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やっぱりインナーマッスルトレーニングが必要な5つの理由

ゆる体操コラム

人気サッカー漫画「フットボールネーション」でも紹介されたインナーマッスルの理論。それによって特にサッカー界ではその理論が浸透するに至りましたが、まだまだ様々な方面で色々な誤解もあるようです。
私はインナーマッスルトレーニングが当然必要だと思っています。それは自分が腰痛をゆる体操で克服するにあたって、それが必要だと思う実感があったからです。具体的に言うとインナーマッスルが効いているときは腰の調子が良い実感があるという事ですね。今回このような題名の記事を書こうと思ったのは、世間一般では必ずしもそうでないと思っている方々もおられることに気づいたからです。そもそも「インナーマッスル」は日本語では「深層筋」という言葉が当てはまると思うのですが、「深層筋」の定義が医学的にはっきりしていない部分もあるので(単純に言うとどこからが深層なのかを定義できない)、それも色々な議論を巻き起こす原因になっていると思います。
また未確認情報ですが、なんでもクリスチアーノ・ロナウドが「インナーマッスルトレーニングは不要」と言ったとか言わないとか・・・。
それでも私はインナーマッスルトレーニングは必要と考えます。以下にその理由をお話しいたします。

1.人間の体に無駄なものはない

私は人間の体に無駄なものはないと考えています。これは19世紀や20世紀の研究レベルでは不要のものと考えられていた身体の器官も、近年の医学・生理学の研究で実は重要な働きを担っていたという事が徐々に明らかになっていることでも解ります。
例えば虫垂などは私が子供の頃は「人間の進化の中で不要になって退化した器官」というふうに習いましたが、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの竹田潔教授の2014年の研究によると善玉菌の保管庫になっているという意外な役割が知られています。
2003年に完了したヒトゲノム計画の時点では何の役割をしているかわからなかった「ジャンク」と呼ばれていた遺伝子が、さらなる研究で重要な意味を持っていたことも次々に明らかになっています。
どうでしょうか? 遺伝子のレベルでもそうなのですから40億年をかけた進化の過程において目に見える(インナーマッスルは外から見えませんが)身体の器官である「筋肉」が機能として不必要という事はまずありえないと思います。
先ほど私はインナーマッスルが役に立っている実感があるからという事を理由に挙げましたが、それ以外にも「人体に無駄なものはない」というある種の仮説をたててみると、ではそれを使い切るにはどうすればよいかという発想になってきます。運動科学総合研究所所長の高岡英夫はもっと進んで「人間の身体はあらゆる動物の中で最も進化した存在である」という仮定に立って研究をしていると言われていたことがあります。もう少し控えめに「人間の身体に無駄なものはない」という立場に立つと至極単純に「インナーマッスルはあるのだから使われなければならない」という事になります。

2.筋肉と骨格を使い切るために

「あるのだから使われなければならない」という立場に立つと、インナーマッスルも使われなければなりません。ではインナーマッスルが使える体とはどういうものでしょうか?
まず、先ほど述べたインナーマッスルの定義の問題ですが、これは学会ですらはっきりしていないので中々難しいのですが、少なくともよりアウター(=表層)の筋肉よりもよりインナー(深層)の筋肉の方が細かく骨格をつないでいるという事は言えると思います。これは肘関節や膝関節などで見ると骨格自体が大きいので解りにくいのですが、背骨など細かい単位の骨格で見るとよくわかると思います。
ここで大事な事は動物が進化する過程の中で脊椎動物としての最初の段階は魚類だったという事です。魚類には腕と脚がありませんから、脊椎動物の運動はその頃完成したという事を基本として考えると、腕や脚を使った運動は進化の過程で獲得した応用的な使い方と考える事が出来ます。
それを思わせる筋骨格の構造が下の図です。

肘関節の大まかな構造とてこの原理
肘関節の大まかな構造とてこの原理

図を見ていただいてもわかるように手に物を乗せて持ち上げる動きをてこの原理の観点から見ると、力の出力的にはこの構造は最悪です。支点と力点の距離と支点と作用点までの距離は支点と力点の距離が支点と作用点の距離より長い方が出力は得られますから、てこの原理のみで考えると図Bのように上腕二頭筋は肩関節の下から始まりもう片方は手首あたりについている方が都合がよい(構造上支点~力点の長さが支点~作用点の長さを超える事は不可能ですが)のです。
という事は基本的に動物はそのような運動を想定していなかったという事になります。それはそうですね。魚類にはそもそも腕がありませんし、四足動物も腕に物をもって持ち上げるという動作はしません。ようやく類人猿になって可能になった動作ですね。ですから「手に物を乗せて持ち上げる」(これをゆるプラクティスでは「クランク運動」と言います)という動作は生物種全体としてはかなり後になってできた応用的な動作なのです。ただし人間はそれが使えるようになることで社会を発展させてきた歴史があるので、「運動」と言うとどうしてもそのような動きがフォーカスされやすいという事はあります。

脊椎動物本来の動作とは?

