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【リハビリの成果】首と肩のゆる体操でピアノを弾く能力が復活した例

皆さんこんにちは。私は整形外科でリハビリをしているのですが、最近こんな事がありましたのでそれをご紹介させていただきます。
この記事はこういう方々のために書きました。

  • PC作業などひどい肩こりで悩んでいる
  • 楽器を弾いているが最近能力が落ちてきた
  • 上半身の姿勢が悪いと言われる方

ピアノで首と肩を痛める

その方は60代の女性でアマチュアのピアニストでした。仮にDさんとしましょう。
Dさんは若い頃は毎日最低5時間程度ピアノを練習する方で、色々理由があってしばらくほとんど弾いていなかったそうです。
最近になってまた猛練習を再開したのですが、首と肩を壊してしまって私が勤めている整形外科を受診したのですが、具体的には肩から腕にかけてひどい凝りと痛みがあるという事でした。
そしてドクターの診断は頸椎に余分な骨ができて首の神経の通り道が狭くなり神経を圧迫しているが、痛みの原因は主に首のポジションが悪くなって周囲の筋肉が極度に疲労しているから、という事でした。

余分な骨はある程度年齢がかさむと自然にできてしまう部分もありますが、姿勢が悪いとより出来やすくなる傾向があるそうです。
Dさんは胸椎の上部が前傾してしまっていてその分首を起こさないと前に向けないという、典型的に首や肩に負担をかける姿勢をされていました。

肩こりと言っても肩関節そのものが動かなくなる50肩が起因のものとは違って、この方の場合は肩の関節は動くので首のポジションが悪くなることが原因だと考えられます。
なにせ人間の頭はボーリングのボール程度の重さがありますから、背骨が頭を適切なポジションで支えられなくなるとたちまちその根っこである胸椎から頸椎まわりにかけて何らかの障害が出てしまいます。
ですから肩こりを解消するには首から背中の凝りを取って楽なポジションに戻さなければなりません
Dさんは姿勢を一目見てもそれとわかりますが、実際に触ってみると首から肩にかけてやはり深い所までカチカチに固まっています
そしてその影響で肩甲骨が背中に張り付いてしまって動かなくなってしまっていました
Dさんはアマチュアですがピアノはベートーヴェンの大曲を弾くほどの腕前ですから、本来は体がゆるんでいて本質力が高い方だったはずです。それが加齢によりいつのまにか姿勢が悪くなり肩甲骨が背中に張り付くまでになってしまったのでしょう。
リハビリではまず肩ユッタリ回し体操、腕プラーン体操、首ジワークネクネ体操を覚えていただいてご自宅で取り組んでいただくように指導しました。

2回目は体操をやっていただいたかどうか確認をして、さらにおかしな癖が出ていないかどうか体操のチェックをしました。
そしてピアニストなので肩甲骨が演奏にどういう場面で役にやっているかを説明しました。
体操教室ではひたすら体操にはまっていただく事で体が気持ちよくゆるんでいく事が大事ですが、この場合は整形外科のリハビリなので、症状に対してある程度の説明は必要になってきます。
具体的には腕と肩甲骨の位置関係などですが、このあたりの話は当サイトコラム「インナーマッスルの鍛え方 肩編 パフォーマンスを上げたいすべての人へ4つのステップ」を見ていただけたらと思います。
 
さらに首と腕の根本的な土台となっている首の下の方から背中の上の方の凝り(ゆるプラクティスでは拘束背芯といいます)の話をして首の根っこをほぐす事の重要性を説明し、達人調整も加えてその辺りのコリもほぐしていきました。

このポジションの方にありがちな事なのですが、首の根っこが固まると頭の位置が本来のよりも前になってしまうのですね。

背骨と姿勢の関係
背骨と姿勢の関係

ですからその下の土台にあたる部分がしっかり動いて頭の支持に参加しないと根本的な解決にはなりません。
少し話がそれますが、
「ゆる体操をすれば一時的にほぐれて首や肩のこりが楽になるのですが、すぐに元にもどってしまいます。」
と言う悩みを訴える方が時々おられます。
それは背中のコリを取って頭の位置を正しいポジションに持ってくることが必要となってきます。
「えー?そんな体操どうやるの?」
と思われる方もおられると思いますが、実は肩ユッタリ回し体操をじっくり取り組んでいくと背中の上の方を動かすことが段々出来るようになってきます。
興味のある方はゆる体操初級のクラスでゆるむ感じをつかんでもらったら、講師の先生に相談してゆる体操中級クラスに進むのも良いと思います。中級クラスでは肩ユッタリ回し体操の裏メカ裏テクがありますので、より詳しく学ぶ事が出来ます。
当サイトでは一定期間初級を学んでおられる方でしたら動画でも学ぶことが出来ますよ。

