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BOOK CLUB YURU.3『背骨が通れば、パフォーマンスがあがる!』

ゆるポータル神戸の連載「BOOK CLUB YURU」の第3回は、高岡英夫先生の最新書籍『背骨が通れば、パフォーマンスがあがる!』(カンゼン、2021年5月)です。

さて、この本ですが 大変「エポックメイキング」な本と言えると思います。
今までも運動科学では背骨の開発(運動器官としての背骨の自由度を増すトレーニング)の重要性を訴えてきました。
特に運動科学の総論としての位置付けである『究極の身体』の中で1章を費やしてその重要性が語られて以降、トレーニング業界では更なる詳しい内容とその具体的トレーニング方法の一般公開が待たれていたと思います。
そしてついに先日その本が出版されました。

『背骨が通れば、パフォーマンスが上がる!』(カンゼン2021年5月)です。

『背骨が通れば、パフォーマンスがあがる!』

※リンクを押すとアマゾンの該当ページに移動します

この本は非常に高度な内容を含みますので、それについて私が語ることはとてもできません。
が、せめてこの本がどのような位置付けで語られるべきかということをお話しすることで皆さんの参考になれば、と思います。

1.『肩甲骨本』、『股関節本』に続く3冊目の「骨」本

2018年5月にカンゼンから『肩甲骨が立てば、パフォーマンスが上がる』(以下、『肩甲骨本』)
が出版されました。それから一年に1冊のペースで運動科学総合研究所の高岡英夫先生はカンゼンから本を出版してきました。
2019年5月『キレッキレ股関節でパフォーマンスはあがる!』(以下、『股関節本』)
2020年6月『高岡式超最強の疲労回復法』(以下、『疲労回復本』)
そして2021年5月が『背骨が通れば、パフォーマンスが上がる!』(以下、『背骨本』)
ですね。

『肩甲骨が立てば、パフォーマンスは上がる!』
『キレッキレ股関節でパフォーマンスは上がる! 』
『高岡式 超最強の疲労回復法』

※リンクを押すとアマゾンの該当ページに移動します

このうち、『疲労回復本』は少しアプローチが違っていますので、「カンゼン4部作」のうち骨や関節に描かれた3冊は「3部作」と言っていいと思います。
この「骨」本3部作で通して言えることは

  1. 「関節脳」という概念を定義して、(身体に限らず)高度能力開発で重要なのは関節や骨の意識の開発であることを明示した事
  2. 「運動進化論」の観点から四足動物や魚類の運動と人間のパフォーマンスの関係をあらためて明記した事
  3. 「四肢同調性」(一般に言われる言葉では手足の連動)の構造を明らかにした事

と言えるのではないでしょうか。

実は「肩甲骨」「股関節」「背骨」の順番で出版されてきたのはちゃんと意味があったのですが、「背骨が通れば、パフォーマンスが上がる!」の中でも明記されていますので引用します。

「私がなぜ「肩甲骨」「股関節」「背骨」という順序で本を執筆してきたかというと、身体の中でも体幹の部分は手足に比べ、抜きん出てわかりにくいからです。これは皆さんも実感があることですから、すぐに同意していただけるはずです。このわかりにくい体幹を扱うときに、わかりやすいものから扱った方がいいのか。それともわかりにくいものから扱ったほうがいいのか。もちろん、わかりやすいほうからです。」

『背骨が通れば、パフォーマンスは上がる!』17pより

そうですね。今回の本が身体開発の、いわば「本丸」だったわけですね。

とはいえ、高度能力開発における背骨の重要性は、総論と言える2002年9月出版の『究極の体』(当時はディレクト・システム社)ですでに一般に発表されていたのですから、具体的なトレーニング方法が発表されるまでそこから19年の歳月がかりました。
運動科学は高岡先生が創始した全く新しい独創的で先端的な研究分野ですから、発表するにしても社会の理解が得られ、本として出版が可能となるまでこれほどの長い年月がかかったというわけです。
しかし、2020年代になってこれではっきりトレーニングの方向性がはっきりしたということが言えるのではないでしょうか。
つまり、関節とそれをコントロールする脳の関係、「関節脳」を鍛える方向性が最も効率の良いパフォーマンスアップの方法であり、『疲労解消本』はそれに伴う(主に)脳の疲労を軽減することが大事である、ということで最も脳疲労を伴う「背骨の開発」の前に出版されたということがいえると思います。
「肩甲骨本」が最初に出版されたのは視覚的にも最もわかりやすいのが肩甲骨であるという理由ですが、確かに運動科学に関連するトレーニング界隈の動画でも立甲に関する動画は閲覧数も多く、何を隠そう当サイトの一番人気の記事も(「肩甲骨本」に書かれている)「立甲」に関する記事です。

これを考えると、股関節や背骨に関してはまだ時代が追いついていないと言えるのかもしれませんが、今回「背骨本」が出版され、背骨の開発法が発表された以上、10年後、20年後にはそういった関連の動画がものすごく見られている時代が来るかもしれませんね。

2.ついに明かされた垂軸と体軸、そして背骨の関係

私が最も感銘を受けたのは実はこの部分です。
本でいうと第3章に当たりますが、この章によって自分のトレーニングでの長年の疑問の一部が解き明かされたからです。
高岡先生は今までも背骨と体軸、垂軸との関係は様々なところで語ってこられました。
体軸、垂軸に関しては初めて聞く方もおられると思いますが、『背骨本』から引用しておきます

「人間に一番重要な軸は「第3軸」のところにできる2種類の軸、「体軸」と「垂軸」です。「体軸」は背骨を基準にできる軸で、「垂軸」は全身の質量と筋肉骨格センサーによって捉えられる重心線に沿ってできあがる軸です。」

