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良い道具とは?

みなさんこんにちは。ゆる体操やっていますか?

ゆる体操やゆるトレーニングをやると、自分の専門種目だけでなく、普段の何気ない動作が楽になり、いわばどんな動作でも「上達」します。

しかし、人間の動作というものは実際は道具を使うことがほとんどです。となると道具と人間の作業の関係というものも考えてみたくなりますよね。

なんでも真剣に取り組んでいるうちに上達すると良い道具が欲しくなるものです。

しかし、実は道具には大きく分けて2種類あるのです。それは

  • 上達を阻害する道具
  • 上達を促す道具

です。

こう考えると、普段身の回りに溢れている道具はどうでしょうか?

掃除機、洗濯機、スマホ、TV、包丁、ドライヤー、音楽プレーヤーなど数えきれないほどの道具が身の回りに溢れていますが、これらはそれぞれどちら側に入る部類のものでしょうか?

今日はそんな道具について考えてみたいと思います。

上達を阻害する道具

まず、以前私はゆる体操に長年取り組んでいる友人からこんな話を聞いたことがあります。

「人間はより便利になるための道具を作る。そして作られた道具はより便利なものへとなっていく。ではどこまで便利になるのかというと、人間が本質的に上達しなくなるまで便利になるのだ。」

これはその友人がゆる体操の開発者である高岡英夫先生から聞いた(また聞きなので正確ではないかもしれませんが)という言葉です。

なかなかショッキングな言葉ですよね。

これはどういうことでしょうか?

例えば洗濯を例に取ってみましょう。

まず昔は水道がありませんでした。ですので洗濯場まで洗濯物を持っていかなければなりませんでした。その後水道が通って、洗濯にかかる時間、苦労は大幅に削減されたことでしょう。

しかし、昭和の初めの頃までは洗濯機というものがありませんでした。ですので、人はタライに洗濯板を使って全て手で洗濯をしていました。

そしていつの頃かわかりませんが、水を搾るのに、バーの間に洗濯物を挟んで圧縮して搾るという器械が出来ました。これで力の弱い人でも絞れるようになりました。

そして高度経済成長の時代に現代的な洗濯機が登場します。

水を張ってスイッチを押せばモーターの回転運動を利用して勝手に洗濯と脱水をしてくれる機械です。

この機械のおかげで、人類は洗濯という作業労働から解放され、機械が動いている間の時間を別のことに使えるようになりました。そしてその後乾燥までしてくれる全自動洗濯機ができ、よほど繊細な素材でなければ、人間の作業は洗濯機に洗濯物を入れる、スイッチを押す、洗濯物を畳むという作業のみになりました。

さて、洗濯機ができたおかげで、現代人は多くの余暇を取れるようになりました。その時間を使って体を休めたり、趣味に打ち込んだりすることができるようになりました。

しかしその分、体を大きく使うことが減りました。つまり体幹部を大きく強く、かつ柔らかく使うような作業が減ってしまいました。

人間の作業は基本的に腕を使うようにできていますが、いわゆる肩から先の部分の力などは体幹部が持っている豊富な筋量・重量に比べると大したものではありません。

ですので、ある程度強度が必要な作業というのは体全体、特に体幹部を効果的に使う(インナーマッスルを主導で使う)と楽に早く正確にできるようになっているのです。ということは逆に適度な負荷がある方が、体幹部が開発され、上達しやすいという事ですね。

また、人間も含め脊椎動物は体幹部に大事な臓器があります。ですから、体幹部を柔らかく使うことで内臓まわりの代謝が良くなり健康を維持できるようにできています。

もちろん疲労がたまるほどではいけませんが、適度に使うのが良いとされています。

洗濯に代表されるように、ある道具が開発され、いろいろな作業が便利になり、その作業から解放されるということは基本的に良いことだと思います。しかし、それが体幹部の運動を奪うような方向性では、長い目で見たとき、結果的に人間の健康を損なう可能性があるのです。

ですが、本能的に人間は作業労働を嫌うような性質があります。

これはおそらく太古の昔からある、日々を生き抜くための、できるだけエネルギーを節約しようとした生物全般が持つプログラムなのでしょう。
しかし私は(全くの私見ですが)それ以上に人間の大脳が肥大したことが大きいのでは?と思っています。

大脳の要求が正しいとは限らない

脳はそもそも非常に大きなエネルギーを必要とする器官です。

人間のように非常に大きな脳を持ってしまうと、他の器官には関係なく、主体意識(運動科学の用語で、自分が自分であると認識している段階の意識の事)は常に休息を欲するようになっても仕方のないことなのかもしれません。

その結果、できるだけ運動しない、しかも考えなくても良いような方向性を求めるようになったのではないでしょうか?

