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ゆる体操で腰痛と向き合う

ゆる体操コラム

みなさんこんにちは。このサイトでは時々話題にしていますが、私は20代の頃から腰痛を抱えています

当初は痛みで歩けなくなるほどの酷さでしたが、今はゆる体操でなんとかコントロールできています。

世の中には腰痛で苦しんでいる人も多いと思いますが、腰痛に限らず関節や筋肉の痛みというものは一旦慢性化しまうとなかなか厄介なものです。

腰痛の対策として、ゆる体操が最も得意なのは筋肉や筋膜の疲労が原因で起こる腰痛ですが、腰痛を含めた腰のトラブルには色々と種類があり、それぞれの対応を間違えるといつまでも治らない、という事になりかねません。

今回は腰痛の種類と長年腰痛と向き合ってきた私のゆる体操の取り組みについてお話ししたいと思います。

もうすでにご自分の痛みの原因がお分かりの方は「1.腰痛の種類」は飛ばして、「2.種類別、ゆる体操での腰痛対策」へ進んでいただいても良いかと思います。

まずは腰痛のタイプについてご説明しましょう。

1.腰痛の種類

 筋肉・筋膜性の腰痛(筋筋膜性腰痛症)

筋筋膜性腰痛症は筋肉や筋膜が疲労や緊張に耐えかねて起こす痛みです。筋肉は伸縮する組織ですが、普段から適度にムラなく伸び縮みを繰り返していると、間に走る毛細血管から十分に栄養が行き届き、筋肉も健康な状態を保てます。

ところが筋肉は酷使すると疲労から回復しきれず、筋肉痛を起こします。筋肉痛は体を休ませてほしいシグナルです。筋肉痛を起こしている筋肉はある種の炎症(※1)をおこしていますので、筋肉も固くなってしまいます。放っておいてさらにハードな運動をすると怪我の原因にもなります。

しかし筋肉は割とわがままで、逆に何もせずじっとしていてもやはり拘縮してしまいます。

極端な例でいうと、怪我でしばらく固定をしていて、怪我が治ったのにその関節が動かなくなってしまった、という事があります。それは動かさない間に筋肉が筋肉の役目を果たせなくなってしまうほど固まってしまった典型例です。そういう場合はリハビリで動かしてもらったり、自分で動かす努力をしながら機能を回復するのですが、最初はある程度無理に動かさないとどうにもならないので、たいてい痛みを伴います。

このように何らかの原因で拘縮してしまった筋肉は動かすと痛みを発します。普段から体を動かさないでいたり、身体の癖が強く腰椎まわりの可動性がわるくなると、ちょっとした姿勢の変化で痛みを発するようになります。これも筋筋膜性腰痛症の原因です。ちなみに座ると痛い、立っていると痛いという場合も、伸ばされたり縮んだりすることに対する許容範囲が低くなっておこる痛みですから、同じ理由といえます。

特に筋肉の付着部の腱になっている部分は元から伸び縮みしにくい上、他の筋肉が一緒についている場所も多いので痛みを起こす名所のようになっている場合が多いです。

 腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症

腰椎椎間板ヘルニアは椎間板が飛び出して後ろ側にある神経を圧迫するものです。腰部脊柱管狭窄症は神経が通っている脊柱管が何らかの原因で狭くなり、脊髄やそこから枝分かれしている抹消神経の根元(神経根といいます)を圧迫することです。脊柱管が狭窄している、という意味で、広義ではヘルニアも含む場合もありますが、普通は主にそれ以外の原因(靭帯の肥厚や余分な骨ができる、等)で脊柱管が狭くなり神経を圧迫することを言います。

椎間板ヘルニアの図解
ヘルニア
腰部脊柱管狭窄症の図解
狭窄症

ヘルニアや狭窄症は基本的に痛みや痺れがあるかどうかが治療の対象になります。という事は大した痛みがない場合も多くあるという事です。
実際にMRIなどで神経の状態を見て圧迫があり、ヘルニアや狭窄症という診断をされたとしても、痛みを伴わないものもありますし、痛みの強い弱いは人それぞれです。

