくりされます。
中級教室に参加するようになると自分の体のことが色々わかってきて、人間の体のさまざまな仕組みが実感としてわかるようになったりします。
これは決して大袈裟なことではなく、長年ゆる体操に取り組んでいると自然にわかるようになるものなのです。
そうすると、結局のところゆる体操初級がすごく大事ということもわかってきます。
その理由は色々ありますが、一つ挙げるとすればそのリードです。
ゆる体操のリードは非常によく考えられています。
リードがそのまま正しいやり方になっていて、その通りに体を動かすと最も体操の効果が出るようにできているのです。
今回はそのリードについて自分が常日頃思っている事をお話しさせていただきたいと思います。
ー目次ー
1.実はゆる体操のリードは決まっている
ゆる体操には一つ一つの体操ごとに決められたリードがあります。
実際の教室ではこのリードを一字一句守らなければならないということはありませんが、NPO法人日本ゆる協会の公認ゆる体操指導員はリードを覚えなければいけません。
もちろん指導員も最初は意味なんかよくわからずとにかく覚えるのです(笑)
しかし、指導の練習として自分でリードしながらやっているとあることに気づきます。
「なんでこんなに体操がやりやすいんだ?」
そう思いながら続けているとさらに気づくのです。
ゆる体操のリードはすばらしく(というよりはっきり言って他では見る事ができないレベルで)論理的にできています。
そして大事なことはその論理的という部分が頭でっかちな知識のレベルではなく、体を動かしながら自然に体操に集中でき、体がゆるむようにできているという意味の「論理的」ということなのです。
ゆる体操は体操ですので体を動かさないと効果は出ませんから、冷静に考えてみるとある意味当たり前ともいえるかもしれませんが、ラジオ体操などをはじめこのような体操はゆる体操以前には皆無でした。
ここでは具体的に大脳ジャブジャブ体操を例にとって見ましょう。
お時間のある方は下の動画を見ながらぜひ実際にやって見てください。
2.大脳ジャブジャブ体操 リードの秘密?
ここから先の話はゆる体操開発者の高岡英夫先生が直接言っておられたことではありませんので、あくまで私の見解という感じで受け取っていただけたらと思います。
まずこの体操は
「息を吸いながら首を少しだけ後ろに倒していきます。」
で始まります。
そうですね、教室に通われている皆さんはよくご存知のことと思います。
「うん、そういえばそうだったかな? それがどうかした?」
と思わないでください。
この一文だけで非常にすでに重要な点が三つあるのです。
まず一つ目は「息を吸いながら」です。
(その1)息を吸いながら
これの何が重要なのか?と思われるかもしれません。
ですが、今までたくさんの方を指導していて思うことは、かなりの人が体を動かすときに息を止めていることが多いということです。
息を止めて運動するとどこかで吸わなければいけませんので、運動のリズムが作れません。
ですから親切にも
「息を吸うんですよ」
ということを、本当にそれとなく教えてくれているのですね。
「はー、そんなものなのか?」
と思って下さいね。
人間は意外なほど呼吸と動作がバラバラなものなのです。
「じゃあ、息をはきながらだったらダメなの?」という質問に対しては
「絶対にダメです」
とお答えしておきます。
なぜなら、この後に
「ジャブジャブと言いながら頭をそっとゆったりとゆすっていく」
からです。
息を吸いながら「ジャブジャブ」と言うのは無理ですよね!
では次は「少しだけ」という部分についてお話しましょう。
(その2)少しだけ
そうです、「少しだけ」でいいんですね。
これも人によっては加減ができず大きく倒してしまう人も結構います。運動なんだからめいいっぱいしなければという意識がどこかにあるのでしょうか?