となると「脊椎動物の本来の動作」とは一体どんな動作なのでしょうか?
それは背骨を運動器官としてつかう動きで、脊椎波動運動と呼ばれる運動です。魚類が泳いでいるときのクネクネした動きや、チーターが走っているときの背骨の波打つ動きですね。要するに背骨を見てみると細かく背骨をつないでいる多裂筋や回旋筋がその役割を担う訳ですが、これらは体幹の筋肉の中で最も深層にある典型的なインナーマッスルなので背骨の波打つ動作を起こそうと思えばインナーマッスルが使えないとどうしようもないという事になります。そもそも背骨周りのアウターマッスルと言える腰背筋などでは構造が大雑把すぎて背骨の波動運動は起こせませんよね。
そうすると腕や脚はどうなのか?というと、背骨から生み出された運動量を伝え、増幅する動きが基本と言えると思います。これは腸腰筋やハムストリングスが典型的にその作用をする動きで、中でも腸腰筋はインナーマッスルに分類してよい筋肉ですよね。
結局インナーマッスルだけでは細かい筋肉が多いのでパワーも小さいですが、「波動運動を起こし腰背筋などの大きな筋肉の力を借りながら運動量を増幅し、それを腕脚に伝えてスピードを増す」、出来るだけこの原則に沿った動きがここでの主題「筋・骨格を使い切る動き」という事になります。
実は(図1A)の構造は少し筋肉が収縮しただけで末端は大きく動きますから末端のスピードを増すには適している構造なのです。
以前フットボールネーションでも紹介されていた「アウターマッスルの筋トレをしすぎると動きが悪くなる」、というのは運動の構造がアウターマッスル中心のクランク運動優位になってしまうと、末端のスピードを増す波動運動を使えなくなる傾向があるからなのです。
ちなみにゆる筋トレにはそうならないための工夫が各所にされているので、正しくやればその心配はありません。

3.使い切るとパワーが増し、怪我のリスクも減る

インナーマッスルを使える比率が低い人がある程度使えるようになると、同じような動きをしても細かいエンジンがたくさんついているような状況ですのでパワーは当然増します。また軽微な動きなら逆にアウターマッスルの負担が減ります。腰痛などが治るのはこれが大きな理由です。例えば寝ゆる黄金の3点セット

寝ゆる黄金の三点セット【永久保存版】

などはそれ自体こわばった腰の代謝をよくして疲労物質を排出する働きがありますが、特に腰モゾモゾ体操は典型的な脊椎の波動運動で背骨周りのインナーマッスルが使えるようになるので、腰痛を起こす腰背筋や殿筋群の負担が減り再発を防ぐ効果もあるのです。これはスポーツでは怪我のリスクを減らす要因にもなります
また別の面から言うと、インナーマッスルが活性化(=意識化)し、関節に対してより細かい筋肉が使えるようになると関節自体の対応力が増すので、スポーツの接触プレイなどで不意を突かれても体が自然に反応して大けがになりにくいという利点もあります
これから考えると、アウターマッスルより細かく関節についているインナーマッスルが意識化されることが大事で、インナーマッスルを太くする事はその後でもよいという事になります。

