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達人調整とは

達人調整コラム

達人調整って聞きなれない言葉ですね。今日はその達人調整についてお話させていただきたいと思います。

1.そもそも達人調整とは?

「達人調整」という言葉を聞いて皆さんどんなイメージを持ちますか? 「え?達人?なんか怖そう・・・」とか(笑)、人によっては少しとっつきにくい感じがあるかもしれませんが、「達人調整」は「ゆる身体調整」とも言って、ゆるプラクティスの中の1メソッドです。しかし他のゆるプラクティスのメソッドと違って基本的にセルフではなく他人の力を借りて体の調子を整える“身体調整”の体系です。身体=ボディ、整える=ケアと考えると「ボディケア」という言葉が当てはまるような気もしますが、一般に「ボディケア」というとエステ系の用語のイメージが日本では浸透していますね。達人調整の“調整“という言葉はそういった表面的な見た目のケアでなく、もう少し根深い疲労や身体の癖に対する解消を目指していると思ってもらって良いと思います。
では”達人”という言葉ですが、達人調整の開発者である高岡先生の研究によると、“本物の達人は分野にかかわらず共通の特徴として身体がゆるんでいる”という事が明らかになっていますので、ここでは一般的な「達人」という言葉の解釈より一歩進んで、「達人=具体的な専門分野にかかわらず身体が(かなりのレベルで)ゆるんでいる人」と考えるのが良いと思います。
となると達人調整とは「身体がかなりのレベルでゆるんだ人になるために他者の力を借りて身体の疲労や癖を解消するための身体調整の体系」と言えると思います。

2.普通の整体、マッサージとの違いは?

では、「達人調整」が他の身体調整法である整体やマッサージとどこが違うのでしょうか? 少し難しくなるのですが決定的に違うところは、“ゆるむ”、“ゆるめる”という事が理論の中心に据えられているところです。
今までの身体調整法も“ゆるめる“という事を狙ってはいます。しかしどうしたら体が“ゆるむ”か”ゆるめられる“かという根本的な理論は高岡先生により20世紀後半に解明されました。という事はそれまでの身体調整法は根本的な理論が解明されていない状況で何とかゆるめようとしていたという事になります。
その理論は高岡先生によって「ゆるセオリー」と名付けられました。

完全版「本物の自分」に出会うゆる身体論 (日本語) 単行本(ソフトカバー)

(ゆるセオリーに詳しく当たりたい方は運動総研運営のサイト 「YURU EXERCISE 体には希望がある」 もしくは書籍「本当の自分に出会う ゆる身体論」参照
そしてその「ゆるセオリー」では例えば「揺動緩解運動」や「擦動緩解運動」という体をゆるめるための運動理論(これ以外にも原理となる運動、意識の理論はたくさんあります)が明示されています。そして当然の事ながらその実践方法であるゆるプラクティスの1メソッドの達人調整もゆるセオリーを根本に据えて作られている訳です。ゆるセオリーが根本にある調整法とそうでない調整法の施術後の結果がどうなるかは、同じゆるプラクティスの一つであるゆる体操が他の体をゆるめる事を目的とした体操と比べても圧倒的に体がゆるむ事からも明らかでしょう(これはゆる体操の愛好者の皆さんにとっては実感を伴う事かと思います)。ですから先ほどの運動理論の例で言えば「達人調整」の術技は当然お客様が「擦動緩解運動」と「揺動緩解運動」を起こすような術技となっている訳です。
では、「それってどんな術技?」っていう疑問もゆるプラクティス愛好者には湧いてくるかもしれませんが、それには深い秘密があります。その前に少し別の視点からのお話をさせてください。

3.現代社会はお互いの関係も固まっている

先ほど「達人=具体的な専門分野にかかわらず身体が(かなりのレベルで)ゆるんでいる人」というお話をしましたが、ゆるんでいるという事は体の代謝が良い状態(コラム「ゆるむとは」参照)ですから、疲労も取れ、パフォーマンスアップにもつながります。しかし、現実を考えるとゆるプラクティスに取り組んでも中々ゆるんでこない時ってありますよね。もの凄く疲れていると当然そうなのですが、それ以外にも大きな理由があります。
現代に生きる私たちは日々軽いストレスにさらされています。「いやいや、軽くなんてないよ、凄いストレスだ。」とおっしゃる方もおられるでしょうが、例えばいつも死の危険と隣合わせだった狩猟採集の時代などと比べると一つ一つのストレスは軽いといってもいいでしょう。その代わり現代は昔と比べて軽いストレスが無数に、しかも継続してかかり続けるのです。休みの日でも仕事のメールを気にしたり、また、逆に仕事中に友人からのSNSを気にするあまり目の前の事が手につかなくなっているという事もあるでしょう。要するにうっかりすると自分では気づかないような無数の小さなストレスに常にさらされている事によっていつの間にか身体が緊張して固まってしまい、ゆるプラクティスの効果が相殺されてしまっている、それが現代社会なのです。

