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BOOK CLUB YURU.2『愛しあうからだ』
現代日本は、超少子化社会です。何とか日本の将来を担う新しい人間の数を増やそうと、様々な方針が行政から出されていますが、
子育てや不妊治療への支援が充実すれば、子供の数が増えるのでしょうか?それで、子供を生みたくなるものなのでしょうか?
もっと、根本的な何らかの理由があるのでは?
子供の数が少ないのは、日本人がだんだん、セックスを楽しめなくなっているからではないのでしょうか・・・?
このブログでは、超少子化の背景にある日本人のからだとセックスについてのゆる体操的な見方、それも本質的な見方を教えてくれる本を紹介します。
運動科学総合研究所所長の高岡英夫先生の本『愛しあうからだ』です。2008年に出版された本で、この記事を書いている時点ですでに10年以上が経っていますが、内容は決して古くなるどころか、ますますだいじになってきている事柄を伝えてくれています。
セックスのハウツー本ではなく、体の能力についての本。
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この本のタイトルを見ると、「セックスのテクニックについて書かれた本ね」と思う人は多いでしょう。
でも、そうではありません。
いや、正確に言うと、テクニック的なことも書いてありますが、主な内容は、良いセックスをするための体についての知識、言い換えると、良い性行動のベースになる体の知識と、そのための体づくりの本です。
ちなみに最初にご案内しておきますが、この本は出版時にはパステル調の繊細なイラストが美しい表紙だったのです(上の画像)が、後日、出版社の意向が変わったのか、全く違う雰囲気の表紙に変えられました。
個人的には、出版時の表紙は大好きで、教室の生徒さんにも大いに勧めたのですが、表紙が変わってからは、人前に出すのが気恥ずかしくなってしまい、残念です・・・。
それはさておき本題に戻りますと、この『愛しあうからだ』をいわゆる四十八手のような指南本だと思って手に取ると、ちょっと肩すかしを喰らうでしょうね(笑)
現代日本人の身体能力の衰えと、それがセックス(ひいては妊娠・子育て)に及ぼす影響について書かれた大変マジメな本です。
私の記憶では、著者の高岡先生は多数あるご自分の著作の中でも「主著の一つ」とある時おっしゃっていました。
ゆるプラクティスで能力を高めつつ、健康で美しい体づくりをしたい人にとっては、大変わかりやすく書かれた本です。
「ゆる体操をやると、モテ度が上がりますか?」と以前、ゆる体操の愛好者に尋ねられたことが2、3度あります。ご本人たちはちょっとテレながら冗談めかしてお聞きになられましたが、内心まじめなのが分かりました。
私は「上がりますよ」とお答えしました。その時々は、この記事に書いたような具体的な詳しいことはお話ししませんでしたけれども。
セックスが気持ちよくないとか、満足できないのは、体が固まっているから
日本ではセックスレス人口が増えていると言うのは、以前から言われていることですね。それが少子化につながっていることは想像に難くありません。
私の友人の一人に、30歳過ぎのアメリカ人女性がいます。彼女は最近結婚したばかりで、フルタイムで勤務しながら、近い将来に子供が二人欲しいと言っており、彼女の友人たちも次々に結婚しては子供を持っていて、それがごく普通のようなのです。
私は彼女とチャットしていて、そうした話題になるたびに「アメリカの若い人はそうやってパートナーを見つけて結婚から出産へと、普通に進んで行くのに、日本では結婚しない人が多いし、子供も少ないんだよなあ」と思います。「昔はそうじゃなかったのに」と。
この本には、セックスレスの人が増えているのは「日本人の体が昔に比べて、運動不足やストレスが原因で大変固まってしまい、能力が下がっているからだ」という意味のことが書かれてあります。
体が固まっているから、セックスが楽しくないし、楽しくないから、結婚へも進めないということですね。
一方、アメリカ人は一般的にアウトドアの行動が好きでキャンピングやサイクリングなどもよく行くし、筋トレやワークアウトなど結構ハードなトレーニングの愛好者が多く、アクティブですね。その分、日本人よりの体の固まりの度合いが少なくて済んでいるのではないかなと個人的には考えています。
ここで『愛しあうからだ』から引用します。
(前略)セックスは運動です。ですから、もしうまくいかないのだとしたら、運動をする体としての機能が十分に働いていないと理解すべきなのです。自分自身ですら自覚できないような深刻な運動不足、つまり現代社会特有の運動の質と量の低下― それにともなって起きる異常な体の硬縮が、それです。若いのに老人のように体が難く縮まって、体が思うように機能しない状態ですね。
『愛しあうからだ』p.20
運動(スポーツという意味ではなく、体を動かすこと、という本来の意味)なのだから、ゆるんで関節なども柔らかく良く動く体の方がセックスに良いのは当然のことでしょう。個別のテクニック以前の話ですね。
ゆる体操の理論では、そのようにゆるんで柔らかく、運動能力が高い人のことを「本質力が高い」と言う言葉で表します。
そして各分野の具体的な技術力とかスキルのことを「具体力」と呼んでいます。例えば、サッカーや野球のようなスポーツもそうですし、ダンスや料理の技術などもそれぞれが「具体力」です。そして各分野の高度なスキルを持っている人のことを「具体力が高い」と言います。
