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【リハビリの成果】50肩改善にゆる体操は効果的という話
皆さんこんにちは。私は整形外科でリハビリをしているのですが、最近こんな事がありましたのでそれをご紹介させていただきます。
この記事はこういう方々のために書きました。
- 肩こりで悩んでいる・・・
- 40肩、50肩で悩んでいる・・・
- 肩回りを使う仕事をしていてよく疲労がたまる・・・
厄介な肩の症状
その方は70代の女性です。仮にCさんとしましょう。
Cさんはコロナ禍前から左肩が悪く、肩関節の動き自体も大分悪い方でした。
いわゆる40肩、50肩を甘く見てはいけません。日にち薬の事もありますが、肩関節に石灰が溜まってしまう「石灰沈着症」の場合は整形外科できちんと見てもらった方が良い場合も多いのです。
Cさんの場合は元々石灰沈着症による痛みで肩を動かさなかったために肩関節回りが固まってしまい、左肩はほとんどあげる事が出来ない状態だったのです。
右利きの人は左肩が不自由でもなんとかなるので油断して放置しておくとほとんど動かなくなってしまう事もあります。
腰が固まってしまっても(実はほとんどの人は固まっていますが)立位に問題がなければ歩いたりする事はできます。
それに比べて肩が固まってしまうと、普通は日常生活が非常に不便です。
Cさんは関節内注射と筋膜リリースによる治療と肩ユッタリ回し体操や腕プラーン体操などのリハビリで少しずつ動きも改善していたのですが…
コロナ禍で通院が途絶える
そこにコロナ禍がやってきました。
外出自粛令でCさんはリハビリどころか診察もしばらく途絶えてしまったのです。
私も遠方からの通勤だったので当然出勤見合わせとなり、非常事態宣言解除後は徐々に以前担当した患者さんに会うという状況でした。
そんな中ふとCさんの事を思い出したりしていたのですが、ある時診察の事務でお会いする事が出来ました。
「あー、Cさん久しぶりですね。」
「肩の調子はどう?」
と聞くとCさんは右手をブンブン振って
「あかんあかん、もう全然動かんわ」
と半分笑いながら言われます。
ドクターが来るまでに肩の動きを見てみるとなんと横には20度程度しか動きません。
これは日常生活ではほとんど役に立たないと言ってもいいでしょう、
Cさんは他の症状でもあるので非常事態宣言以降通院してはいるのですが、半ば諦めているようにも見えました。
その後ドクターの許可が出てリハビリが再開されたのですが、Cさんも忙しくて中々日にちが合いません。
それでもようやくコロナ後1回目のリハビリを迎える事になりました。
全く動かない肩
Cさんの場合、何よりも大事なのはモチベーションの回復です。
もう一度動くようになりたいと思わないとここまで動かなくなった肩は簡単に戻りません。
何故かというと、数ヶ月この動きでもCさんの場合なんとかなってしまっていたからです。
例えば運送会社に勤めている方々は腰が動かないと仕事が出来ないので腰痛になると基本的に直そうとするモチベーションは高いと言えます。
あきらめの気持ちがどこかにあるとゆる体操の効果も半減してしまいます・・・。
Cさんの場合、色々な条件で左肩が動かなくてもなんとかなってしまっていたので、ある意味諦めてしまえたのですね。
ですから1回目のリハビリである程度動くようにして、やる気を出していただくのが絶対に必要です。
私はまず腕プラーン体操を復習して肩回りをゆるめてもらい、その後肩ユッタリと肩甲モゾで肩甲骨を動かす感覚を思い出してもらって、さらに調整をして棘上筋など、肩のインナーマッスルをほぐしながら、なんとか横方向からに水平より少し上がるようにしました。
Cさんも久しぶりに肩が上がるようになって少し喜んでいるようでしたが、私にとっては放っておくと動かなくなることは目に見えているので全く安心していられません。
次の予定を聞くと予想通り中々私とCさんの予定がかみ合いません。
これだけ肩が動かないと診察の間隔も短くなりますので、忙しいCさんにとっては間隔を開けずに診察とリハビリ両方に来ることが難しいのです。
そして私の勤めている整形外科の規則ではドクターの診察日以降は、患者様の安全を確保する意味でもリハビリの予約は入れられないルールになっています。