そういうわけで、脳が発達して、道具が作れるようになった人間は、主体としての大脳が欲するままに便利な道具を開発してきました。

しかし、魚類等、他の脊椎動物は基本的に体幹部の運動をし続けることで健康を維持できるようになっています。こちらの方が動物としてより根源的な性質と言えます。
そして人間も動物と同じように体幹部を開発することが、作業労働を含む全ての身体運動の上達を促し、体幹部の開発が健康を促す事は運動科学の理論によって明らかになっていますので、結局のところ身体運動の上達と、健康の維持は全く同じベクトルなのです。
この事は高岡先生の著書、「究極の身体」に特に詳しく述べられていますが、このサイトの記事でも事あることにお話しさせていただいています。

結論から言うと、脳(特に大脳の一部)が欲するような「便利な」道具というものは究極的には指先一本でなんでもできる、というところを目指していると思います。最初にご紹介した高岡先生の言葉も、そのような事を前提として言われているのだと思います。

実際にPCができ、それが携帯電話と融合したスマートフォンができることによって、ほとんどのことが指先一本でできるようになりました。

このようにして現代文明はどんどん人間の上達の機会を奪い、健康を損ないながら発展していっているのですね。

了平コラム
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寿命が伸びたのは?

これまで、便利な道具の発達が体幹部の運動能力を低下させ、上達の機会を奪い、それが健康を損なうという流れでお話ししました。
しかし人類の寿命は伸び続けています。これは栄養状態が良くなった事と医療の発達が、運動能力の低下によるマイナスを上回っているからであって、これまでの話と矛盾することではありません。
これは極論すると不健康なまま長生きできるようになったと言ってもいいかもしれません。
昔は膝が痛かったり腰が痛かったりすると、結局のところ長生きはできませんでした。
今でも野生動物の世界ではそうですよね。
もし、野生の環境で腰痛の猿がいたとすると、色々な意味で長生きできそうにもありません。
しかし現代は腰痛を抱えても、便利な生活様式のためなんとか生きることができます。
逆にその反動として、ただ長生きすれば良いという考えは先進国では否定され始めていて、特に日本のような超高齢化社会にとっては晩年のQOL(クォリティ オブ ライフ=生活の質)が大きな問題となってきています。

上達を促す道具

さて、発明される道具が人間の健康を奪っているということであれば、全ての道具が悪いものなのでしょうか?

もちろんそれはそうではありません。

なぜなら良い道具というものは人間の能力を引き出すようにできているからです。

例えば包丁一本にしても、よく切れる包丁というものは、それがよく切れることによって面の意識が発達しますし、面の意識が発達するとそれを根本から支える意識である、身体座標区間の意識が発達し、それに伴い最も大切な身体意識である軸(=センター)が発達します。また、綺麗な面で切ろうとすると、小手先だけでは絶対に無理(関節がそのような構造になっていない)なので、必ず体幹部の意識が発達します。

このように、本当によくできた道具というものは「楽で簡単」という方向性(包丁の場合は”よく切れる”)という方向性を目指しながらも、高度な身体運動を誘発することにより、上達が可能になっているものと言えるのではないでしょうか?

高岡先生は

道具にも身体意識がある

と常々言われていますが、それはこういうことです。

道具は基本的に作業を便利にするために作られるものです。誤解がないように重ねて述べますが、便利になる事は基本的にはよいことだとおもいます。しかし道具によって本質的な人類の健康が奪われる事が悪いことなのです

要するに、良い道具は人間の高度な身体運動を誘発するようにできていて、そして悪い道具は人間を固まらせ、拘束させ、不健康にするようにできているということですね。

結局のところ良い道具とは良い方に極まった身体意識である「極意」をもつということなのでしょう。

例えば日本刀などは元々は人を殺傷するために作られたものですが、使いこなすには非常に深く高度な身体運動が必要と言われています。その深さそのものがつまり極意であり、現在では必要とされない道具である日本刀に工芸品としての価値を与えているのだと私は思います。