ヘルニアや狭窄症の代表的な症状である下肢の痛みや痺れは神経を圧迫することから出るものです。これらの症状は圧迫された部分よりも末端に症状が出るので、腰そのものよりも臀部から下肢に症状が出ます。腰が痛くなるとは限らないのですが、実際は腰痛を伴うことが多いです。

腰痛を伴う事が多いのはあとで説明するとして、なぜそのような事が起こるのか?ということですね。上の図のようにヘルニアは椎間板を背骨が圧迫するという物理的なストレスで起こるものです。では狭窄症のように隙間が狭くなってしまうような変化はなぜ起こるのでしょうか?
その最も大きな原因は、医学では「経年変化」という言葉で説明されますが、要するに「老化」という事ですね。
わかりやすく言うと、機械と同じで長い間使っていると少しずつ傷んでくる、という感じでしょうか?

しかし機械と違って人体には自己修復機能があります。骨や靭帯に限らず人体の組織は代謝によって日々更新されているのですが、姿勢の悪さや疲労など、さまざまな原因で、関節のアラインメントが狂ってくるとその修復機能も狂ってくるのです。

この事について少しご説明いたします。

生物のあらゆる組織は日々代謝を行なっています。それは各組織が自己調整しながら修復・再生をするのですが、その時にメカニカルなストレスがある部分にかかっていると、そこを補強するようなプログラムが生物にはあると考えられています。この仕組みははっきりわかってはいませんが、骨の場合、骨細胞が体にかかる荷重などの物理的ストレスを感知し、それに手掛かりにして周りの骨細胞と連携をとって、骨を溶かす細胞と作る細胞に指示を出しながら日々新陳代謝をしています。(ちなみに自分でできる骨粗鬆症の予防策としては、できるだけ歩いて骨に刺激を与えることが大事だと言われています。刺激を与えられたところは補強しようとするので骨密度が下がりにくくなるということですね。)ところが体の癖が酷くて体のある部分に余分な負荷がかかると、そこを補強しようとして本来なら不必要な部分に余分な骨ができて隙間を埋め立ててしまうのです。この余分な骨が神経を圧迫すると狭窄症になります(このパターンの狭窄が問題になる場合は頚椎に多いです)。また周囲の靭帯に負荷がかかるとその靭帯が無駄に補強されて分厚くなってしまうと考えられています。これも狭窄症の原因となります。

ヘルニアは姿勢の悪さや重労働による負荷で背骨が椎間板を圧迫することで椎間板がはみ出てしまうのですが、はみ出るところまで行かなくても何らかの原因で椎間板の周囲が圧迫されてそこに栄養が行き届かないと、椎間板から水分が抜けて次第に弾力性を失っていきます。

そうすると周りの組織がそれを補強しようとして分厚くなったりするので、より狭窄症に進むリスクが高まります。

腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が腰痛を伴う事が多いのも、結局腰に余分なストレスがかかって出る症状なので、腰の方は先ほどの筋肉・筋膜性の腰痛症を起こしているパターンが多いというわけです。

 その他の難治性の腰痛

さて、腰痛に限らずですが、痛みにはこれらの物理的なストレス以外が原因となるもの以外にも色々なパターンがあります。

一番厄介なのは潜在意識に定着してしまった痛みでしょう。

そもそも痛みというものは、痛みを感じる部位のまわりに起こっている何らかの非常信号を脳の中枢にあげて、同時に上がってくる様々な情報から重要度を脳が判断して最終的に主体意識が痛みとして感じるものです。