『背骨が通れば、パフォーマンスは上がる!』140pより

軸というものの重要性は日本でも西洋でも以前から言われてきたものですが、ゆる体操の開発元である運動科学総合研究所の講座では軸(センターとも言います)はどの講座でも重要視されていて、20年以上ゆるトレーニングをしている私にとってもある種永遠の課題になっている部分です。
その最も大事な軸(=センター)に関する、かなり重要な情報が今回発表されたという事ですね。

「そんなに大事な情報がなぜ最初から発表されないの?」

という考えをされる方もあると思います。
しかし最初からなんでも厳密に正確で詳細な情報が大事かというと必ずしもそうでもない場合もあります。
以前、当サイトのコラム「ゆる体操初級で大切なこと」でも申し上げましたが、特にこういうトレーニングの情報というのは実はその人その人で知るのに適切なタイミングというものがあります。


例えば小学生に大学生が学ぶ高度な知識を教えても、その内容は小学生には全く理解できません。ですから最悪の場合「ないのと同じ」になってしまいます。
このように、その人にとって消化できない情報というのはあっても意味がないのです。逆に教える側は必要な情報をどのタイミングで教えていかなければいけないかということを常に見計らっていく必要があります。
相手にとって一番「効く」タイミングというものがあるからです。
昔の言葉では「腑に落ちる」と言いますね。
これは学校での勉強にせよ、習い事にせよ良い指導者に指導を受けた経験のある人はお分かりかと思います。
また、例えばスポーツの団体競技ということを考えると、当然相手は個人ではなく集団なので集団が上達するために適切な「知るタイミング」というものが存在します。
同じように斬新な情報を早い段階で一般に公開してしまうと、それが斬新であるが故に社会に受け入れられず、何10年という単位で埋もれてしまったり、最悪の場合完全に忘れ去られると言ったことも決して珍しくはありません。
運動科学は高岡先生が創始された非常に新しい学問体系ですので、私は高岡先生が常にその著作の中でそういった情報を世に出すタイミングというものを意識しておられるような気がしていました。
実際に今回の本ではそのことについてはっきり言及しておられます。
「いい意味で大変悩んだ」
と書いておられますね。
そしてこの第3章の内容は私にとってまさにジャストのタイミングでした。
私の個人的なトレーニングの内容に関してはここで細かく言ってもしょうがないですし、言う意味もあまりないと思うので具体的には述べませんが、長年の疑問を突破できるきっかけになるような気がしています。
(実際はこれからさらに体をゆるめるトレーニングをしなければいけないので、まだまだ時間がかかる事なのですが・・・トホホ)
しかし、「私にとって」と言いましたが、現在のコロナ禍でガタガタになっている世の中のことを考えても、このタイミングで垂軸・体軸と背骨の関係が発表されたことは、おそらく社会にとってもジャストのタイミングだったのではないでしょうか。
これを機会に社会での垂軸・体軸と背骨のトレーニングが一気に進むような気がしています。

3.100年後も読み継がれていくべき運動進化論の大著

肩甲骨本や股関節本ももちろんそうなのですが、背骨本は最も重要な軸(=センター)に直接関わる内容となってます。
ですからこれを機に一気に世の中のトレーニングそのものに対する認識が変わるのではないかと思っています。

これは先ほど述べたように総論である『究極の身体』の各論としての「3部作」+『疲労解消本』という括りで考えると運動進化論5部作として今後100年は高度能力開発のバイブルとして読み継がれていくものとなるでしょう。
ただし『究極の身体』の各論の部分は他にまだテーマがあります。
究極の身体の第5章「各論」は9つのパートに分かれていてそれぞれ

  1. 手(究極の手は脊椎系運動の末端)
  2. 足(「ウナ支持」とリアレバー・フロントレバー)
  3. 肩包体(肩甲骨鎖骨と周囲の筋肉で構成される「肩包体」と「肋体」の分離)
  4. 甲腕一致(肩甲骨と腕の関係)
  5. 割腰(拘束腰芯と仙腸分化)
  6. 腸腰筋(「達人の筋肉」腸腰筋)
  7. 割体(センターと「側体ずれ運動」)
  8. 軸(センターとウナ、「骨で立つ」ことの関係)
  9. 全身分化(組織分化と身体意識)

となっています。(カッコ内は分かりやすいように私が独自にまとめた各パートの内容で、もともとついている副題ではありません。)
肩甲骨本は内容としては4、股関節本は5、6の内容を含みます。今回の背骨本は7、8の内容ですが、『究極の身体』の第3章が「背骨」なので第3章と第5章の7、8を含むと言っていいと思います。
これをみると他のパートについても来年以降、出版される可能性がありますね。
特に「手」や「足」に関しては「カンゼン4部作」と内容が重複しないうえに非常に重要な内容を含みますので、1冊の本として書かれる可能性はあると思います。
また、割体については『背骨本』で語られていますが、内容の膨大さに比べて今回は最後の章で紹介されているに過ぎないので、今後社会の理解が進めば関連性のある割腰、腸腰筋と含めて別に出版される可能性もあると思います。
ということで現在5部作と言っても今後何部作にもなるかもしれませんね。

この本は最も重要な軸(=センター)と背骨に関することが描かれた本なので、この出版をきっかけに、他の2冊の『骨本』以上に本書の内容の検証があらゆる分野でなされていくと思います。
そしておそらくはある程度の時間をかけて内容の「正しさ」が確認されていく事でしょう。
そうなった時この世の中はどんな世の中になっているのでしょうか?
それを考えてみるのも楽しみです。

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