(その1、筋骨格系)
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本質力と具体力
運動科学総合研究所の高岡英夫先生の書籍をみると、本質力と具体力という言葉を時々目にすると思います。
健康志向でゆる体操をされている方はあまりピンとこない言葉かもしれませんが、高岡先生は以前からパフォーマンスの中身は本質力×具体力で決まると言われていきました。これはどういう事でしょうか?
まずは具体力のほうですが、具体力とはその種目に必要とされるスキルと言っていいと思います。
具体力=専門分野のスキル
スポーツを始めるとその種目のルールを学び、その種目特有の身体の扱い方や道具の使い方を学びます。仕事のスキルにしても職業ごとに当然異なり、例えば営業と一般事務では当然求められるスキルは異なります。具体力は分野が専門的になればなるほど、ほかの分野への応用が難しくなります。スポーツで言えば、サッカーのプロにまでなるとサッカーで習得した技術は野球にはほとんど役に立ちません。頭脳労働でも例えば数学のような高度に専門的な分野になると自分の専攻以外の分野に乗り換える事は容易ではありません。
では、本質力はどうでしょうか? おそらく本質力という言葉が一般に知られるようになったきっかけは、2002年発行の高岡先生の書籍「ワールドクラスになるためのサッカートレーニング」 でしょう。
ここでは「あらゆるスポーツのトップ選手に共通する本質的な力」と紹介されています。これだけを聞くと、「走ったり、ジャンプしたりする基礎的な運動能力の事かな?」と思ってしまいそうになりますが、実はスポーツに限らず、「あらゆる職業のトップレベルに共通する本質的な力」というものが存在します。それが身体が“ゆるんでいる”ということなのです。
本質力=身体のゆるみ度
固まった体はパーツとパーツが癒着してしまっていて自由に動きません。ところが、ゆるプラクティスで体がゆるんでくると体を自由に動かすことが出来るようになります。何故かというと各パーツをゆらしほぐす事で筋肉や骨などのパーツ間の自由度が高まるからです。自由度=ゆるみ度が進んでくると筋肉や骨につられて内蔵や血管など生命維持に必要な器官の関係性も自由になります。こうなってくると身体の代謝が良くなりますので、疲れをためにくいいわゆる健康な体になります。代謝が良くなると脳に酸素や栄養が行き届くようになり、脳活動が全般的に活発になり、いわゆる大脳だけでない“全脳的”な能力が付きます。こうなると色々な分野に応用が利くようになります。
本質力の高い人は学習能力が高い
仕事を学んでいくとき、同じチームの中にいわゆる”勘の鋭い人”に出会う時があります。新しい技術を学ぶ時にそのコツをすぐに理解してしまってすぐに上達するタイプの人です。こういう人は元々ゆるみ度が高く、学習能力が高い傾向にあります。実は“本質力が高い”事の効果は色々ありますが、“学習能力が高い”という事もその一つです。子供は記憶力もよく、学ぶ能力そのものが大人に比べて高いですが、それは体がまだ固まっていなくてゆるんでいるので本質力が高いからです。
本質力の高い人は具体力のレベルも高い
逆に言うと本質力の程度によってどのぐらいその分野の技術(=具体力)が習得できるかもだいたい決まってしまいます。また、身に着けた具体力を本番で自由に応用していく能力は確実に本質力に依存します。ですから、ほぼマニュアルどうりで良い仕事なら具体力が高ければ本質力が低くても何とかなりますが、現場での応用や素早い決断が必要な仕事は本質力が高くないとどうしようもない場合が多いのです。
ただし、いわゆる単純労働でも本質力の高い低いは作業効率にかかわります。現代社会ではAIの発達で残念ながら単純労働の評価は以前に比べ下がる傾向にありますが、例えば工場の流れ作業にしても、本質力が高い人はまずただ立つだけの部分で疲れにくいので大きなアドバンテージがあるのです。当然腕も肩も疲れにくいので当然作業がスムースに進みます。
こうなってくと当然仕事に限らず家事や日常の様々な動作そのもののパフォーマンスが本質力に依存しているという事になります。
ただし、本質力だけ高くてもそれを世の中に生かしていく具体力がないと右も左もわからない赤ちゃんと同じでそのままでは社会の役には立ちにくいです。
結局すべての能力は本質力×具体力で決まるという事になるのです。
誰でも効率よく上達できる
時代に
いままでこの本質力をアップしようというトレーニング方法は狙いとしてはあったのですが、パフォーマンスの中身が本質力×具体力という構造であるという事が解っていなかった為に、トレーニング方法としてはそれぞれの分野への応用が利かなかったり、効率が悪くなっていたりしていたものがほとんどでした。
例を挙げると仏教や道教の修行などは本質力のトレーニングを狙ったものと言えますが、普通の人は一生をかけてそれだけをやり続けないととても大成できるものではありません。しかもある段階に達したとしても自分の仕事に直接生かして行けるかどうかは難しいところです。
この点ゆる体操はこの問題を徹底的に考慮して解決しているので誰でもわかりやすく簡単に効果を享受する事が出来ます。さらにはトレーニング自体が楽な姿勢や体の動かし方と直結しているので仕事への応用が利きやすいという利点があります。
本質力と具体力は縦横で違う能力ですから、特に最初の内ははっきりと分けて取り組むのがいいですね。そうすると自然に図1の面積が大きくなってパフォーマンス力が上がっていきます。 さあ、皆さんもゆるプラクティスでどんどんパフォーマンスアップしていきましょう!
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