まずは鍛えるより使えるようになる事(=意識化)が重要

世間ではインナーマッスルトレーニングというとインナーマッスルを太くすることに主眼を置きがちのような気がしますが、実はそれよりもはるかに大事な事は目に見えない深いところにあるインナーマッスルを意識化してよく使えるようにする事なのです。そうすることでバランスよく骨格と筋肉が使えるようになり、体の様々なパーツを使い切ることでパワーも結果的に出ますし、対応力が増すことで怪我のリスクも減らすことになります。
また先ほども述べたアウターマッスルの筋トレをしすぎる事の弊害はここにもあって、筋トレは目的の部位を猛烈に意識しますからアウターを意識しすぎる事でインナーマッスルの意識が落ちてしまい、意識が入らないとその部位は段々と使えなくなりますから「体を使い切る」という事が徐々に出来なくなってしまうのです。しかしスポーツにはパワーは絶対に必要なので大きく強大なパワーを持っているアウターマッスルの筋トレも当然必要で、アウターマッスルを鍛えるときもインナーマッスルの意識が抜けないように工夫する事が大事なのです。ゆる筋トレにはそういった工夫も初めから盛り込まれています。
引退したメジャーリーグのイチロー選手や現在も活躍中のサッカーのメッシ選手などは代表的に体を使い切る事のできるタイプで、相対的に体は小柄ですが(メッシ選手は一般人としても小柄)体を使い切ることにより物凄いパワーが出せますし、長く一線で活躍している事を思えば大きな怪我をしないのはより深いところが使えているという事になります。
また逆にクリスチアーノ・ロナウドのようなタイプはすべてのトレーニングやサッカーの動きで生来インナーマッスルもアウターマッスルも十分に使えていて、しかも豊富な身体資源(体格や筋肉量)も持っているので、わざわざインナーマッスルのトレーニングだけ取り出してすることはむしろ滑稽なぐらいに思えたのかもしれませんね。

4.内臓に近いので内臓の動きも高める

私は子供の頃は便秘気味の体質でした。元々神経質な体質も影響していたのかもしれませんし、今でもちょっとしたことがあると出なくなることはあります。そういう時に必殺の体操は踵クルクル体操や爪先クルクル体操です。

踵クルクル体操
踵クルクル体操

この体操でどうして便秘が・・・? と思われる方もいると思いますが、写真を見てもらうとわかるように、動かしている側の脚の股関節の位置が落ちていますね。それによりインナーマッスルである腸腰筋にテンションがかかりお腹の奥が引き延ばされたような感じになります。先ほどの話とも関連しますが、インナーマッスルを意識化していくには普通の筋トレ的な縮めて収縮させるやり方だけでなく、柔らかく引き延ばしてばねのようにテンションをかけるやり方が非常に効果的です(この収縮の仕方を伸張性収縮といいます)。
このあたりの詳しい解説は高岡英夫の著書「高岡式超最強の疲労解消法」ご覧ください。

高岡式 超最強の疲労回復法

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こういった運動でお腹の奥にある腸腰筋を動かしていると周りの内臓も一緒に運動します。内臓の筋肉は自分の意志で動かすことは出来ませんが、こうやって体幹内の奥深くにある深層筋を動かすことで内臓も一緒にマッサージされるような状態になり、内臓の健康を保てるという効果がインナーマッスルトレーニングにはあるのです。これは依然ご紹介させていただいたお腹ペコポコ体操にも同様の効果があります。
という訳で、インナーマッスルを意識化するトレーニングにはこのような効果も同時に期待できるのです。そういう意味では体を使い切るという方向性にも一致しますね。
よく考えてみると生物の体は一つの器官や物質が様々な方面に同時に作用するようにできている場合が多いです。ですから、生物の健康を保つためにインナーマッスルの機能が内臓の健康を高めるようになっていることはある意味当たり前の事なのかもしれません。

5.そもそも重心線は体の内部を通る

スポーツやダンス、日本舞踊、武術などをされる方にとってはこれが最も重要かもしれませんね。
当たり前のことですが人間の重心線は人間の身体の表面を通るわけではありません。これは例えばリンゴの重心線がリンゴの表面を通るわけではない事はリンゴをもってみたら誰にでもわかるのと同じことで、ある程度厚みのある、立体的な物体の重心線はその物体の内部を通ります。同じように人間の身体の重心線も体の内部を通るのです。
すべてのスポーツや芸事で重心とそれを貫く重心線のコントロールが重要な事は皆さん納得していただけるのではないでしょうか? 安定してしかも巧みに重心をコントロールするには重心線に遠いところでコントロールするよりも近いところでコントロールする方が有効だろうという事は、これも感覚的にはおわかりかと思います。
という事で特に体幹内でいうと深いところにあるインナーマッスルが重心のコントロールには最も適しているという事になるのです。特に腸腰筋は重心と重心線の周囲にあるので、ゆるプラクティスでは「達人の筋肉」といって特に重要視しています。運動科学者の高岡英夫はすでに1980年代から書籍等で腸腰筋を代表とするインナーマッスルの重要性を訴えてきました。

という訳で今回はやっぱりインナーマッスルのトレーニングは必要というお話をさせていただきました。トレーニングと言っても太くしてパワーを上げるというより、まずは使えるように意識化する事が大事かと思います。
また、ここではインナーマッスルを意識化するためにゆる筋トレやゆる体操が何故有効なのかという事は書けませんでしたが、近々続編の形でご紹介させていただければと思います。
では!

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