この時にその情報を実際にどの程度の痛みとして感じるかどうかの権限は、脳を含む中枢神経系にあります。

要するに痛みの信号の中身を精査しどのように処理するかは中枢神経系に任されているので、例えば怪我をして、もうその怪我が治っているのに、何らかの原因で一旦出来上がったフィードフォワード、フィードバックの回路が適切に消えずに残ってしまったりする場合もあります。
運動を反復するとそれが潜在意識下に学習されていくように、痛みも脳はそれを一つの回路としてある意味学習していきますので、長時間刺激が続くと痛みだけがそのまま残ってしまうということもあります。

これはある種の脳の処理ミスの問題といえますが、それとは別に心因性の問題が絡んでくることもあります。

例えば仕事に何となく行きたいくないなと思っていた人が、ぎっくり腰のような急性の腰痛を起こす事によってしばらく仕事を休めたとします。

そのような時、本人にとっては腰痛が利益として働く事になるので、そういった場合はいつまでも痛みが消えず、痛みが慢性化していく場合があるのです。

また、痛みを訴えることで本人が他人に気にかけてもらえる場合などもこういう経過をたどったりします。

これらの場合本人は確かに痛くて辛いのですが、潜在的には現状維持を望んでいる自分がいるので非常に治りにくい状況に陥ってしまいます。

実際にこの手の慢性腰痛症には抗うつ剤系の薬が有効とされている場合がありますが、腰痛であることが本人にとって何らかの利益がある場合、潜在的には実は良くならない方が良いわけですから、内服を始めても薬の副作用とは関係ない症状が現れて内服を継続できなくなる場合すらあります。
ましてや体操で改善と言っても、本人からすれば実は治ってしまうと困るわけなので、何かと理由をつけてやらなくなります。しかし本人はそういうアンビバレンツな自分に気づいていないのです。
本人に自覚がないので、楽で気持ちよくできるゆる体操といえどもこのタイプの痛みの改善はなかなかに難しいと言わざるを得ません。

こういった症状の医学的エビデンスをしっかりとることは難しいかもしれませんが、整形外科の現場で、メンタル面のケアも重視しているDrからすればさほど珍しいことではないと思われます。

その他、交感神経が優位になりすぎても同じように難治性の痛みが続くこともあります。

このように色々なエラーが様々な原因によって起こり、痛みが続いてしまうのも人体というシステムの特徴と言えます。

種類別、ゆる体操での腰痛対策

腰痛の場合のゆる体操はなんと言っても寝ゆる黄金の3点セットがお勧めです。うまい具合に腰だけでなく下肢症状にも対応していますから、これ以上のものはないと言って良いでしょう。特に「ふくらはぎ膝コゾコゾ体操」はどのパターンにも対応していますから、ある種最高の腰痛体操といえます。
しかしいくら膝コゾが良いと言ってもそれぞれの場合に合わせて取り組むスタンスが微妙に異なります。

筋筋膜性腰痛症への対応

基本的にはゆる体操は治療行為ではないとは言え、ゆる体操は体をゆるめる体操ですから、やはり筋筋膜性腰痛症とは非常に相性が良いと言えます。筋筋膜性腰痛症は動かしすぎる事による疲労からくる炎症、もしくは動かさない事による拘縮からくる痛みです。この二つは厳密にいうと別のものかもしれませんが、疲労や癖による痛み、というカテゴリーで一つに考えることは可能でしょう。

動かしすぎによる事によって出た痛みは時間が経つと必ず筋肉の拘縮が始まりますから、その段階でよくゆるめておくと、代謝が高まり、回復力が上がります。実際にゆる筋トレのクロス腹筋で筋肉痛が起こりにくいのは、腹筋をさすりながら行うことで無駄な力が入らないことと、さすることで回復力が高まる事が理由だと思われます。

また、風邪などで免疫系が働きだすと免疫系の中でも自然免疫は身体への非常信号として炎症物質を発生させるので、普段のコンディションでは痛みを感じない部位でも、潜在的な疲労が溜まっている部分に痛みが出る事があります。

