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自分でも驚いた達人調整の効果

皆さんこんにちは。先日達人調整を施術していて興味深い出来事があったのでご紹介させていただきます。

ある患者様の場合

私はゆる体操と達人調整をリハビリとして取り入れている整形外科に勤務しています。そこである患者様を担当させていただきました。膝が悪いという事でいくつか体操を覚えてもらって、「お家で時間がなければ太腿や膝周りをさするだけでもいいのでやって下さいね」とお伝えして1週間後にまたリハビリで来てもらうように予約を取ってもらいました。
その時私には少し心配な事がありました。その方は非常に内気な方で、運動の経験もないので自分の体に対する感受性が少し低めの方だったからです。体操をしていただいて、確かにその効果は出ているのですが、ご自分でその変化が感じられていないように思えたのです。
少しご説明させていただきます。
いま「内気」という言葉を使いましたが、必ずしも内気だからと言って体に対する感受性が低いという訳ではありません。むしろ内気な方が体に対する感受性が高い場合もあります。人が「内気」に見える場合、単に感情を外に出す事が苦手な内向的な性格の場合と、無意識に自分の内部を観察している(これを「内観」といいます)ようなタイプがあり後者の場合はむしろ自分の体に対する感受性が非常に高い場合もあります。

内観能力と社交性の相関関係
図1 内観能力と社交性

これらは別々のもので外交的な性格でも内観能力が高い場合も当然あります。図1でいうとAの領域ですね
プロのスポーツ選手は基本的に内観の能力は高いですが外交的な性格の方も多いですよね。
また、一流の職人さんなどは生まれつき内観の能力が高い場合が多く子供の頃は周りから見ると内気に見えるタイプだったという場合があります。図1でいうとBの領域の方です。こういう方々は常に自分の内部の世界を見ているので、普段あまりものを言わなくても話し出すとたまっている認識が噴きだしてきて会話が止まらない性格だったりする場合もあります。実際私もそういうタイプの方を知っています。

話を戻しましょう。私が担当した方はそういうタイプではなく、少し自信なさげで自分の感情や体の感覚を表現する事が苦手なタイプに見えたのです。長い間自分の感情を押し込めていると自然に自分の本当の気持ちや感覚も判らなくなってしまうという事はよくある話です。お年も70代ですのでおそらく子供の頃から長い間そういう風に生きてこられたように私には見えたのです。
とはいってもこちらが問いかければお返事はちゃんとしていただけますので図でいうと緑色の丸印のあたりの感じでしょうか?
そのような状況では体操に取り組んでも体操の効果が自分で感じ取れず、効果が感じられないとモチベーションが下がるので自然と体操をしなくなってしまいます。ゆる体操は世間一般に出回っている他の体操と比べても少し変わっている動きが多いので、そのような状況で1週間も経つとゆる体操に不信感を持つ時間としては十分です。不信感を持ってしまうと普通はいくらやっても効かなくなってしまいます。
私はその負のサイクルに入ってしまう事を常に恐れていますから、体操指導では必ず一回目に効果を感じられるように指導しています。幸いここでも何度も申し上げているようにゆる体操を含むゆるプラクティスにはその通りやっていくと最大限効果が出る仕組みが取り入れられているので、何も細工せずともこちらが基本通り教えるとほとんどの方が一回目で効果を感じて帰られます。
ただ、その方に関しては先ほども申し上げたように、私が見てもゆる体操の効果が出ているのにそれが自分で感じられないままリハビリの時間が終了してしまったのです。
という訳で、私はゆる体操をご自宅でしてくれるかどうかが心配だったのです。

体操はご自宅でされていた

一週間後その方が来られました。で、ご自宅での一週間の様子を聞いてみるとゆる体操は何とかされていたようですが、やはり「この体操が何故膝にいいのかがわからない」という事をおっしゃっていました。
私は自分の指導力のなさを痛感しましたが、もう一度体がゆるむとなぜ良いのかという事を説明しながら一緒に座ってするゆる体操を一緒にやってもらいました。しかし、少し不信感を持たれているようなのか、効いていないわけではないのですが少し効きがわるい。また膝につながっている筋肉も先週よりも少し固まっているように思われました。
なので私は一通り体操の復習をした後に達人調整をしてみることにしました。
リラックスしてもらうために最初は少し話しかけながら施術していたのですが、あまり話しすぎると相手も体の変化に集中できなくなるので途中から無言で進めていくと、その方の体に興味深い変化が出たのです。
興味深いと言ってもある意味自然な事なのですが、突然施術している部分の筋肉がゆるみだしたのです。私はその変化が急激だったので少しびっくりして、「今いきなり太腿がほぐれて柔らかくなってきたんですけどわかりますか?」
とお声掛けしました。するとご本人は「いえ・・・、わかりません」とおっしゃいます。
私は「そうですか。でもすごく柔らかくなってきましたよ。体は素直に反応しているんですよね」といいました。
そうです。ご本人が認識できなくても、体は潜在意識下でゆるもうとしているのですね。
人間はすべて自分の顕在意識でコントロールできているわけではありません。むしろ顕在意識にのぼる世界はわずかなもので自律神経や内臓の活動、それをコントロールする脳の活動など、潜在意識でコントロールされている部分の方が膨大な量に及んでいるのです。

顕在意識と潜在意識
図2 顕在意識と潜在意識

私がこの経験でわかったことはやはり人間は潜在意識下ではゆるむことを欲しているという事でした。
私は何か特別の事をした訳ではないのです。達人調整の原理に従って自分がゆるむようにやっただけです。その方にとってはそれが何かの引き金になって潜在意識が反応したのかもしれません・・・。

帰り際にもう一度椅子に座ってもらってご自分の太腿を触ってもらったところ、来られた時にはカチカチだった太腿がふにゃっと柔らかくなっています。あまり感情を出さないその方は、やはり顔の表情はあまり変わらないながらもご自分で触ってみて不思議そうに驚いておられました。
で、帰り際に椅子から立ち上がる時に「あ、少し楽です」と小さな声で言いながら、微笑んでいたように見えました。
私は少し希望を感じましたが、やはり心配は抜けません。次にリハビリに来られるまでの1週間はその感覚を維持するにはその方には長すぎるのです。
案の定一週間後に来られた時にはもとに戻っていて、「やっぱりこの体操を続けなければいけませんか?」とおっしゃっていました。でもリハビリに来たという事実が私にはよい変化と思いました。そして次のご予約もとって帰られました。

人間は複雑だが素晴らしい存在

人間の体や意識、感情は複雑で難しいです。でも今回のやり取りそのものが私にとって物凄くよい経験になりました。
そして達人調整のテーゼ『自分自身を大事にして行う調整の方が、ずっと受け手が良くなっていく、つまり「本当の意味で受け手を大事にする調整」』だという事を改めて痛感しました。
そしてその人間同士の関係が素晴らしいと私は思うのです
その方にはこれからも症状が改善するまで来ていただけたらよいなと思っています。

高岡先生の調整一般に関する著書は少ないですがご興味がある方はこちらをぜひご覧になって下さい。

身体調整の人間学

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  • ※)達人調整とゆる体操は本来治療を目的とした体系ではありません。私は整形外科のドクターの許可を得てドクターの認める範囲内での体操指導と施術を行っています。よってすべての方に同じような効果が保証されるわけではありません。あらかじめご了承ください。

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