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子供時代の体の使い方は一生続く その1 ゆる体操と家事手伝いの関係

「60歳を過ぎるとヨボヨボ」というのは本当か

先日、ある有名なYouTuberの動画を見る機会がありました。彼はIT分野の事業家で現在30歳。体の感じや話しかたにゆるんだ雰囲気があり、私はファンであると同時に尊敬もしているので、よく彼の動画を見ています。
その時観ていた動画もたいへん興味深く、大いに参考にさせてもらったのですが、一つだけ、気になる箇所がありました。

「自分はフリーランスで30代で思い切り事業で稼いで、40歳でセミリタイアする予定。会社を定年退職する60歳とか65歳になってヨボヨボになってからだと、もう何もできないと思う」という意味の発言だったのですが、

私には、「60歳とか65歳になってヨボヨボ」という点が気になりました。

この記事の読者にも60歳以上の方は多くおられるはずです。「60歳とか65歳になってヨボヨボ」と言われてどう思いますか?

「分かってないな!」と、ゆる体操をしばらくやっておられる人なら一笑されることでしょう。

もちろん私もその一人です。ゆる体操をやればやるほど、健康度が増し、自分自身の若い頃の体に戻っていく感じがあり、若い頃よりもむしろ体調が良くなったと実感を持って知っているからです。

私がそのYouTuberの発言を聞いてまず判ったのは「彼はゆる体操を知らないんだ」ということです。

→「ゆる体操を知らないんだ、だから年を取ると能力が大きく衰えると単純に思い込んでいるんだな

→「ゆる体操のような効果的な方法を知らずに、人生の計画を立てるとそういう発想になるんだな

そして・・・少し残念な気がしました。

ただ、一般的に60歳以上の人間は彼のような若い世代から見ると、ヨボヨボという風に見られていることは、やはり認めないといけないと感じました。

ゆる体操指導員の立場としては、そういう発言に対しては「まだまだゆる体操の普及の度合いが足らない」ということになるんですけれどもね!

若い人よりも、上の世代の方が合理的な体の使い方を知っている

話は少し変わるのですが、私の長いゆる体操指導歴の中で、親子で参加なさった方々が今までに、何組もおられます。60歳以上のお母さんと、その娘さんというパターンが多いです。お母さんが娘さんを連れて来られることもあり、その逆もあります。

そして二人同時にゆる体操を習い始めたにもかかわらず、意外にも、親御さんの方がゆる体操が上手い、という場面に何度も遭遇してきました。

母娘ですと30歳くらいの年齢差はありますし、娘さんの方が若くて体がしなやかなはずですから、当然、体を動かすのが上手いのかと思いきや、そうではないケースがよくあります。

例えば、「足ネバネバ歩き」という体操があります。これは、ゆる体操の中でも全身を柔らかく大きくダイナミックに使うことと、全身の各パーツのコーディネーション能力が問われる、ゆる体操の中でも、割合にレベルの高い体操です。

足ネバネバ歩き ステップ2
爪先が床にくっついたかのように、「ネバネバ」と言いながら歩く

この比較的難易度の高い体操を先日、80代のお母さんが何気なく笑顔でやっている隣で、50代の娘さんが苦労しているという場面が実際にありました。

これは一体どういうことなのでしょうか?

家事手伝いで合理的な体の使い方を学べた

年齢が上の人ほど、子供の頃からよく家事を手伝った経験を持っています。今のように上水道が完備していなかった頃には井戸やポンプで水を汲み出して裏庭で作った野菜を洗ったり、水をバケツで運ぶのは子供の毎日の仕事の一つでしたし、ナタを使って薪割り、クワや鎌を使って畑仕事の手伝いなども子供達はよくやっていたものです。家事手伝いの中で、全身を大きく使う要領や、様々な道具の使い方が身についていったのです。

井戸ポンプで野菜を洗う
井戸のポンプを使う

さらに台所ですり鉢とすりこぎを使ってゴマをすったり、カツオブシをナイフで削ったりなど、こまごまとした手の動きを必要とする手伝いもありました。親や年上のきょうだいに教えてもらったりしながら、上手いやり方を習得していったわけです。

