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「息ゆる」のススメ
皆さんこんにちは。
このサイトに来てくれている皆さんは、毎日何らかのゆる体操をやっておられる方が多いと思います。
ところで皆さんが日頃やっておられるゆる体操って何ですか?
踵クルクル体操や肩ユッタリ回し体操はいつでもどこでもできるので、普段から取り組んでおられる方が多いと思います。
ただ、あまりされていないかもしれませんが「息ゆる」はいつでもどこでも出来て非常に効果の高い体操です。
「息ゆる」は見た目が地味で体操というには動きの変化が一見なく、体を動かすのが好きな方々には馴染みにくいかもしれません。また体操中に体の内部を感じるようなリードが含まれているのでわかりにくいかもしれませんね。
しかし、やらずに一生を終えるのは(笑)勿体なさすぎるのが息ゆるです。
今日は息ゆるについてお話ししてみます。
1.息ゆるって何?
「息ゆる」は呼吸を使って体を内部からゆるめる、ゆる体操の種類をいいます。
呼吸を使って?
と思われるかもしれませんね。呼吸は普段から無意識にしていますし、そういうものにゆるむ、ゆるまないの差があるというのも少しびっくりするかもしれません。
しかし、冷静に考えてみると呼吸も筋肉を使って行う身体運動の一つなのです。しかも意識して一時的に止めたり、大きくしたり小さくしたりすることができます。
また、「深呼吸」という言葉が馴染み深いように、深く呼吸をするとリラックスするということは誰でもお分かりだと思います。
古来インド、中国や日本を含むアジアの文化圏では呼吸が身体と精神に与える効果に注目して、さまざまな呼吸の仕方を「呼吸法」として研究してきた歴史があります。
「息ゆる」は古来からある呼吸法を「体をゆるめる」方法として高岡英夫先生が根本から捉え直した体系です。
ですので、普通では力みがちな呼吸法も、息ゆるでやれば体がゆるむようになり、身についてくると呼吸そのものが体がゆるむ呼吸になるので、一気に体のゆるみが進むようになります。
生活がゆる体操になってしまうのが「息ゆる」なのです。
2.大きく分けて2種類あります
息ゆるは大きく分けて2種類あります。これは高岡先生が分類したわけではありませんが、その2種類とは
- 呼吸を通じて体をゆるめていく
- 呼吸に使う筋肉を自然に強化して、疲労に強い体を作る
となります。
1は「息ハートロトロ体操」や「息スーハートロトロ体操」が代表的です。
2は「お腹ペコポコ体操」や「お腹ペコポコペコー体操」ですね。
1について少し説明しましょう。
人間は歳を取れば取るほど体が外側から固まっていきます。そして外側が固まると体が締め付けられてしまうので、呼吸量が減ってしまいます。腹式呼吸でも胸式呼吸でも息を吸うと対応する体の部位が膨れますよね。体が固まるとこの幅が小さくなるので換気量が減るのです。
換気量が減ると、当然酸素の交換効率が悪くなるので慢性的に疲れやすくなります。
実は歳をとると頑張りが効かなくなる原因の大きな一つはこれなのです。
場合によっては若い頃の30%程度にまで落ちるとも言われています。
もちろん新陳代謝の機能そのものも老化によって落ちますので、それも疲労の一因となりますが、呼吸が浅くなること自体が新陳代謝の機能が落ちる大きな原因となるので、それは息ゆるで体をゆるめることでかなりの部分が解決できるということなのですね。
この辺りの話題について専門的に知りたい、という方は高岡先生の著書、「高岡式超最強の疲労回復法」をご覧になってください。
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体の外側をゆるめるなら、他のゆる体操でもできるんじゃないの?
