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妊娠中の女性は果てしなくゆるんでいる

私は今までゆる体操教室で何人もの妊婦さんをご指導してきて、一人の例外もなく、彼女たちが素晴らしくゆるんでいたと実感しています。なんと妊娠中の女性は誰もが世界の一流スポーツ選手くらい体がゆるんでいるという説もあります。それはどういうことなのでしょうか。

1.妊婦さんが来ると、教室が楽しくなる

ゆる体操教室で指導を始めてから10年以上になります。今まで何人もの女性から「妊娠中でも、ゆる体操をやっても大丈夫でしょうか?」という問い合わせがありました。ゆる体操はもともと比較的穏やかで体に負担が少ない体操ですし、日頃から指導員として、妊娠中の方だけでなくどんな方にでも、「無理なくご自分が気持ち良いと感じられる範囲で」やっていただくようにしていますので、そうお伝えして安心していただいた上で、ご入会いただきました。
私の教室は普段は妊婦さんが居られませんので、そこへお一人新たに入会されると、教室がグッと楽しい雰囲気になります。入会なさるのはたいてい、安定期に入ってからの妊娠中期や妊娠後期の方達でしたからお腹のふくらみも目立ちますし、「おめでたなんですね。予定日はいつですか?」という話題でにぎやかになります。そうした場合、同性の女性だけでなく男性の生徒さんも、ご自分の身近に居られる妊婦さんのお話や、赤ちゃんのお話に参加され、教室全体がハッピーな雰囲気になることがとても多いです。
出産はおめでたく明るい事柄だから、と言ってしまうとそれまでなのですが、教室の雰囲気がそういう風に変化するのには何か他の理由があるからのではと、私は以前から何となく感じていました。そして今、こうして様々な妊婦さんたちと教室でお会いしてきた時のことを思い出していると、「妊婦さんはすごくゆるんでいるから一緒に居ると楽しいんだな」と分かったのです。

妊婦さんはどこまでもゆるんでいる

2.ゆるんでいる人は人気者

私たちは、自分よりもゆるんだ人といると、体も心もほっとしてなごむことができます。そういう人の「ゆるみ」が自分に伝わってきてゆるむからだと言えますし、ゆるんだ人が持っているゆったりとした雰囲気がその場の空気を変えるからだと言っても良いでしょう。
例えばどなたでも、大人ばかりの集まりの中に赤ちゃんが入ってきた時、一気にその場が明るくにぎやかになったという経験をお持ちでしょう。その場の雰囲気が一瞬で変化しますよね。それは赤ちゃんが小さくてカワイイだけでなくて、大人よりもはるかにゆるんだ存在なので、そこに居る全員が見事に瞬間的にゆるんでしまうからなのです。赤ちゃんがどこへ行っても超人気者なのはそのためです。
妊婦さんも赤ちゃんに負けないくらいゆるんでいるので、その場の人気者に自然になるのです。彼女たちはゆったりのんびりとして、あまり細かなことにこだわらない雰囲気がありますが、あの感じがゆるんでいるということなのですね。

3.ゆるみ度はオリンピックの金メダル選手級?!

実は、『体の軸・心の軸・生き方の軸』(高岡英夫著、ベースボール・マガジン社、2010年)という本には、妊娠した女性は世界トップクラスのアスリート級にゆるんでいると書いてあります。
この本のその部分を要約して紹介します。
妊娠した女性たちは妊娠期間の後半になってくると、お腹の赤ちゃんの成長に伴って体重が増加してきて、それと同時に出産に備えてホルモンの影響で骨格がたるんで来ます。体は日々重くなってくるのに対し、日々骨格がたるんでくる中で、怪我や事故を起こさないように通常の生活をし続けるというのは、大変困難な身体運動なのです。
毎日だんだんお腹が突き出てきて、体重が増え、体型がみるみる変わっていくのです。腰が反りがちになって体の重心の位置も日々変化しますし、大きなお腹のせいで、自分の足元が隠れてよく見えなかったりする状態で常時動かなくてはならないのです。うっかり転んだりしたら大変です。大事な胎児に何か起こってしまうかもしれません。
また、常時かけがえの無い命を体内に抱えていることの精神的負担も相当なものがあります。こうした身体的・精神的負担の両方に耐え抜いていくには、どこまでもゆるんでいかなくてはとても保ちません。途中で投げ出すわけにもいかないのですから。
というわけで、妊娠した女性は、それまでスポーツ等の経験もさほど無くて、普通に会社員をやっていた人などでも、妊娠した時から例外なく素晴らしくゆるんできて、その点だけで言うと世界のトップアスリート級になるのです。また妊娠中期以降は、体がどんどんゆるんだ結果、体軸(センター)が通ってきて、その体軸が苛酷といって良いほどの妊娠期間中の心身の変化を支えてくれるのです。アスリートならば、練習とか試合の時だけが勝負です。しかし、妊婦さんは約10カ月間、毎日24時間自分の体と向き合いながら、ひたすらゆるみ続けて、自分と赤ちゃんを守り続けているのです。ゆるんでいなければそれが出来ない、つまりゆるんでいることが絶対必要だからゆるんでいるのですね。
・・・以上が、この本の第4章、妊婦について書かれている部分の要約です。

