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達人調整師として思うこと

こんにちはゆるポータル神戸の中田了平です。

今日は達人調整をしていて思った人と人の関係やその他さまざまな事についてお話しさせていたければ、と思います。

人と人の関係、と言っても誰それがどういうタイプで、それに合うのはこういうタイプみたいなものとは違いますよ(笑)

もう少し深い部分のお話です。

1.人間は体の個性が強い

私は達人調整師です。達人調整は相手の体をさすったり、ゆらしたりしながら体をゆるめる術技です。

私は平日は整形外科で、土日は自宅で個人的に達人調整を施術していますが、色々な人に施術していて思うことは、人間はある程度同じ部分はありながらも個人がそれぞれ個性を持っているということです。

例えば相手の体に実際触れてみると、まず皮膚や脂肪の感じからして全く違ったりします。

しかし当然体の仕組みは基本的に同じです。

ですから、現代人が持っている全体としての傾向として背中の上部や腰と骨盤の繋ぎ目など、固まりやすいところは皆固まっていたりします。

しかし、実際には人それぞれ体に触れた時の感じは本当に違うので、これだけ違いがあるのはある意味人間だけなのかなぁと思ったりします。

動物も性格の個性はもちろんありますが、基本的に体の感じは同じですよね。

疾走するチーター
特に野生動物は種が同じなら個体ごとの運動の癖はほとんど感じられない

私は四足動物を飼っていたことがないので、犬や猫に触れる機会はそれほどないのですが、少なくとも同じ種類なら基本的に同じような体の動きをしていますし、極端な話、昆虫なら同じ種類であれば動きや触った感じが人間ほど違うということは今まで経験がありません。

身体意識の理論から見ると、人間の個別や時代別の身体意識の違いは他の動物種の違いぐらいある、と高岡先生はおっしゃいます。

この件については、私は達人調整師としてたくさんの人の体に触れていると、なるほど、と実感するところがあります。

実際に人の体は個別でそれほど違うものなのです。

2.自分がゆるんでいないといけない

高岡先生は

「達人調整師は相手の体に触れただけで相手を良い意識の状態に連れていかなくてはいけない」

と言われます。

私の場合、確かにさすっただけで、

「なんでそんなに気持ちいいのですか?」

と聞かれることもよくありますが、全ての人に対してそうなのではありません。現実的にはまだ「相性」みたいなものはあります。

達人調整はもちろん身体の調整法ですが、身体意識の調整法でもあります。施術者の身体意識がそれぞれの術技を通して相手に伝わることによってゆるむのです。

そして、相手に直接触れるのは手(足の時もあります(笑))です。ですから、身体意識の伝達手段の一つとして相手と接触する手がゆるんでいることは非常に大事です。

しかし実際のところ、なんとか相手をゆるませたいと思うと失敗することが多いです。これは達人調整の根本的な理論でもあるのですが、相手のことを考え過ぎると相手はゆるまないのです。

それは何故なのでしょうか?

普通、相手はゆるみたくて達人調整を受けているのですから、こちらもゆるませてあげたいと思うのが普通です。

しかし、高岡先生は

「それは浅はかな考えだ」

と言われます。相手の事を良くしたいと考えるだけで、自分の体は緊張するのです。

これはゆる体操やゆるトレでいうと緊張性意識集中の状態です。

それが手や足という接触部位を伝わって相手を緊張させてしまう、もしくはそこまでいかなくても自分の体が固まってしまうので効果が落ちてしまう上に、やればやるほど自分は調子が悪くなってしまいます。

ですから、私たち調整師は良い意味で相手の事を考えてはいけません。

施術中はひたすら自分の身体意識、特に軸(=センター)が良くなるようにするのです。

そうすると自分の調子は良くなるし、緊張性意識集中ではなく、自分がゆるむことで緩解性意識集中の状態になると相手のことも結局よくわかるようになります。

緩解性意識集中とは具体的な運動としては擦動緩解運動揺動緩解運動ですね。

3.人間はさするとゆるむ

擦動緩解運動というと難しいかもしれませんが、要するにさするという事です。達人調整なので自分でなく相手をさするということになるのですけど、いわゆる指圧やマッサージ的な刺激は必要ありません。

生物には外部からの強い刺激に対して、体を守ろうとする防御反応があります。

体の表面の筋肉(=アウターマッスル)は強大な力を発揮する役割と、体を防御する役割があります。

ですから基本的に外部からの強い刺激では体はゆるまないのです。

ではさすられるとゆるむのは何故なのか?