私が小学校2年生の時だったと記憶していますが、祖父母の家に遊びに行った時、七輪で魚を焼く手伝いをしたことがあります。裏庭で、火を入れた七輪の前にしゃがみ、うちわでパタパタあおぎながら時間をかけてこんがりと焼いていくのですが、上手にパタパタできずに煙が自分の顔の方にどんどん流れて来て、ひどく咳き込んでしまったのを覚えています。煙が上がる中で魚の身を崩さないように上手く箸でひっくり返すのも難しかったです。七輪というのは、実際に火を使う道具ですから、うっかりするとヤケドするんですね。

そのように家事手伝いというのは、子供でもできるような簡単なことを任されるわけではありますけれども、やり方が下手くそで一つ間違えると怪我やヤケドの危険がありましたし、ノロノロやっていて時間がかかったりすると怒られるので、必死でやらなくてはならないことが多かったのです。

つまり子供の家事手伝いは、現代とは違い、体と頭を使いながらやる、けっこうな真剣勝負の場だったわけです。

そうした中で、体の上手い使いかたーー力を入れすぎず、抜きすぎず、小さい労力で上手にケガせずにできる「合理的な体の使い方」を自然と会得していたわけです。

ゆる体操の開発者の高岡先生も、5歳の頃、のこぎりで材木を切った時の体の思い出を著書に書いておられます。

何と、5歳なのに大人用ののこぎりを使って電柱のように太い材木をラクラクと切られたそうです。この話についてはぜひ本を読んでいただきたいですが、その時の働きが素晴らしかったのでお父様に絶賛されたのだそうです。先生は70歳をすぎた今でもその時のことを鮮明に記憶しておられ、その折の体の使い方を参考に研究を進めておられます。

そのように子供の頃身につけた体の使い方は、一生その人の中から消えることがありません。何かの折にやってみると、普通にまたできたりするものです。

先ほどの、足ネバネバ歩きが上手い80代の女性の話に戻りますと、もともと、子供時代から、家事労働で体をよく使っていて、実は娘さんより潜在的に身体能力が高いのが、老化により体がただ固まっていただけなのではないかと推察されます。

ゆる体操で、筋肉や関節まわりの固さがだんだん取れ、脳の働きも改善された結果、本来持っていた体の能力がよみがえり、表面に出てきたのだと考えられます。

実際にそのお母さんは、数十年前に大きな木造の家の大家庭に嫁いでから、時には高さ3メートル近くあるような梁(はり)の上によじ昇って天窓拭きをしたそうです。現代ならボルダリングにも通じるような、全身の各パーツが連動した身体能力を要する労働です。

ボルダリングをする女性
ボルダリング

ですから足ネバネバ歩きのように全身のパーツの協調性が必要な体操が上手なのも考えてみれば当然、というところです。

私のゆる体操教室でよくやる体操は40種類くらいありますが、その一つ一つが「合理的な体の使い方」(=最小のエネルギーで最大の効果が出る体の使い方)を開発するように作られています。

ゆる体操の一つ一つにはそれぞれ違った「動きの勘所(かんどころ)」とでも呼ぶべきものがありますが、ゆる体操が上手い年配の人は、勘所をつかむのが上手だったりします。いろいろな、様々な身体運動の日常的な積み重ねをしてきた人だな、というのがこちらに自然に伝わってきます。

ちなみに、身体運動というと、今の人はすぐスポーツやダンスのことを思うのでしょうが、ゆる体操では家事も立派な身体運動の一分野と考えています。

ですから、上の世代の人ほどとにかくゆる体操をたっぷりやっていただきたいと思います。そうすれば、体のあちこちに溜まっていたコリが取れ、若かった頃の身体能力が自然に表れてくる効果が得られます。

もう実践あるのみです。快適な体の感覚が自然に戻って来るのに驚かれることでしょう。

この話にはまだ続きがあるのですが、長くなりますので、また次回にいたします。

まとめ

  • 「60歳を過ぎるとヨボヨボ」というのは本当か
  • 60歳を越しても若い世代より、体が使える人はたくさんいる
  • その身体能力は子供の頃からの家事労働に負うところが大きいと考えられる
  • 昔の家事労働は、体の合理的な使い方を身に着ける真剣な場だった
  • 60歳以上の人は家事労働で得た潜在的な身体能力を、ゆる体操でよみがえらせることができる

読んでいただいてありがとうございました。ではまた次回・・・

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