体の軸・心の軸・生き方の軸―人生を豊かにするハッピー「軸」理論

4.内観の能力がとても高い

妊娠している女性は、常時自分の体に向き合っているわけですから、体の感覚やちょっとした変化にとても敏感です。もちろん妊娠後期ともなると、しょっちゅうお腹の中で赤ちゃんが動いているわけですから当然のことかも知れませんけれども、私が見ると、妊婦さんは内観する能力(自分の内面を観察する能力)がたいへん高い人たちだと思います。
たとえば、寝ゆる(寝ころんで行なうゆる体操の総称)の腰モゾモゾ体操の練習中など、「どんな感じですか?」とお尋ねしますと、「子供がお腹の中で今、いつになくおとなしくしています。気持ちよくてじっとしてるんでしょうね。」という感想がかえってきたりします。自分の体内にちゃんと意識が向いているのですね。
また、立ちゆる(立って行なうゆる体操の総称)の時なども体の中を内観しながらやっておられます。その様子はお腹の中から、骨盤、背骨の動き、さらに全身の様々な関節や筋肉など、全体の動きをよ〜く感じながら、「こうかな、あ、今、ここがこう動いてるな」と、いちいち言葉では考えておられないのでしょうが、まさにそういう感じでじっくりとやっておられるのが、指導者の私にははっきりと見て取れるのですね。そして実に気持ちよさそうにやっておられます。これは交感神経の働きが抑制され、副交感神経優位の状態に入っておられるのです。副交感神経優位になると、リラックスしながら高い集中力が発揮されます。これをゆる体操理論の専門的な言葉で「緩解性意識集中」と呼んでおり、世界のトップアスリートが最高に良い調子の時に世界記録を大きく書き換えるような時には、必ずそういう心身の状態になっています。妊婦さんたちは、その素晴らしい状態に自然に到達しておられ、ご自分の体の動きにどこまでも集中しながら、同時にリラックスしてゆる体操に取り組まれます。
ゆる体操は本来、そのように行ってもらえると、各人のレベルで最高度の効果が得られるのですが、誰でもすぐそうできるようになるかというと、実はそうでもありません。習い始められてからこちらが色々と指導して差し上げて、できるようになるまで時間がかかる人もたくさんおられますし、どちらかと言えばそれが普通なのです。にもかかわらず、妊婦さんたちは教室参加初日からすごくリラックスして緩解性意識集中が完璧と言ってよいほど出来ているので、指導員としては舌を巻いてしまいます。妊婦さんは「ゆる体操がいきなりめちゃくちゃ上手い」人たちなのです!
そういうトップアスリートにも匹敵する最高の心身の状態に、それまでごく普通だった女性がなぜ、妊娠しただけで到達できるのかというと、それはもう、体の中で人を育てるという大切で大変な仕事が完遂できるように自然の摂理が働いているとしか考えられないと思います。