こういう場合は炎症物質を撒き散らしている原因である抗原が排除されないと痛みがおさまりません。

実感でいうとゆる体操が効かないわけではないのですが、やってもやってもすぐに元に戻ってしまう感じになります。よく考えてみたら炎症を起こしている原因が疲労などではないの当たり前の事です。

こういう時はゆる体操は体の調子を整える程度にして、ゆっくり休むのが良いと思います。

また、息ゆるが好きな方は寝ながら息ゆるをやると免疫系が活動する助けになると思いますし、高度運動科学トレーニングに日々取り組んでおられる方なら細胞系のメソッドは役に立つものも多いでしょう。

筋筋膜性腰痛症への対応

  • 最もゆる体操と相性が良いパターン あえて一つ選ぶならオススメは膝コゾ
  • 風邪の筋肉痛で腰痛が悪化する場合があるのでその時は注意。リラックスして体を休める。オススメは息ゆる
腰痛だけでなく全身の疲労回復に役立つ「膝コゾ」
代表的な息ゆる「息ハートロ」

ヘルニア・狭窄症への対応

ではヘルニアや狭窄症に対してはどうでしょうか。強い痛みがある場合は神経の圧迫が原因による神経痛がメインになっているので、ゆる体操だけで対処するのは現実的には難しいと思われます。何らかの原因で神経の通り道が狭くなっている場合は、腰回りがある程度ゆるんでニュートラルなポジションが取れたとしても神経の圧迫が改善されるかどうかはわからないですからね。
もっとも身体が運動科学的に相当分化した状態で、自分の神経がどうなっているかも顕在的にわかる人なら不可能ではないかもしれません。しかし私も20年以上やってきましたが、筋肉や骨格に関してならそれなりにわかりますが、神経系や血管系などは顕在的には全くわかりません。また、そうなるまでゆる体操をやり込むということが治療法として確立するとは思えません。

そんなハイコストなことを考えるよりも現在は神経痛専門の良い薬がありますので、医者の指示に従って、それを使ってまずは神経の興奮を抑えます。ちなみに手術が必要になる場合というのは、すでに歩くのが不自由になっていたりもっと進んで下半身に麻痺が出かけていたりする時です。そういう症状がない場合は一般的には基本的には手術の対象外なので内服で様子を見るのです。

そして腰部の神経が圧迫されていることによる神経痛は臀部から下肢に現れます。ですからヘルニアや狭窄症の診断を受けて、下肢症状に加えて腰も痛い方は、筋肉・筋膜性の腰痛もあると考えた方が良いです。

また、ヘルニアや狭窄による下肢の神経痛があると、大抵は下肢の筋肉もこわばってそちらからくる様々な症状もありますから、そちらに対してもゆる体操は有効です。

そして薬を使って一旦痛みがおさまると、それ以上ヘルニアや狭窄を進めないためにもゆる体操は有効だと思われます。

実際にどの程度有効かと言われると、はっきりしたエビデンスを取るのは不可能なので、数字で表したりすることは無理です。しかし、あとでご紹介しますが私のここ数年の変化でも以前よりも現在の方が椎間の間が開いているようにも思えますので、何らかの症状を抑える効果はあると思います。

ヘルニア・狭窄症への対応

  • 下肢に症状があるなら神経痛の可能性も。まずは整形外科受診を。体操が可能ならおススメは3点セット。
  • 臀部付近のコリや痛みが強い場合はオススメは踵クル・腿ユッタリ
特におススメは膝コゾ 自分ができる体操をしましょう
股関節回り、特に殿筋をゆるめる

その他の難治性の腰痛への対応

さて筋筋膜性腰痛症やヘルニア・狭窄症を除いたその他の場合ですが、これは様々なパターンがあります。診断もシップや神経痛の内服が効かなかった場合に検討されるものです。痛みが強い場合は普通の痛みどめよりも強力なものを使う場合もありますが、具体的にどういったものを使うのかはその個人に合わせた対応が良いので、これといった特別な方法があるわけではありません。