セックスもこの理論によると「具体力」になります。
そして、本質力が高い人は、具体力も高いことが多いので、
体がよくゆるんでいて、柔らかく滑らかに良く動く(本質力が高い)人は、セックスの時にも体がよく使える(具体力が高い)ということになります。
つまりセックスが楽しめて、妊娠や出産へと自然に進んでいくは、前提として、まずゆるんだ良いからだが大切なのです。
昔の女性は、強くしなやかで、美しい体を持っていた(男性も)
私の祖母はもうずいぶん前に亡くなりましたが、80歳をかなり過ぎても、姿勢が良く、働き者でした。子供は8人、さらに義父母も同居していましたので、食事の準備だけでも相当たいへんだったと思います。かまどに火を起こして、水を井戸から汲み上げるところから始まるのですから。
農家でしたから、そのころの農家の主婦が皆そうだったように、子供をおぶって田畑での農作業、農耕用の牛の世話もありました。朝は夜明け前に起き、夜も縫い物や片付けものをして、物家族が寝静まってから最後に床につく。
また、洗濯はタライを地面に置いて、大家族全員の着るものをしゃがんでゴシゴシ洗うのです。たった1日やっただけでも、今の日本人なら(仮に筋トレでよく鍛えた人でも)翌日、ひどい筋肉痛になって、腕が上がらなくなるかもしれません。
そういう生活労働が毎日、生きている間中続くのです。「自分にはとても無理」と思うのは私だけではないと思います。
そういう働き者で、5人も10人も子供を産み育て、かつ歳をとっても姿勢が良くて医者にもほめられる、というような女性が昔はわりと普通にいたものです。
そういう今の感覚なら苛酷とも言えるような家事労働を昔の女性はやっていたから、体が鍛えられてもいましたし、種々様々な労働のため、体がよく使える、つまり本質力が高い「高機能」な体でした。
たいへんよくゆるんだ良い体をしていたのです。性的な能力も高かったからこそ、子沢山でもあったのです。
子供時代の体の使い方は一生続く その1 ゆる体操と家事手伝いの関係 (内部リンク)
女性だけではありません。男性も同じでした。私が小さな子供だった頃の父親やおじ達は、毎日、今とは比べ物にならないほど生活の中で体を使っていましたから、肩まわりや背中や腰回りなどにしっかり筋肉がついていました。そして近付くと、フワッとした気持ち良い温かみが伝わってきたものです。今の日本人にはあの「フワッ」とした温かさや、何気ない包容力を持っている人があまりいないですね。
昔のそうした頃に比べて、圧倒的に運動量が減り、体の能力が退化して固まってしまった今の時代では、どうでしょうか。
体が固いということは、体に十分な余裕が無いことと言えます。体に余裕がなくいつもいっぱいいっぱいだと、気持ちもどこかしら追い詰められた状態になります。
セックスというのは体を通したコミュニケーションですから、他のコミュニケーションと同じで、互いに余裕があることではじめて、円滑に進みます。
それでも、通常の生活が続いている間はさして問題ないのですが、状況が変わると、・・・
ここでまた引用します。
(前略)いったん何かアクシデントが起こったり、負荷が増えた場合には、あっという間に閾値を超え、トラブルを起こしてしまいます。それは生活や仕事の環境が変わった、仕事で抜擢された、子供が生まれた、親の介護が必要になったなど、どんなことでもたやすく起こります。当然、性生活など、ひとたまりもなく破壊されてしまうはずです。
『愛しあうからだ』p.52
ゆるんだいい体になれば解決する
現代日本人のセックスレスや、少子化の問題の原因はだいたい分かった、ではどうすれば良いか?ですが、
この本には「感じるカラダをつくるエクササイズ(ゆる体操&ゆるヨガ)」が各章ごとに掲載されています。男女別々のエクササイズが分かりやすい綺麗なイラストいりで紹介されています。
見ながらやられることをお勧めしますし、それぞれのエクササイズをすでに知っている人でも、「え、そうだったのか」という発見がいっぱいある解説付きです。
昔のように生活労働で体を鍛え、ゆるめる機会が失われた今、代わりにゆるプラクティス(ゆる体操、ゆる筋トレ、歩道)をやることで、セックスに必要な体のゆるみやしなやかさを開発できます。
また、愛されるからだ、愛する能力が高いからだを手に入れるには、「上質な筋肉」を鍛えるべきだとこの本にはあります。
上質な筋肉とはインナーマッスル、特に大腰筋です。大腰筋が鍛えられると、姿勢がよくなり、その結果、骨盤内臓器が強くなり、腰が疲れにくくなりますが、セックスにも大いに関係があります。
大腰筋については、123〜126ページに詳しく述べられています。ここで書いてしまうのは惜しいので、読者の皆さんがご自分でお読みください。
↓ 大腰筋をもっとも楽チンに、寝たままトレーニングできるのが「寝ゆる黄金の三点セット」です。疲労回復にも抜群の効果がありますので、仕事などのストレスでくたびれて性生活を楽しむ余裕がないケースにも役立ちます。
また、「肌が良くなる」ことも大切です。この本にあるエクササイズを行うと、全身の循環がよくなり、肌がきめ細かく、しっとり感が出てきます。手を握りあうとそれだけでとても気持ち良いし、肌を合わせると吸い付くような感じ・・・。これはもちろん、男性女性の区別なく、魅力的ですよね。
またこの本には、ここでは紹介しきれない、様々な経験談や興味深い知見が満載されています。ぜひ、ご自身でお読みになることをお勧めします。
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中田ひろこ@ゆる体操