現代人は運動不足ですから、スポーツ以外で行われる運動の目的は「余分に摂取したエネルギーをいかに消費するか」という点に注がれています。具体的な例をあげると、歩きながらダンベルを持ったりといったところでしょうか。ですのでそういった影響が無意識に刻み込まれているのかもしれませんね。
ただ、首は体幹部の中でも細い部分にもかかわらず重い頭(ボーリングの玉ぐらいの重さがある)を支える部分です。特に普段体を動かさない人は固まっているので急に動かせばちょっと危険です。
また自覚症状がないのに経年変化によって脊髄が傷んでいる人もいますので、そういう方が急に首を仰向けに傾けると本当に危険です。
ゆる体操はそういった安全面もちゃんと考えて作られているのですね。
これ以外にも「少しだけ」という言葉には実は大事な秘密があるのですが、それは初級のレベルではない(中級レベルの内容は公開不可となっている)のでここでは内緒です(笑)
興味のある方は中級教室に参加してみて下さい。そのうち中級教室の先生が指導してくれてるかもしれませんね。
そして三つ目は「倒していきます」の「いきます」の部分です。
(その3)倒して「いきます」
「いきます」に何の意味があるのか?
はい、では
「倒します」と「倒していきます」で実際にご自分で声に出しながら体操をやってみて下さい。
やってみましたか?
どうでしょうか?
「倒します」だと何かあっけないというか、あえて言うとなんとなく動作の最初と終わりの部分しか意識できない感じがしませんか?
それに比べて「倒していきます」だと傾ける動作の間の部分も意識しやすくなりませんか?
そして「倒していきます」の方がどちらかというと動作が少しゆっくりになったような感じがしませんか?
大脳ジャブジャブ体操は気功の要素が取り入れられた体操なので忙しくガサガサした気分でやっても効果がそれほど出ないものなのです。
どうでしょうか?たったこれだけの文の中に体をどう使えば良いかというエッセンスが込められているのです。
ビックリしたでしょ(笑)
しかしこんな親切な体操(運動法)はほかにはないんですよ。
そのことをわたしがゆる体操を学ぶ以前にならっていた中国の武術と比較してみたいと思います。
3.他分野では体の自然な使い方までは教えてくれない
3-1.よいものは同じ形でも内容が深くなっていく
私は若い頃中国の伝統武術をしていました。
中国の武術は大変高い身体運動のレベルに到達した分野として世界的に評価が高く、日本でもたくさんの愛好者がおられます。
一般的に中国の武術には「型」があります。
「型」には上級者向けのものもありますが、基本的には最初に習った型はずっと練習し続けます。
そして同じ型でも、その人の習熟の程度によって要求される内容が変わってきます。
ですから上級者になればなるほど、同門の人がどこまで教わっているかというのは見ればわかると言われています。
これは基本的には動き自体が大きく変わるものではなく、ちょっとした意識の持ち方とかが変わってくるので、それを教わっていない下の段階の人が見ても上の段階の人の動きは認識できません。
小学生が中学生の数学の教科書を見ても呪文にしか見えないのと同じで人間は自分の知らないことは認識できません。
かといって最初に習うことが重要ではないということではなく、むしろ最初に習うことの重要性はのちにたくさんのことを学んでも変わらず大切なのです。
そして何段階か進むと、ある時最初の段階で教わったことの本当の意味がわかるようになるのです。
こういう意味ではゆる体操の初級と中級やそれ以上の内容をもつ運動科学総合研究所の講座の関係と同じと言えるかもしれません。
ゆる体操でも大脳ジャブジャブ体操に限らず、例えば胸フワ背フワ体操や片膝休み腿裏スリスリ体操でも中級教室やそれ以上の内容を知っている人にとっては、他人がその注意点を守れているかどうかでどういうところまで習ったかはわかります。
しかし見た目やフォームがが大きく変わるわけでありません。
ただし実はこういうことがわかるのはゆる体操以外ではもとから才能がある人の話であって、実際はなかなかこうもいかないのが現実なのです。
それを少しお話ししましょう。
3-2.「結果」と「方法」の違い
例えば代表的な中国の武術に太極拳があります。太極拳では最初に
「放鬆(ほうしょう)」、「綿中蔵針(めんちゅうぞうしん)」
といった型のコツをいくつか学びます。(昔はそれも教えてくれなかったと聞きますが・・・)
「放鬆」は力を抜く(日本語の「力を抜く」よりも、もう少し味わい深い感じはしますが)という意味です。
「綿中蔵針」は「綿のような柔らかい体の中に針を含む感じ」という意味です。
どうですか?ゆる体操をある程度やっておられる方はすぐにピンと来たのではないでしょうか?