ただ、そのような方は大抵交感神経優位になっているので、副交感神経を優位にするゆる体操を丁寧にやってもらって少しずつご自分の状態を体で理解していただくしかありません。

ゆるんで自分の状態がよく見えるようになると、自然と症状がおさまっていく場合もあります。

特に体調不良などやストレスが重なり、一時的に交感神経優位になっている状態ならゆる体操をやってもらうのが良いと思います。

また、脳に痛みの記憶が定着してしまった場合は、これはいわば身体意識のプログラムがバグっていると考えられます。ゆる体操でさすったりゆらしたりしながら身体意識のデバック作業をすれば良いと思います。
こう言った場合のオススメの体操は息ゆるやさすり系の体操が良いでしょう。もちろん自分の取りやすい姿勢で行うのがおススメです。

ただしどの場合でも、ゆる体操で劇的な改善などを期待せず、いわゆる標準治療を受けながらご自分でできる対策として淡々と基本通りゆる体操をやってもらうのが良いと思います。医学と運動科学は身体を扱うという部分において重なる部分もありますが、本質的には全く別の分野と捉えた方が良いと思います。よってそれぞれの得意分野はもちろん異なります。
ゆる体操で大事なことは変な理想やイメージなどではなく、気持ち良いと感じられる身体であることです。
そこに難しい理論や本人の独自の解釈が入ってしまっては大抵の場合正しい判断ができなくなりますし、体が交感神経優位の状態に支配されてゆる体操をしてもなかなかゆるまなくなりますす。
そもそも期待すること自体がイメージに基づくものなので、身体の状態がどうあるかとは全く別の問題なのです。

こういう時は頭を真っ白にして、動画や教室の先生など上手な方のリードに従って、ていねいにゆる体操をすることが基本中の基本です。

その他の腰痛への対応

  • 交感神経優位になっている可能性が高い。3点セットも良いがオススメは息ゆる・全身スリ・尾骨モゾ。
  • あまり頭で色々考えないでリードにそって丁寧に、声に出してすること
小さな動きで出来るので痛みがあってもやりやすいです
副交感神経優位になれる体操です

私の場合

さて、ここからは一般論でなく、私の個人的な話と状況をご説明したいと思います。

私は20代の頃にかなり激しく武術の練習をした時期があったのですが、その時に本格的に腰を痛めてしまいました。一時は息をするだけでも痛いという状況でしたが、最悪の状況が落ち着いた後でも、立っているのも座っているのも辛いという状況が続いていました。

その後ゆる体操に出会い、何とか社会復帰ができる状況まで改善しましたが、腰の張りがなくなるということはなく、コンディションが悪くなると何かの拍子にぎっくり腰をする、ということが長く続いていました。

10年ほど前にかなり良い状態が続いたこともありましたが、4年ほど前から足先に痺れを感じるようになり、その後は座ると足の痺れが強くなるという状況がずっと続いています。

ここで私の腰椎のMRI画像を載せておきます。

軽度の狭窄症がある腰椎MRI断面図
図1 腰椎4番と5番の間
軽度の狭窄がある
狭窄症がない腰椎MRI断面図
図2 腰椎2番と3番の間
狭窄はない
図3 腰椎部を縦に割った画像
4番5番、5番と仙骨の間にヘルニアがある

図3のMRIで見ると、腰椎の4番と5番の間と腰椎の5番と仙骨の間に軽いヘルニアがありますが、MRIの画像診断医の診断ではそれほど高度な狭窄ではないということです。脊椎の手術を専門にしているDrの話でも手術が必要となるレベルでは全くないということですが、足の痺れが一旦出るとなかなか治りにくいという話はされました。

断面図をみても図1のヘルニアを起こしている部分は神経根の部分(図の赤丸)が少し狭くなっているのがわかります。それに比べて図2では神経根の部分に圧迫がなく、神経の通り道に余裕がある事がわかります。
ヘルニアでも急激にボコっとでたタイプのものはかなりの痛みも出ますが、ヘルニアの病巣を白血球が貪食してくれるので、時間が経てば改善していきます。