それを運動科学の理論では魚類に原因を求めています。

魚類は水の中で泳ぐことで生活しています。特にマグロなど長距離を猛烈なスピードで泳ぎ続けることのできる種は、水流がえらに入ってくることにより呼吸をするという、非常に効率の良いシステムを獲得しています。

ですので、特にこういう種では常に体のまわりに水流ができているのが良い状態と言えます。

これはどういうことかというと、常に水流で物理的な刺激を受け続けているということです。

言い換えると魚類は常に体を水でさすられている、ということになるのです。

私はこの話を聞いたとき、すぐに合点がいきました。私は小学校入学時から中学卒業まで水泳をしていたのですが、海や川で泳ぐのも好きだったので、いわゆる「素潜り」もよくしていたのです。ある程度水深がある海や川でのんびりとドルフィンキックで泳ぐと、水の質感というのは本当に体にとって気持ち良いものです。

特に海は淡水と違って、少し水自体に粘りというか、重みがある感じがするのでより良い感じがしたものです。

実際に魚が気持ち良いのかどうかは荘子に聞けばわかります※が(笑)、少なくとも、もし水流による刺激が不快であるとすると、少なくとも魚類は海の王者として何億年も君臨することは不可能であっただろう、というのが運動科学の考え方です。

そして、運動科学では実際にそう仮定して、さまざまな体系が組み立てられているのですが、人間だけでなく生物にとってさするとゆるむということが驚くほど本質的なことなのだとわかります。

私のように達人調整師としてのべ数千人もの方を「さすって」きた者にとっては「さするとゆるむ」ということが生物にとっての深い真理なのだということが実感を持って感じられるのです。

4.人間はゆするとゆれる、ゆれるとゆるむ

では揺動緩解運動の方はどうでしょうか?

揺動運動とはゆれる運動ということです。揺動緩解運動とはゆれて、ゆるむ運動ということです。

高岡先生が初期の大著「極意と人間」のなかで

人間にはゆするとゆれる、ゆれるとゆるむ

という根本的な性質がある事を発見したというくだりがあります。

極意と人間

※リンクを押すとアマゾンの該当ページに移動します

高岡先生は実際に彫像と車をゆすってみてどうなるかを実験したところ、彫像は人間にそっくりな形をしているのに、ゆすってもゆれなかった。また、車はゆすればゆれるけど、ゆるむことは無かった、と書いています。

「人間には」とありますが、おそらく他の生物もゆすればゆれるでしょう。そしてゆれればゆるむに違いありません(その動物が人間にゆすられるという行為を受け入れればの話ですが・・・)。

ですから達人調整は相手をゆする術技が多い、というかほとんど全ての術技に相手をゆする部分があります。各術技にはさまざまなやり方がありますが、そのほとんどがさすったり、ゆらしたりするようにできています。

そして人はさすったりゆらしたりすると(言い方は乱暴ですが)勝手にゆるむのです。

これが人間の体の根本的な性質なのです。

ですから、できるだけ相手が気持ちよくさすられて、ゆらされるようにこちらはするだけなのです。

そして、それをするには自分の体に力みがあってはいけませんので、ゆるんで軸を通すようにやればあとは相手が勝手にゆるんでくれるというわけです。

(この件に関してはおそらくさらに深い議論が可能でしょうけども、現在のところはこのあたりに留めておきたいと思います)

5.なかなかゆれてくれない場合も・・・。

とはいえ、なかなかストレスの多い時代ですから、現代人の固まり方は相当なものです。

混雑しているホーム
生活しているだけで体が固まる現代

これは私個人の考えですが、私は人間が種としてここまで発展できたのはストレスを吸収する能力が高いからではないかと思っています。

そして体が動物に比べて異常に固まっても生きていられるのは、体を固めることによってストレスを吸収することができるからだと思っています。

ですので、ちょっとやっただけではなかなかゆれてくれない、ゆるんでくれない方もいるのが現実です。

この場合、こちらの能力の問題もあるでしょうけども、やはり相手の体の方がゆれる事を拒絶している場合が多いです。

それはかなり深いところの意識がそうさせているので、ご自分では全く気づきません。

ちなみにゆる体操を本等でやってみても全く効果がないと言われる方はこのパターンの方が多いです。そもそも心の奥底で体をゆるめる事、具体的な運動で言うと揺動緩解運動や擦動緩解運動を否定している場合が多いのです。
そうなってしまう理由は人それぞれですが、こちらからすれば何が原因かどうかはわからなくても何かが原因でゆるめることを否定しているかはすぐにわかります。
そしてどんなに効果があるものでも、疑ってかかっては効果があるはずはありません。