そうですね。「放鬆(ほうしょう)」と「綿中蔵針(めんちゅうぞうしん)」は、明らかに全身を「ゆるめる」ことと、ゆるんだ体に「軸(=センター)」を通すということを言っているのです。
太極拳の修行者は動きの中で「放鬆」と「綿中蔵針」ができるように努力します。
ただし実はこれは修行に成功した人がそうなるのだ、という結果を言っているのであって、そこに至るための方法ではありません。
その点ゆる体操では体をゆるめる「方法」を学ぶので、誰でもだんだんと体がゆるんできます。
体が固まっている現代人は、ゆる体操のように全身をゆるめるための具体的な方法がないとなかなか全身の力を抜くことができるようにならないのです。
特に自分の背骨や肋骨、骨盤まわりなどは普通は力が入っているという認識がありません。
というよりも現代人は一般的に背骨や肋骨、骨盤が固まっているという知識すら普通はありませんし、私も武術をやっているときは自分の背骨や肋骨がガチガチに固まっているということは知りませんでした。
知らないので当然力が抜けるようにはなりません。
3-3.上達には正しい「知識」と「方法」そして「学ぶ順番」が必要
正しい知識と方法は絶対に必要です。
では自分の体が固まっているということを知っていて、体をゆるめるための正しい方法を知っていれば上達できるようになるのでしょうか?
残念ながらそれでもまだ足りないのです。正しい方法を知っていてもとそれに対する取り組み方を知らないと「無駄な力が抜ける=体がゆるむ」ということは普通の場合はありません。
(本当のことを言うと「力を抜く」という言葉では力が抜けません。やはり「ゆるむ、ゆるめる」でないと難しいと思います。
ですがそのあたりのことは長くなるのでまた機会があれば私の考えをお話ししたいと思います。)
言い換えると、体をゆるめるため正しい知識と方法は必要不可欠ですが、効果を最大限発揮するための「正しい取り組み方=学ぶ順番」というものがあります。
例えば力を抜くためのよい方法をしっていても、一生懸命力を抜こう抜こうと思えば思うほど力が入ってしまうということはよくあることです。
これは当サイトでもいつもお話ししている「緊張性意識集中」と「緩解性意識集中」の話題とも大きく関係があります。
「緩解性意識集中」ができない初心者の間は難しい知識があるとより「緊張性意識集中」の方向に行ってしまい、体がゆるまなくなるのです。
ですから最初の段階では難しい情報などはない方がいい場合もあるのです。
私が学んだ範囲ですが、太極拳は本質的な部分ではゆるんだ体にセンターが通るという原理に到達しながらも、万人がそこに至る方法に関してはブラックボックスのままであるような気がしました。
(ただしこの辺りのことに関してはここでは語りきれない部分もありますのでとりあえずこのように申し上げておきます。)
ではどうすれば体がゆるむのかというと、できるだけ「緩解性意識集中」になるようにすれば良いのですね。
4.リードの通りにやればゆるむ理由
実はゆる体操初級でのリードにはそのような工夫があちこちに散りばめられているのです。
矛盾するようですが、
「力を抜きましょう」と言われてもなかなか力が抜けるようにはならない
ので、色々な工夫を凝らしてあの手この手で体をゆるめようとするのがゆる体操なのです。
先ほどの「大脳ジャブジャブ体操」のリードも全て自然に「緩解性意識集中」になるように作られたリードなのですね。
ただしお断りしておきますが「力を抜きましょう」と同じで「緩解性意識集中」という言葉とその概念を知っても緩解性意識集中ができるようにはならないのです。
普通は意識を集中しても緩解性意識集中の状態にはなりません。
緩解性意識集中は普通の集中とは違い本当にさりげなく感じられるものです。
しかし一旦緩解性意識集中の状態に入ると、その裏に込められたメカニズムやテクニックを具体的に知らなくても、普通ではできないゆるみ方をします。
「息を吸いながら首を少しだけ後ろに倒していきます」
このリードの通りに体を動かせると無意識のうちに(もちろん「その人なりに」ではありますが)緩解性意識集中の状態になり体がゆるむのです。