私のはそういうタイプではないので、症状のレベルはコンディションによるとはいえ、一生抱えていくものなのでしょう。

以前SNSでゆる体操をしてヘルニアが治った、ということをレントゲン写真を載せて説明している方がおられましたが、そもそもヘルニアが治る、という表現はヘルニアの病巣がなくなる、ということです。しかしレントゲン写真ではヘルニアの病巣は確定できませんので、症状がないからと言ってヘルニアがなくなったかどうかは別の問題ですし、ゆる体操で治ったのかどうかもそれだけでは全くわかりません。そもそも起きていたのが下肢症状なのか腰痛なのかもわからない状況では何がどうなったのかもよくわからないはずです。

腰痛が治ったというのなら腰周りの緊張が取れて痛みがなくなったということでしょうから、それは普通にあることですが、腰痛とヘルニアがある、ないということは別の問題なので、申し訳ありませんが全くの見当違いと言えると思います。

さてここで数人の整形外科医の所見と運動科学の知識から私の腰がどういう経過を辿っているか類推してみましょう。

まずは20代の時に起こしたであろう腰椎椎間板ヘルニアは基本的に無理な運動がたたった事によるものだと思います。無理な運動により腰のポジションが悪くなり椎間板に圧迫をかけ続けた結果、ヘルニアを起こしてしまったのでしょう。

私の症状は基本的に腰痛でしたが、ある程度の下肢の症状もあったので、当時は筋筋膜性腰痛症とヘルニアによる下肢への神経の圧迫症状も出ていたと思われます。

その後ゆる体操で腰回りをゆるめた事による効果で腰痛そのものは改善しましたが、ヘルニアそのものは残りヘルニアにより椎間板から弾性が失われてしまった結果、常にまわりの筋肉や靭帯に負担がかかる状況になっているので、ゆる体操をやっても常に腰のコンディションには気をつけないといけない状況になっていると思います。
脚の痺れが出る時は腰椎4番と5番の間からでる神経根症状と一致していたので、そこにあるのではと予想はしていましたが、5番と仙骨の間も常に疲労が溜まるのでそこも怪しいとは踏んでいました。結果としては両方にヘルニアがあったということなのですが。

私の場合、疲労が溜まると腰と臀部が連動して固まってくる傾向があるので、足の痺れに関してはやはり腰の神経が圧迫されていることか、長時間座位の場合は臀部の梨状筋などの拘縮による坐骨神経の圧迫による症状もあるかもしれません。

座位のポジションが理想的に取れれば良いのでしょうが、そもそもコンディションが悪い時は腰と臀筋が突っ張って良い座位のポジションが取りづらくなるので、仕事中などは(当たり前ですが!)仕事を優先するために、良いポジションで座れなくなって痺れがひどくなることが多いです。

参考までに私の腰のレントゲン写真も載せておきましょう。

著者の2019年腰椎レントゲン写真
腰椎レントゲン写真2019年
筆者2023年腰椎レントゲン写真
腰椎レントゲン写真2023年

腰回りは大変に気をつけているにもかかわらずここ数年で腰椎の5番の左側(赤丸の部分)に余分な骨の棘(「骨棘」といいます)が発生してしまっています。原因はわかりませんし、これが腰痛を引き起こしているわけではありませんが、何らかの負荷をかけてしまっている可能性があるという事なのでしょう。

しかし椎体と椎体の間は十分に隙間がありますから、ここはゆる体操の効果が出ているといって良いと思います。むしろ4年前よりも整っている感じもします。

先ほどご紹介したMRIをみると、やはりヘルニアを起こしている腰椎の下位の部分は水分が減ってしまって黒く写っています(この写真では水分が白く映るようになっています)。椎間板から水分が失われると弾性が失われるので、よく手入れをしないと将来的に周囲の靭帯が肥厚したり骨棘が大きくなって本格的な狭窄症に進むリスクがあります。