このように道具の良し悪しはその本来的な目的を超えることも可能なのでしょう。

ここで最初の疑問に答えたいと思います。

私たちの身の回りには様々な道具が溢れていますが、スマホや包丁といった道具の種類云々よりも

体を開発し、上達させてくれる道具が良い道具

ということになります。

こう考えると、ゲームでもパイプオルガンのように足も使い、モニターが360°になっていて、後ろからも攻撃され、インターフェースがあちらこちらにあり、それを使いこなすには体幹をバラバラに使わないとできないようなゲーム機器が開発されると(眼の問題は残るにしても)良いものと言えるのかもしれませんね。(ただしそんな高度な身体運動が要求されるゲーム機器が売れるとは思いませんが・・・。)

そして道具を開発する方々はそれを踏まえて、便利でありながらも体の開発を促すような「良い道具」を作っていただきたいと思います。

最近の体験から

さて、最後にこの記事を書くきっかけになった私の体験をお話ししたいと思います。

最近我が家では長年使っていた掃除機がついに壊れてしまい、さてどうしようかという話になっていたのでした。

そもそも我が家は箒とハンドクリーナー、雑巾で掃除をしていたものですから、掃除機いるかな〜という感じもしていたのですね。掃除機がない方がより体を使う機会も増えますしね。

しかし、やはり色々な理由から買っておこうという話になり、ネットで色々調べて、いくつか候補を挙げていたのですが、そのうちの一つがちょうどタイムセールになったので、とりあえず安い間に買っておこうということで、日立の掃除機を購入したのでした。

そしてすぐにその掃除機は来たのですが、まず、開封前の箱からして異常に軽い!

蹴ったら吹っ飛ぶ(笑)ぐらいの軽さです!(もちろん蹴りませんが・・・。)

あまりにも軽いので何かの間違いではないかと受け取った妻(中田ひろこ)が思ったほどです。

そして、使うと、非常に小回りが効くのです。さらに何かの機能なのでしょうが、床を滑らせるとどんどん前に進んでいく感じがします。それも無理矢理でなく、ホバークラフトのように地面から浮いている感じなのですね。

私は整形外科のリハビリで、上肢を痛めている人に対しては

「掃除機は自分で吸い込んでくれるのですから、モップをかける時のように力を入れなくてもいいんですよ」

と常日頃言っているのですが、これはすごい!本当に子供でも、非力な女性でも力が全く要りません。それどころか軽い感じが楽しいあまり

つい、掃除をしたくなってしまう

ぐらいなのです。

ほとんど腕プラーン体操をしている間に掃除が終わってしまうと感じるぐらいです。それどころか方向転換する時に小手先に力が入らないように肩甲骨や肋骨、股関節を使いたくなるぐらい快適なのです。

ですので個人的には変な力が入ったら掃除機に悪いと思うぐらいです!

どうでしょうか?

掃除機そのものは人間の掃除という作業労働を少しでも解放するために生まれたものです。

ですので、雑巾掛けなどに比べたら体幹部を開発する機会を奪うものであり、それが人間から上達の機会を奪うものかもしれません。

しかし、この掃除機の場合、掃除がしたくなるので、むしろ運動の機会は増えますし、しかも体幹部を使いたくなるので、むしろ全身がゆるむぐらいです。
ここまでのものを作る開発者はよほど掃除が大好きで、こんな掃除機が欲しい!という情熱があったのだと思います。

私はこのサイトで特定の商品の宣伝をする事はしない方針なのですが、この掃除機に関してはちょっとした感動だったので、開発者の方に敬意を表してリンクを貼っておきます。

日立 ラクかるスティック PV-BL1J

※リンクを押すとアマゾンの該当ページに移動します

ちなみに現在の市場価格は26,000~28,000円程度の様です。同じ日立でも上位機種は、吸い込みの強さや、バッテリーの持ち時間等に差があるようですね。時間がたてば安くなるのが常ですから、購入をお考えの方でも急がない人は安くなるのを待って買えばいいのではないでしょうか?

ただしこの商品は充電式なので、毎日1時間は掃除機をかけるという方がいたら、バッテリーの問題があるので気を付けてくださいね!

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