という考え方もありそうですね。
確かにそうなのですが、やはり呼吸そのものを改善するには呼吸をしながらの方が良いに決まっていますから、息ゆるというメソッドには特有の意味があるのです。
2について説明します
「お腹ペコポコ体操」や「お腹ペコポコペコー体操」は息を吐きながらお腹を膨らませたりへこませたりする体操です。呼吸に置いてお腹を膨らませることと、へこますことは大きく言えば横隔膜の運動です。
横隔膜はその名の通りお腹を上下に分ける大きな膜のような筋肉で、普段は無意識に動いて呼吸をしてくれていますが、自分でも動かすことができます。
例えば「お腹ペコポコ体操」や「お腹ペコポコペコー」体操でペコーとかポコーとか声に出していうと、(発声しているので)必ず息を吐きます。
通常息を吐くと横隔膜は上に上がり、お腹はへこむのですが、吐きながら膨らますことで横隔膜により負荷がかかるようになります。
そうですね、より負荷をかけながら動かすのでこれは横隔膜の筋トレなのです。
「お腹ペコポコ体操」のメカニズムについて詳しく知りたい方は・・・
横隔膜を筋トレ・・・というと普通はわけがわからなくなりそうですが、ペコーポコーと言いながらお腹を膨らましたりへこましたりすることがそのまま自然に筋トレになっているので、誰でも気軽に取り組むことができるのです。

3.「息ゆる」の効果
これは先ほど述べたように
- 呼吸を通じて体をゆるめていく
- 呼吸に使う筋肉を自然に強化して、疲労に強い体を作る
の二つなのですがもう少し詳しく説明したいとおもいます。
1番目の体操で代表的なものは息ハートロトロ体操です。
この体操はまず胴体に息を吸って吐きながらゆるめた後に、胸ー背ー腹ー腰ー股と部位別に息を吐きながらゆるめていくという内容になっています。
背中や腰に息は入らないでしょう?
と思われるかもしれませんね。しかし、背中には胸式呼吸で使われる筋肉である肋間筋がちゃんとついているので、背中で息を吸うことは人間の体の構造上可能なのです。
腰はどうかというと、そもそもお腹には肺がないので息は入らないのですが、腹式呼吸をすることで息を吸うと同時にお腹が膨れると「お腹に息が入っている感じ」がしますよね。
これは横隔膜が収縮して下がることによってお腹に圧力がかかり、お腹はやわらかいので大きく前にせり出してくるということです。
もしこの時腰もお腹と同じぐらい柔らかいとどうなるでしょうか?
実は腰も後ろ側に膨れてくるのです。
腰は骨盤があってそんなことは無理なのでは?
と思われるかもしれません。しかし、実際は腰は複数の骨が結合している状態で、関節もありますから、そこがゆるめば腹式呼吸で息を吸うだけで骨盤が広がり、
「腰に息が入ってくる」
感じになるのです。
このように息をするだけで背中や腰が広がるようになると、それだけで何割か換気量が増えて、一回の呼吸で大きく酸素を取り入れることができるようになります。ですから、呼吸をすることで胸から背中、腹から腰をゆるめることは非常に大切なことなのです。
この胸や背中が同時に膨れたりへこんだりする呼吸を胸背(きょうはい)呼吸、腹や腰の場合は腹腰(ふくよう)呼吸と言います。
背中や腰が固まるだけで確実に換気量は何割か減ります。ですからここに息が入ることは非常に大事なことなのです。
2番目の体操で代表的なものはお腹ペコポコ体操です。
先ほども述べたように横隔膜がこの体操で鍛えられると、一回の呼吸での換気量が増えるだけでなく、腹腔内にある内臓がそれにつられて大きく上下します。
内臓は自分の意思では動かすことができませんが、横隔膜を上下することで、内臓を優しくマッサージする効果があると言われています。
ですので、横隔膜を鍛えて可動域を大きくすることは、単純に呼吸量を増やすだけでなく、内臓の健康を保つ効果もあるのです。
また、横隔膜は代表的なインナーマッスルですから、横隔膜の運動をすることで、よりインナーマッスル主導の動きになり、それにつられて、達人の筋肉と言われる腸腰筋の活動性も高まることが知られています。
インナーマッスルの働きが良くなると、より表面の筋肉の力が抜けますから、より胸背呼吸や腹腰呼吸ができるようになります。
そして、横隔膜は呼吸法でないとなかなか鍛えることができません。
ですので、ここに息ゆるに取り組む大きな意義があると言えるでしょう。
そしてもう一つ大事なことは、背中や腰が動くようになる=ゆるむということは、軸(=センター)の形成に大きく役立つということです。