4.体をゆるめるには訓練を積んだゆるんでいる人に助けてもらう事が近道

これは実は根深い問題です。人間は個人差はあれ、本質的に”お互いの関係性“を大事にする生物です。それが社会を作り、現在の人類の繁栄を作った原動力といっても良いと思います。ですからお互いの関係性を持つという事は人が生きていくための大前提です。問題はその関係性がどういう状態なのかという事で、実は体をゆるめていくにはその関係性がストレスを与えあわないようないわば“ゆるんだ関係”であるという事が必須条件なのです。例えば極端な例ですが自分だけがゆるプラクティスに取り組んでゆるもうとしても、密室で10人のイライラした人に1時間囲まれればストレスがどんどんたまって身体がいつの間にか固まってしまいます(これを書いているだけで固まりそうです(笑))。反対に達人調整ではお客様はゆるもうとしていますし、達人調整師は相手をゆるめようとしています。そういう意味では「達人調整」の達人調整師、お客様の関係は1対1という最も基本的な他者とのゆるんだ関係といえると思います。そして、日々のストレスの中で体をゆるめていくには自分よりゆるんだ人の助けが絶対に必要なのです。これはゆる体操の教室ならば一対複数となりますが基本的には同じことが言えます。

5.実は調整師も自分がゆるもうとしている

たった今、達人調整師は相手をゆるめようとしていると書きましたが、達人調整師は施術中に何をしているかというと実はひたすら自分がゆるむように施術しています。さらに言うとBA=身体意識が高まるように施術します。ですから達人調整師は相手をゆるめているというよりも実は自分がよりゆるむ事で相手とのゆるんだ関係を構築し、それによって相手が“勝手にゆるんじゃっている”みたいな事なんですね(笑)
始めの例に戻って言うと、達人調整の術技はゆるプラクティスの理論に基づいて自分がゆるむように出来ています。これは代表的には「揺動緩解運動」や「擦動緩解運動」だったりします。調整師はそれに打ち込む事によって自分がよりゆるむようにします。そうすると相手も同じように「揺動緩解運動」や「擦動緩解運動」を起こすように出来ているので体が無意識に反応してゆるみだすのです。「おお、という事は二人でやるゆる体操(コンビゆるといいます)みたいなものですか?」と聞かれると私は「ほぼそうです」とお答えしています。実を言うとゆる体操の教室で指導している指導員もその体操のメカニズムに基づいて基本的に自分がゆるもうとしています。ですからゆる体操と達人調整は基本的に原理が同じなのです

ゆるセオリー・ゆるプラクティスの体系-一部

実際に施術しているところを隣で見ていた方に「先生は相手の体をゆるめてあげながら自分の体もゆるめているのですね。」と言われたこともあります。
これが先ほどの「それってどんな術技?」に対する私の回答です

6.“ゆるむ”ことを知っている方が受ける効果は倍増

先ほど“体が無意識に反応してゆるみだす“と言いましたが、現実問題として当然お客様もゆるむ事を知っている方がより効果が出ます。具体的に言うと身体をさすってもらったりゆすってもらったりした時に自分がゆる体操で自分の体をさすったりゆらしたりする時のゆるむ感じを知っていると、より深いところまでゆるむようになるという事です。逆に体がかなり固まってしまっている人の場合、こちらがさすったりゆすったりしても最初は反応してくれない場合もあります。さらに言うと調整して見た目にも調整前よりゆるんでいるのに自分ではわからないという人も本当にまれですがおられます。それはゆるんでいる状態を長らく経験していないため(コラム「子供のゆるす力」参照)ゆるんでいる状態を気持ちいいと思わなくなっているのです。体はゆるんでいるのに脳の認識がそれを否定しちゃっている状態ですね。こういう方は残念ながら施術後早い時間で固まる傾向にあります。そういう意味でも、やはりゆるプラクティスを知っていて、実践している方のほうが一般に体も精神も反応は良い傾向にあります。

7.達人調整の受け手はどんな感じ?