妊娠中の女性はからだの内部に意識が向いている

5.ゆる体操は妊娠している女性の味方

それほどにゆるんでいる妊婦さんたちも、体の不調に悩まされることはよくあります。何の不調もなく出産までの日々を過ごしたという人はめったに居ないのではないでしょうか。
特に妊娠中期以降はお腹が大きく前方にせり出してくるので、全身のバランスを取ろうとして腰が反りやすくなり、その結果、腰痛を起こすことがよくあります。これはゆる体操の出番です。腰モゾモゾ体操やすねプラプラ体操、ふくらはぎ膝コゾコゾ体操(まとめて「寝ゆる黄金の三点セット」)をすると、腰回りの拘縮した筋肉がよく解きほぐれますので、楽になることが多いです。私の指導した妊婦さんたちにもやっていただいて、効果を感じていただいてきました。
また、足がむくんでパンパンに張るとか、こむら返りを起こしやすいなどの症状もよくあります。それには、ふくらはぎ膝コゾコゾ体操が最高に効果があります。ふくらはぎの固まって張った筋肉が気持ちよくほぐれてコリが取れるだけでなく、血行が爆発的と言ってよいほどに改善されます。ふくらはぎだけでなく下半身全体、さらには全身の血行も良くなりますので、数分間でも取り組むと全身が軽くなり、生き生きと復活してきます。
そして息ゆる(息ハートロトロ体操、股キュートロトロ体操)で、体幹部を中からゆるめていくと良いですね。これらの息ゆるは骨盤底をも柔らかく鍛えるので、出産に向けての良いトレーニングになります。どれも気持ちの良い範囲で無理なくやっていただくことが大切です。
また絶え間なく変化する体調だけでなく、定期検診のための通院、妊娠によって微妙に変化する家庭内や職場の人間関係、出産そのものへの不安等々、妊娠している女性は様々なストレスにさらされているものです。
上にあげたものだけでなく、お好きなゆる体操を見つけてちょっとしたスキマ時間にやってみてください。それで体がゆるんでくると、抗ストレス力、つまりストレスに勝つ力がしっかりとついてきますので、何があっても落ち着いてドーンとかまえておられるようになります。昔から「女は弱し、されど母は強し」という言葉がありますけれども、まさにそういう存在になることができます。

『女は毎月生まれかわる ー からだと心が元気になる「月経血コントロール」ゆる体操』(高岡英夫・三砂ちづる著、ビジネス社、2004年)には、妊娠出産期をふくむ女性のためのゆる体操が載っていますので、よろしければお読みになってください。

女は毎月生まれかわる―からだと心が元気になる「月経血コントロール」ゆる体操

6.良い意味で自分中心に生きる

そのようによくゆるんで体に軸が通っているため、妊婦さんはとても強い存在です。それはいわゆる筋力や腕力の強さだとか、押しが強くて人をどんどんリードする能力が強いとか、いうのとはまた違います。妊婦さんは色んな意味で、自分の周りの人や環境に助けてもらったり、庇護を受けながら生きている人たちですから、弱い立場だとも言えるのですが、そうやって受け身のようでありながら、周りの人たちを巻き込み、世話を見てあげようという気持ちに自然にさせてしまうのですね。これはある種の力であると言えると思います。赤ちゃんや小さな子供にも共通する力とも言えます。
そのように自然に、悪びれることなく、人の力を借りながら懸命に生きている妊婦さんたちの様子を見ていると、素晴らしいなと私はいつも思います。それは本当の良い意味で自分を中心とした生き方です。自分中心と言っても、ここでお話ししているのは自分勝手とか、わがままという意味ではありません。
集中力の要る、場合によっては危険も伴う大きな仕事(妊婦の場合は子供を体内で育てること)に本気で取り組んでいるときは、人は誰でも良い意味で自分を一番大事にし、自分を中心に生きるものです。自分の体と精神に正面から向き合い、どこまでもゆるんで、かけがえのない自分をとことん大切にしながら、生活のほぼ全ての場面において、胎児を体の中で育てることを最優先して生きている、そのことを生まれて来る子供のための自己犠牲だとする考え方が以前からありますね。けれど、別の考え方もできると思います。子供が体内にいる10カ月の間、女性は自分の持っている心身の能力を最大限近くまで発揮しているわけですから、大きな自己実現を果たしているのだと言えないでしょうか?

子供の出生数が少ない現代日本では、一人の女性が妊娠と出産を経験する機会はそう多くはありません。そのかけがえのない時期にご自分の体と心をいたわりながら、少しでも健康に楽しく一日一日を生きていただけたならと願います。そのためにゆる体操を役立てていただけるなら、指導者としてたいへんうれしく思います。

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