ここでは詳しく語りませんが、現代人は姿勢を維持するために背中や腰の筋肉を使いすぎています。ですので背中の筋肉が背骨を押すように作用して重心の位置が正しい位置より前に行ってしまっています。
呼吸という運動は常に行なっているものです。ですから、普段から体の後ろ側も呼吸に作用するようにトレーニングすると、当然腰背筋や脊柱起立筋がゆるんできますから、重心の位置が自然と後ろに移動して、足裏の脛骨直下点(=いわゆるウナポジション)に近づいてきます。

その状態でセンターのトレーニングをすると非常に良い効果が得られるのです。
実は、高岡先生の本格的な呼吸法のメソッドである「総合呼吸法」では、さまざまな呼吸法のメソッドそのものが、そもそもセンターを作ることを目的とした方法になっています。
ですので呼吸をすることが常に軸(=センター)のトレーニングをしているようなものになるのです。

マンガでも呼吸が話題に
漫画でも時々呼吸法を題材とした作品があります。古くは「ジョジョの奇妙な冒険」の1部と2部、最近では「鬼滅の刃」が大ヒットしました。両作品とも呼吸で体を強化するというアイデアがありましたね。「鬼滅の刃」での「水の呼吸」や「炎の呼吸」というのはもちろんフィクションですが、呼吸そのものが体の健康を維持したり、鍛えたりする効果があるのは間違いありません。実際に私が若い頃に学んだ中国の武術では、技と呼吸はセットになってこそ奥深いパワーを発揮するという考え方が当たり前になっている世界でした。
「鬼滅の刃」では、さらに強くなるために特殊な呼吸法を常時やり続けるという「常中」というアイデアもありましたが、ゆる体操の大元になっている理論である運動科学では、全てのメソッドの基本的な考え方は「常中」なのです。しかも、それは基本的に体に負担がかかるものではありませんし、特に「息ゆる」は慣れれば楽にできるようになるものなのです。
もちろん「全集中」する必要もありません(笑)
なぜならば、呼吸は人間にとって本来自然なものだからです。
4.こんな風に取り組もう
さて、こんなにお得な「息ゆる」ですが、どういう風に取り組めば良いでしょうか。
まずはやり方を覚えないといけませんね。
全くご存知ないという方はまずゆるポータル神戸のYouTubeチャンネルをご覧になってやってみるのが良いです。
しかし、この「息ゆる」は見た目にほとんど変化がないので動画を見ながらでは少しわかりにくいかもしれません。
ですので一度は日本ゆる協会公認の指導員に習った方が良いでしょう。
なぜ公認指導員の方が良いのかというと、私たち公認指導員は運動科学の方法に精通しているからです。
運動科学は非常に奥深い内容を持った体系です。例えば教える内容は初級のゆる体操でも、その奥深い理論とその実践の下支えがあってこそ本当の指導ができるというものです。
高岡先生の本に書いてある内容は最新の理論を含みますが、そのやり方や細かな方法は書物というメディアだけでは会得、体得できるものではありません。
ですから、実際に運動科学総合研究所で指導を受けた公認指導員に習うのが一番良いということなのです。
また、お近くに教室がなければ、当サイトでは毎月動画を配信していますから、(毎回「息ゆる」をしているとは限りませんが)そちらで学習なさっても良いと思います。
すでにある程度ご存知の方は、時々ゆるポータル神戸のYouTube動画を見ながらやると効果が上がりますね。
そして、息ゆるは本当に見た目が変化しないので、いつでもどこでも取り組むことができます。ですから、慣れてきたら日常の中でできそうな時間、タイミングを見つけて取り組まれるのが良いと思います。
私は電車の中でよくやります。
よければ以下の記事もご覧くださいね。
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5.まとめ
- ・体がゆるみほぐれる呼吸法「息ゆる」をやってみよう
- ・「息ゆる」は体幹を鍛え、疲労を回復する効果があります
- ・「全集中」は不要です(笑)
- ・見た目が変化しないので日常生活でいつでもどこでも取り組めます
- ・最初はわかりにくいかもしれないので、正式に訓練を受けた公認指導員に習おう
そしてさらに専門的な方法にご興味がおありの方は高岡先生の著書を読んでみてくださいね。さらに2021年12月には先ほど述べた「総合呼吸法」の内容を記した新刊「高岡英夫の呼吸五輪書」も12月出版予定とのことです。
皆さん息ゆるで健康的な人生を歩んでください。
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中田ひろこ@ゆる体操