くどいようですが
「首を後ろに倒しましょう」
というリードでやっても首が背骨までゆるむということはなかなかありません。
ですが、何も言わないで
「大脳ジャブジャブ体操の最初の部分のリードってわかりますか?」
ときくと
「首を後ろに倒す、・・・ですよね?」
となる場合が多いです(笑)
どんな分野でもちゃんとした指導を受けていない人ほどこのような傾向にあります。
少しきびしい言い方で申し訳ありませんが、高岡先生の本を読んで色々な正しい知識があってもそのような認識ではなかなかゆるまないのですね。
先ほど「知らないことは認識できない」と申し上げましたが、知っていれば良いというわけではなく、人間は物事を知っていても自分の認識の範囲内でしかそれを理解する事が出来ません。
いくら丁寧に教えてもらっても先生との差がある場合(ないと困りますが・・・)その通りに理解する事は難しい事といえます。
古いラテン語の格言に「間違うことは人間的である(ERRARE HUMANUM EST)」というのがあります。私はそれが人間の特徴であることを十分に踏まえて、初心者が間違い続けないように段階的に指導をしてくれる人が本当の指導者だと思います。
ですからちゃんとした訓練を受けた先生の教室でゆる体操をすると自分だけではゆるまないレベルで体がゆるみます。
わたしも以前そうでしたし、もちろんいまでもそうです。
初級の教室に出て公認指導員の急所を押さえたリードで指導を受けると不思議なぐらい体がゆるむのはこのような理由があるのです。
そして中級の教室でも大部分は初級レベルの指導です。
それはやはり過剰に難しい情報を詰め込むと脳も体も疲れてしまうので、やはりそのバランスが良いのだろうと思うのです。
5.動画を見ながらでもゆるむ
ゆる体操にご興味のある皆さんはぜひお近くのゆる体操教室に参加されてその雰囲気を味わってみて下さい。
お近くに教室がない方は「脳ジャブジャブ体操」以外にもゆるポータル神戸のYouTubeチャンネルで「ゆる体操コンプリート」と題しまして一つ一つの体操を的確なリードで配信していますので、それを見ながら何度かその通りにやって頂いたらと思います。
双方向のライブでなくてもこれまで述べた理由によってリードに任せる事で自然に体がゆるむように出来ているので十分満足していただけると思います。
そうして、何度かやって頂いているうちに体の方が勝手に反応してきますので、正しいゆる体操の効果がきっとおわかりになると思います。
また慣れてくれば47分の初級動画も公開していますので、お時間のある時にチャレンジしてみてもいいと思います。
47分かけて全身をくまなくゆるめると本当に気持ちがいいものです。
もちろん、そこまでの時間がなければ「立ちゆる」や「寝ゆる」といったセクションごとにやってみるのも良いと思います。
そして何度かやられて気に入られたら、当サイトの有料コンテンツをご購入していただくのがお勧めです。
当サイトで指導を主に担当している中田ひろこは現在ゆる体操普及団体「NPO法人日本ゆる協会」公認指導員として最高位である「全日本ゆる体操デモンストレーター」ですし、当サイトの有料コンテンツは初級レベルでの注意点やちょっとしたコツなどお得な情報も満載で、楽しく体がゆるんで楽になることは間違いありません。
6.まとめ
- ゆる体操のリードはその通りやっていると自然に体がゆるむように出来ている
- 高度な知識だけがあっても体はゆるんでくれない
- 対面でなく動画のような一方向の練習でも体がゆるむ
コロナ禍の現在、自宅にいる事も増えて運動不足になりがちですので、体の調子を維持するにはゆる体操で効率よく体をゆるめる事が大事になってきています。
ゆる体操は「やさしい」体操です。これは簡単で「易しい」という意味だけでなく人に対して「優しい」という意味です。ですからほとんど全ての方が無理なく、しかも安全に取り組むことができます。
だからこそ正しいゆる体操をやって頂いて、皆さんには体がゆるむ快適さを味わっていただけたらと思っています。
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