ここで達人調整を受けたことが無い方のために少し受け手としての私の感想をお話しましょう。
といっても、まあ、“ひたすら気持ちいい“というのが第一感ですけど、もう少し詳しくお話します。
例えばちょっと難しい言葉ですけど「拘束背柱崩し」

拘束背柱崩し
拘束背柱崩し

といって背中をほぐす術技があります。背中って自分ではさわれない部分がありますよね。施す側としてはそこをまずさすっていくのですが、受け手としてはもうそれだけで気持ちがいいんです。自分がさわれない場所は本当に陸の孤島みたいなもので意識が薄いです。ですから、そこをさすってもらうだけでその部分が目覚めていくような感じになります。それから施し手は少しずつさする動きを大きく深くしていくのですが、そうすると自然に受け手の体がゆれだします。そしてだんだん振動がお客様の表面の皮膚から脂肪~筋肉~骨へと入っていくんですね。そして内臓もゆれだすと、何だか広くて深い海でチャップンチャップンしているような感じになってきます。
わたしは10代の頃水泳をやっていたので水に対してはなんとなく特別な感情がありますが、同じ水でもプールと海は全然違う感覚なんです。プールの水になれている競泳バリバリの方はむしろわかりにくいかもしれませんが・・・。とにかく水は水でもプールではなく海にゆられているような、そんな深く、気持ちの良い感じです。

8.達人調整を施術している側はどんな感じ?

先ほども少し書きましたが凄く大雑把に言うと達人調整師はゆる体操をしている感じです。だから自分がゆるむようにやります。もちろん始める前に相手の体調や悪い部分の確認はしますが、基本的に自分がゆるむようにするのです。その方が先ほどの理屈でお互いに良い“ゆるんだ関係”になれます。お互い“ゆるんだ関係“になれると相手は勝手にゆるみます(笑)。要するにお互いリラックスするとお互いゆるむのです(笑)。ですからこちらが術技にはまり、ゆるめばゆるむほど自分の調子が良くなります。そして結果的に相手の調子も良くなるのです。

9.どのように利用していただくのが良いか

最後に実際にどうご利用していただくのが良いかという話をさせていただきます。
まず、当然の事ながら達人調整は医療行為ではありません。あくまでご自分の体をゆるめたいと思っておられる方のサポートと考えていただいたら良いと思います。ですので疾病や怪我などの改善を保証するものではありませんからそういう方はお医者様に相談されてから受けられるのが良いと思います。

そのうえでのご利用ですが、結論から言うと理想は月一回のペースで受けられるのが良いと思います。まず達人調整を受けられる目的は大きく3つに分かれると思います。

  • a.疲労回復
  • b.ゆるプラクティスの上達
  • c.専門種目(仕事)のパフォーマンスアップ

a.疲労回復

いくらゆるプラクティスに取り組んでも(3)で申し上げたように現代社会はストレス社会ですからゆるが追い付かない事は現実によくあります。さらに疲労がたまってくるとゆるプラクティスの効果が出にくくなりますからそういう時の疲労回復の手段として達人調整をご利用していただくのは良いと思います。ただ理想を言うと疲労がたまりすぎてから来られるよりもある程度余裕のある時の方が反応が良いので、出来れば月一回をめどに受けられるのが良いという事になります。また、基本的に怪我も疲労から起こりますので、怪我の予防目的も同じように月一回のペースで疲労をためない事が肝心です。

b.ゆるプラクティスの上達

ゆるプラクティスの上達の為に受けられる場合、もちろん教室に通う事が基本ですが、やはり自分ではなかなかゆるめられない部分ってありますよね。例えば(5)で申し上げたように自分でさわれない部分というのはその例になるのですが、そういう部分を達人調整でまずはゆるめてもらう事で例えば背中なら背中を背中モゾモゾ体操でだんだんと自分でゆるめられるようになります。ところが普段さわらないところは意識が薄く残念ながらすぐに固まってしまうので、最初はある程度の頻度でほぐしてもらう必要もあります。ゆるプラクティスに日常取り組んでおられる方ならその目安は月一回という事になると思います。

c.専門種目のパフォーマンスアップ

これは2通りの考え方があって、1つは実力を上げるために継続的に受けるという考え方。2つ目は例えばスポーツなら試合、仕事ならプレゼンなどいわゆる本番のパフォーマンスをアップするために直前に受けるという考え方です。実力アップの為なら専門種目のパフォーマンスは体のゆるみ度に比例しますから結局(b)と同じになります。直前に受けるなら直前が良いのですが、かといって何カ月も達人調整を受けないと、よほどうまく自分のトレーニングが出来ていてもお客様としての体の反応が鈍りますから、実際は月一回のペースで受けて本番の日程を見ながら調節して直前に受けていただくのがより効果が出やすいと思います。

以上長文になりましたが、実はここでは書けなかった事もたくさんあります。更に達人調整にご興味がおありの方は直接開発元である運動科学総合研究所のHP「達人調整とは」に当たっていただくのをお勧めいたします。

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