それからしばらくリハビリでは会えない状況になりましたが、診察の時には合間を見て必ず声をかけようと予約の時間を気にしていました。
待合室で声をかけると
「おーっ、Cさん。どうですか」
「あかんあかん、暑いし鬱陶しいし肩は動かんし!」
(そんな・・・、何でもひっくるめて一緒にせんでもええやん、と多少思いながら)
「まあまあ、そんなこと言わんと、またリハビリ来てね」
「中々時間がなぁ・・・。平日は無理やし、土曜日も内科さんもあるしな・・・。でも何とかするわ~。」
なんてやり取りをしながら、何とかリハビリに来てもらうようにお誘いします。
改善の小さな兆し
そしてようやくリハビリの時間が取れたようで、また来ていただくことになりました。
私は同じようにモチベーションを保つにはどうすればいいか考えましたが、やはりゆる体操をすれば一時的にでも改善するという事を実感していただくしかありません。
Cさんの腕はまた動きが悪くなっていましたが、それでも最初の時よりはまだ動きます。
横に20度位だったのが30度位にはなっている感じがします。
こういう場合は何が変わったのかを注意深く観察して、そこから突破口を見つけていくのが経験的にいいのですが、それも個人差があり、個人の中でも日によって反応が違うので、動かしてみて動き良いようにしてあげるしか方法はありません。
医学的には肩の可動域がどれほど改善したかが症状の改善の評価になりますから、ゆる体操だけでなく肩関節の可動域そのものを改善することは大事です。
どこが引っ掛かっているか、動きを制限している部分はどこか注意深く観察し、そこを調整でゆるめたりしながらできるだけ痛みがないように腕が普通に動く感覚を思い出してもらうのです。
ただしあまり動かすことに執着すると余計に体が固まることは日常茶飯事ですから、腕プラーン体操など他動性(「他動」とは、一般的な医学用語では他者の力を加えて関節を動かすことを言うが、ゆる体操の用語では主に重力の作用を借りて体を動かす運動を指します)の要素が強い体操で力を抜けば抜くほど勝手に腕が動いていく感覚をつかんでもらう事が重要です。
実際に肩に限らずどの関節も筋肉などの軟部組織の拘縮が原因であれば、周囲の力みが理想的に抜けてしまえばすぐに動くようになります。
今回も中々頑固なこわばりがありながらも、なんとか水平よりも少し高く上がる所までもっていきました。
可動域を広げていくようなリハビリをすると患者さんも疲れるのですが、ゆる体操と調整をフルに使って何とか動くようになってもらわないとまたすぐに固まってしまいます。
私は少しでも続けてもらうために
「力を抜くとちゃんと動くでしょ?腕が動かないって言ってもマヒでもない限り、変なところに力を入れてわざわざ動かさないようにしているようなものですよ」
と言いました。
「ほんまにそうやねんなぁ」
とCさんは言われます。
「じゃあ、出来るだけこれがキープできるようにご自宅で体操やって下さいね。」
と言ってその日のリハビリは終わりました。
でもその時も次回の予約はその時は取れませんでした。
そして・・・
次の診察の日私はCさんを見かけて待合室で声をかけました。
「おっ、Cさん。どうですか?調子の方は・・・?」
と聞くと
「そうやね、たいがいやけど、それでも最近ほんのちょっとましやねん・・・。」
とおっしゃいました。
「おお、それはよかったですね!でも油断しちゃだめですよ。先生のリハビリ継続許可が出たらリハビリの予約とってくださいよ!」
「うんうん、そうするわ」
その日の最後、私はふと気になってCさんの予約状況を見てみました。
ある程度間隔はありましたが、先で2回の予約が入っていました。
さて、次お会いした時はどうなっているでしょうか。
期待半分怖さ半分ですね(笑)
ゆる体操をはじめとするゆるプラクティスは医療行為ではありません。よって肩の症状に対する効果は個人差があり、この文章はあくまで私の個人的経験に基づくものです。また、この文章には医学に関連した話題も出て来ますが、そのすべてに統計的裏付けが保証されている訳でもありません。その点をご了承して頂いた上でお読みください。
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