首の付け根のコリを体操と調整でゆるめる

話を元に戻しましょう。
私は達人調整で首根っこのコリを取って、出来るだけ頭のポジションを良い位置に持ってこれるようにしてあげたのですが、このあたりの指導が上手くいくと本当に肩こりがスッととれます。Dさんも
「あれ?首が楽です。なんでだろ?不思議・・・。」
と言った感じでおそらく久しぶりであろう、肩こりが楽になった感じを味わっていました。
「では、そのままちょっとピアノを弾くイメージで腕を動かしてみていただけませんか?」
と言って、その動作をしていただくと
「あ~、なんか楽です・・・、あ~、そうなんですね、ここが固くなっていたから演奏中に腕が辛かったのか・・・。」
このように、本当に効いている場合は皆さん「あ~・・・、」を連発します(笑) 言葉にできない体の奥底の感覚を味わっているのでしょうね。
「そうですよね。つらいところがあるとそこばっかりに意識が行きます。でも実は根本的な原因が違うところにあって、そこを改善すると全体が良くなることもあるんですよ。」
Dさんの場合は2回目でうまくいったのですが、この部位の凝りは根深いのでここまで行くのにもっと時間がかかる人も現実はたくさんおられます。

「若いころ楽に弾けたパッセージが弾けなくなってその原因がわからなかったのですが、背中に原因があったなんて・・・。」
と、Dさんも納得していただいたようでした。
ちなみに私はピアノは全く弾けません。ですから当然のことながらピアノの技術的な指導(具体力の指導)はできません。しかし具体力の低下は必ず本質力に引きずられるように起きてきます。Dさんのようにピアノの具体力がまだまだ残っている場合は本質力をアップしてあげると以前のように楽に弾けるという事が起こりうるのです。

ですが当サイトのブログ「腰痛に悩む全ての人へ 私の腰痛改善記」でも私の体験とともに申し上げたように、一時的に外部からの刺激でよい状態になってもそれをキープする方法を知り、それを実践しなければ徐々にもとに戻ってしまいます

その後他の体操の指導もして自分で背骨まわりをケアできるようになって頂いてから、私はDさんにお願いしました。
「正直に言いますけど、この感覚はご自宅に帰られた頃には段々もとに戻ってしまいますから、よく体操をやって出来るだけキープするようにしてください。そしてピアノの練習中も必ずこまめに体操を入れるようにしてください。」

そして、また1週後に来ていただけるようにリハビリの予約を取っていただきました。

1週後Dさんが来られました。
「調子はどうですか? 肩、腕の痛みはありますか?」
「だいぶんましになりました。」
「ピアノの方はどうですか?」
「少しずつ動く感じを思い出してきたんですよ!」
「そうですか!それはよかったですね!」

この「思い出す」と言う感覚が大事で、「思い出す」のだから、「元々は自分の中にあった」という事になりますね。体がゆるむことで自由に動くようになり閉じ込められていたピアノのスキル(=具体力)が表に出てきたのでしょう。
ご自分の努力で少しずつ良くなっているようなのでその日は応援の意味もこめて達人調整の施術をしました。
その後また首回りのポジションの確認をしましたが、私はリハビリの手ごたえを感じていました。

そしてその後もう一回リハビリの予約をしてもらって、4回目も同じように達人調整と体操のチェックをした後、
「どうですか?かなり自分で出来るようになったんじゃないですか?」
「そうですね。だいぶわかってきました。」
「どうします、リハビリに来るのも少し様子を見ますか?」
「・・・そうですね。自分で頑張ってみます!」
「では危ないな、と思ったら早めに来てくださいね。」

それ以降診察には来ていると思うのですが、私はお会いしていません。

きっと体操に取り組んで頂いている事と思います。

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