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モーツァルトのこと

私は音楽を聴くのが趣味で、特にクラシック音楽はほぼ毎日聴いているのですが、最近よく聴く作曲家はバッハ、ベートーヴェン、モーツァルトといったところでしょうか。

当然それぞれに個性があって違った魅力があるのですが、特にモーツァルトは聴けば聞くほど偉大だなぁと感じます。

具体的にはどう言うことかというと、一つの曲、一つの音に様々な感情が込められているからです。

例えば長調の曲は基本的に「明るい」ものです。単調の曲は「暗い」ものです(私が小学校2年生の時に短調という曲を学ぶ題材として音楽の授業で習った「ドナドナ」は死にそうなほど暗かった・・・)。

しかし、人間の感情というものは「明るい」「暗い」という単純な分け方で表現できるものではなく、一般的にジャンルに関係なく良い曲というものは、1曲の中で明るさや暗さといったわかりやすい感情だけでなく、言葉では表せないような複雑な感情を表現しているものです。


ちなみに私は10代の頃は、モーツァルトはいい曲もあるけど何かみんな同じように聴こえる曲が多いと感じていたので、ベートーヴェンやブラームス、さらにはワーグナーやショパン、チャイコフスキーといったロマン派の作曲家を好んでいました。

ですが大人になってからモーツァルトの本当の良さがだんだんわかってきたのです。

それは先ほど述べたように、1曲さらには1音の中に人間の様々な感情がこめられていることに気づいたからです。

これは言葉で表現するとつまらなくなるので、実際に聴いていただいた方が良いのですが、明るさの中にも何か懐かしさのようなものを感じたり、そうかと思えば基本的にウキウキとした子供がはねまわっているようなリズムを感じたり、そうかと思えば沈んでいくような深さであったりと、それこそ様々な感情が一音一音に込められているのがわかります。

どちらにせよ、モーツァルトの音楽には明るい、暗いを超えた人間にとって根源的な感情があります。

モーツァルトは生涯で短調の曲をほとんど書きませんでした。しかし彼は自分の奥底から湧き上がってくるそういった人間の根源的な感情を明らかに意識していて、それを西洋音楽の技法を通じて形として表現しようとしていたふしがあります。

例えばピアノ協奏曲9番(K.271 愛称は「Jeunehomme」、近年では「Jenamy」とも)は1楽章が明るい長調でしかもサロン的な賑やかな雰囲気を持っているのに、2楽章は一転して短調で書かれています。

さらに3楽章はモーツァルトの面目躍如といった感じの楽しい、ワクワクするような雰囲気で始まるのに中間部でメヌエットを入れるといった感じで、気分がコロコロ変わる、とも言えますが、彼が潜在的に様々な感情を奥底に持っていた証ともいえると思います。

これが例えばピアノ協奏曲の25番になると、長調として書かれている1楽章の一つの旋律の中で一瞬短調に転調したりとかなり「きわどい」感じになったりします。

さらに晩年の曲になると長調だろうが短調だろうが一音一音の中に様々な感情が含まれている、といった感じになるのは、クラリネット五重奏曲やクラリネット協奏曲、さらにはオペラの「魔笛」を聴いてみればあきらかなことだと思います。

これぐらいになると、「感情」という言葉よりもそういった潜在意識の状態、このサイトの言葉で言うと、身体意識のクオリティやモビリティが多彩であるといった方が正確なのかもしれません。

さて、モーツァルト音楽がそういうものだったとして、実際にそういった様々な意識が演奏中に曲の中に込められるかと言うと、それはもう演奏者がそういう身体意識でないと根本的には無理、ということになります。
なぜなら一生懸命練習して何かを表現しようとしても、身体意識がそうでないとなにか上辺だけのものに感じられたり、必ず集中力が途切れる瞬間というものがあるからです。

ですから、かなりすごいピアニストでもこのモーツァルトの様々な要素のうちのどれか一つでも再現できたらすごい演奏、二つ以上表現できれば名演、といった評価に一般的にはになっている(但しこの事をこのようにはっきりと述べた文章は見たことがありませんが)ような気がします。

ちなみにモーツァルトは普段は本当に子供っぽい無邪気な人だったようですが、大人になってもそうでいられたのはやはりゆるみきっていたからでしょう。

そしてモーツァルトの様々な要素のうち、この「ゆるみきった無邪気さ」は大人には表現するのはなかなか難しいようです。

また晩年に到達した境地は、ある種の神聖さや諦観といった「大人」達が喜びそうな感情を呼び起こしますので、相当なアーティストでもそういった部分だけを強調してしまいがちなのですが、本当にモーツァルトがすごいのは子供が本来持っているウキウキワクワク感と、神聖でしかもある種の諦めの境地みたいなものが、交互でもなく同時に存在しているという、大いなる矛盾だと思うのですがいかがでしょうか?

さて、音源ですが、例えば先ほどのピアノ協奏曲9番ならば、今までに偉大なピアニスト達が録音してきているので名盤も多いですが、個人的にはシャーンドル・ヴェーグ指揮、アンドラーシュ・シフがピアノを演奏した録音をおすすめしたいと思います。

Spotifyへのリンク

このコンビはモーツァルトのピアノ協奏曲全集を完成させているのですが、アンドラーシュ・シフのこれ以降の、特にバッハやベートーヴェンの録音に比べて一般の評価はそれほど高くないようです。しかし特にモーツァルトが若い時代に書いた作品については屈指の名演が多く、有名なところでは8番(K.246、愛称は「Lützow」も大変素晴らしい演奏だと思います。

ピアノは※ベーゼンドルファーでしょうか?シフの演奏もコロコロと子供が楽しく遊びまわっているような音色で(もしかしたらモーツァルトの時代に使われていたピアノの前身ともいえる「フォルテピアノ」を意識しているのかもしれませんが)、しかも歌うところはしっかり歌っています。

3楽章のロンドの冒頭の主題も短いフレーズに絶妙な強弱をつけて単調ではない表現になっています。オーケストラも録音当時の演奏としてはおそらく小編成でまとまりがよく、特にモーツァルトっぽい元気なリズムの良さ、強弱の明快さはシフよりもヴェーグの指揮によるところが大きいと思います。
後期の協奏曲について言うと、晩年のモーツァルトの世界、と言うことについては他の巨匠たちの演奏に譲るとしても、名演には変わりありませんのでどの曲でも聴いていただいて間違いないと思います。

シフ、ヴェーグの演奏以外でも名盤はたくさんありますのでぜひ聴いて頂けたらと思いますが、どちらにせよ、モーツァルトの持つ元気さ、リズムの良さこそが現代の大人がもう少し評価するべきものではないでしょうか?
このサイトはゆる体操を扱うサイトですので、まさに身体をゆるめて、楽しい気分で聴いていただければ、大人になってもこういうリズム感を持つと言うことがどれだけあり得ない事か、お分かりいただけるのではないかと思います。

※ベーゼンドルファー 古い歴史を持つオーストリアのピアノメーカー スタインウェイと並んで有名

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