しかしこれは別に難しい話ではなく、物理的に体が固まっていると実際に体がゆれないので、こちらにとっては至極当然のことです。また、普段から体を固めて立ったり作業したりする癖がついているので、寝てもすぐにはその癖が抜けない、ということも大きいですね。

それを考えると、やはり触られるということは本来は人間にとってかなり警戒を伴うことでもあるのかもしれません。

しかし、それもこちらが柔らかく接して、つまり手を柔らかく使えば相手は次第にゆれる事を受け入れるようになります。

これは赤ちゃんがぐずっている時に優しく「よしよし」してあげると安心して眠ってくれるのと本質的には同じですね。

そして手を柔らかく使おうと思えば、結局は軸(=センター)の問題にたどり着くので、やはり相手のことは考えずに、自分がゆるんでセンターが通っている体になれば相手はゆるむのです。

6.お互いの関係構築も大事

ここでいう「関係」とは単なる「人間関係」とは全く違う話です。

私のところに来ているあるお客様の話ですが、最初は一回1時間で来られていたのですが、もう少し受けたいということで、ここのところ1回1.5時間で施術を受けられています。

というのは、正直に言いまして私の方も当初1時間では少し足りないかな、というのがあったので、その点はお互いの感覚が一致していたということになるのでしょう。

私も最初はどの術技がよく効くのかな?ということで色々試してみたのですが、やっているうちに、少なくともこの方の場合、最も基本的な背中や腰をさすってゆらすことが中心になっている術技をある程度集中して施すことが、最も早く体が反応することに気づいてからは、段々と効率の良い施術ができるようになりました。

最初は1.5時間でやっと・・・、という関係だったのが今は早ければ20分程度で体が反応して深いところにゆるみが入ってくるので、残りの時間をさらに色々な術技に使えるようになったというところです。

別のお客様は、それまで中々ゆるまなかった脚がスーッとゆるんできたので、この方には今までできなかった術技ができるかな、と思ったところで、一度休憩をとって水分補給などをしてもらったのですが、その後またうつ伏せになってもらうとまた脚まわりが固まってしまっていた、ということもありました。

その時は時間的にもう一度同じ状態にすることができなかったので、少し心残りがあったのですが、次に来ていただいた時また同じ状態になったので、今度はあえて休憩を取らずにそのまま脚まわりの術技に移行すると、よく効いたということもありました。

また、私が勤務している整形外科では、達人調整を治療に転用するという方針をとっています。施術対象は患者様なので、当然のことながら体に何らかの不調を感じてこられた方ばかりです。

ですから、医学的な面も考慮して相手に対応しないといけないので、医師の管理の元での様々な対応が必要になります。

そもそも相手は医学的な説明を受けてリハビリにこられているので、こちらも患者様の医学的な症状と、それに対してどうしてゆる体操や達人調整が効くのかという理由をお話ししなければ、納得していただけない場合もあります。

というよりもほとんどの方がさすったりゆらしたりすることで体の調子がよくなるという認識はありません。最初は「こんなことでは効果ないだろう」とどこかで思っておられる場合が非常に多いです。

また、整形外科なので、骨粗鬆症の高齢者もよくおられます。ですから背中が固まって出ている四肢の症状があったとして、安易に背中に手をつけたりするのは背骨の圧迫骨折を起こすリスクがあるので危険なのです。

普通に達人調整を受けに来られる方々とは前提が全く異なるので、こちらの対応もある程度異なってくるのです。

人の体は複雑で精緻なシステムでできています。

ですから私は最近の整体院や、治療院のように

「〇〇の症状に効く!」とか「〇〇だけでOK」などとは言いたくありません。

何故なら人間の体は全くそのようにはできていないからです。

人間の体は何かを入力すれば、決まった値が出力されるものでは全くありません。

結局のところその人その人と向き合い、どうすれば状態が良くなるかということしかないのです。

このように現実は、相手との関係によって色々なことが起こるのですが、もしかしたらそれも軸(=センター)によって解決できることなのかもしれません。

実際に最初の方の例は自分がより軸(=センター)を通すことで解決したものでした。

このように日々試行錯誤しながら人の体と対峙していくことは、難しさも感じますが、基本的に充実感があり、私にとっては楽しいものです。

今後もそれが来てくれる方々のためになれば、と思っています。

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