これらの状況から判断して、やはり私の場合は腰まわりを常にゆるめて疲労がたまらない状況を心がける必要があるのだと思います。

腰痛と向き合う

このように私の腰は骨棘やヘルニアなど、形態的に丈夫ではない状況になっているので、今後もある程度のリスクを覚悟してやっていく必要があるのだと思います。

しかしそういう症状があるとはいえ、全体的に骨そのものにはほとんど問題がない状態です。また骨に様々な問題があっても、それが医学的に治療が必要なものとそうでないものは全く別問題ですし、運動科学の目で見ても問題なく上達できるということはあるわけです。

それを考えると私のように腰痛のリスクが高い人の対策というのは、つまるところ日々ゆる体操をして体の手入れを怠らないことに尽きると言えます。
自分の抱えているリスク以上にゆるむ事ができれば少々の問題は克服されるのです。
腰痛とは直接関係ないかもしれませんが、例えば脊柱側湾症があっても症状が軽度ならセンターは通ります。

陸上短距離のウサイン・ボルト選手は側湾症があったことはその筋では有名な話です。

彼は走りのフォームに左右差があった事が高岡先生の研究により指摘されていますが、側湾症があるとどうしても左右差が出ますから、逆にそれを上手に使っての結果かもしれません。

実際に私の知り合いは若い頃に激しいスポーツに取り組んでいたために骨はあちこちボロボロという方がいますが、その方は私よりゆる歴は少ないのに大変にゆるんだ方です。
そもそも開発者である高岡英夫先生が激しいスポーツによる怪我で膝・股関節の靱帯を損傷していることを公表していますから、やはり「体には希望がある」のですね。

私の普段の取り組みとしては具体的には3点セット等で腰回りをゆるめるのはもちろんですが、それ以上に立位・座位のポジションに気を付けるようにしています。坐骨モゾやウナポジション系のトレーニングですね。
しかし私の場合はヘルニアがあって、前側から神経を圧迫しているので座って腰が丸くなる状態になるのはやはり苦手なのだと思います。かと言って反らせば楽なのかというと、今度は筋肉が疲労してしまうので、結局は良いポジションを探し続けること以外は解決策はないと思います。

どちらにしても狭窄症やヘルニアがあって慢性的な症状がある場合は、ちゃんと腰痛と向き合い、症状を理解して、それと付き合っていくことが重要だと思います。

まとめ

  • 腰痛、特に下肢症状を伴う腰痛は早めに医者にかかり原因を特定することが大事
  • ゆる体操で腰痛のケアをするにもまずは自分の状態を知る事。神経痛には内服が必要な場合も
  • 慢性化した症状に対しては日々のケアが重要

このように医学と運動科学は身体という同じ分野を扱うので共通するところもあるとはいえ、根本の視点が全く違いますので、ちゃんと分けて考える必要があると思います。
最高のコストパフォーマンスを誇るふくらはぎ膝コゾコゾ体操でさえ、ヘルニアの痛みがひどいときは出来ない人も多いのです。
そもそもゆる体操は医学とは違い治療行為ではありません。逆に根本の視点が違うからこそ、互いに相補性があるのです。
残念なのはそういうことを理解せず、ネット等で集めた半端な知識で医学・運動科学の両方の長所が台無しになってしまう事です。
腰痛などの痛みなどがある場合は、医学は医学、運動科学は運動科学ときっちり分けた上で、それぞれのエキスパートに意見を聞いて対策をするのがベストでしょう。
そして運動科学のメソッドがいくら画期的なものに溢れているとはいえ、歯が痛い時に痛み止めを飲んだら痛みが治った、というような効き方はしませんから、やはり日々の手入れを地道に行うことが肝要なのだと思います。

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(※1)近年では炎症を伴わない筋肉痛についての研究も行われているようです。

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