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「割腰(われごし)」の話

ゆる体操コラム

皆さんこんにちは。ゆる体操をしていると色々なところがゆるんできて、普通ではちょっとイメージしにくいような動きが日常の中で出てきたりします。

ゆる体操の開発者である運動科学者の高岡英夫先生は、そのような動きについて、これまでの書籍で色々紹介されていますが、その中に「割腰」というものがあります。

今日は「割腰」について簡単な見分けかたなどお話できればと思っています

1.割腰とは?

割腰は超一流のパフォーマーの証とも言える身体操作ですが、腰(腸骨)が左右別々に使えて、脚が股関節からではなく、あたかもその上の腰の部分から使えている状態を言います。

腰が脚?

と思われる方もおられるかもしれませんが、これは動物ではわりと当たり前のことで、例えば四足動物では、前脚は肩甲骨から、後脚では腸骨から脚として使えているのですね。

※動画引用https://m.youtube.com/watch?v=1RXVBdVZqSs

四足動物の場合人間と違い腸骨が内臓を直接受け止めるような構造をしていないので、より腸骨を脚として使う動きがしやすい構造になっているのですが、人間でも腸骨が背骨と分離して関節(仙腸関節)を作っているという構造は、本質的に動物と同じですから、人間も動物と同じような動きができるようになっているはずであり、実際にそういう動きが出来るわけで、それが出来ている腰の状態を割腰というのです。

とは言っても実際は腰が脚として使える動きというのはほとんどの人ができない訳ですが、どういった場合にそういう動きができるのかという詳しい話は高岡先生のさまざまな本で紹介されています。

究極の身体

ですがせっかくですので少しここでもお話しておきましょう。

2.割腰の解剖学

下の図をご覧ください。

仙腸関節
仙腸関節を背面から見た図

これは腰椎から骨盤〜股関節の解剖図ですが、骨盤を構成している骨のうち、腸骨という骨は背骨の一部である仙骨と仙腸関節という関節で繋がれています。

さらに骨盤の下部である恥骨も恥骨結合という部分で繋がってはいますが、元々別の骨なので、そもそも骨盤は骨格の面から見ても背骨を中心に左右二つに分かれている構造をしているのです。

骨格から見た割腰の図解
腸骨を仙骨から切り離して見た「割腰」の図

このように描くとなるほど確かに腸骨は脚の一部のように見えてきますよね。

さらに下肢を動かすインナーマッスルである腸腰筋を加えてみましょう。

腸腰筋と割腰

このように描くと腸骨と下肢は腸腰筋という大きな筋肉で一体化して、背骨と連結している構造であるのがお分かりだと思います。

この腸腰筋という筋肉の構造から見ると、腸骨と大腿骨は背骨からぶら下がっているような構造をしています。ですから、腸腰筋という筋肉を効果的に使えると筋肉の側から見ても骨盤も脚として二つに分かれて使えるということになるのです。

このように、身体の本来の構造として腰はそもそも左右に分かれて使えるようになっており、それが割腰といいう構造なのです。

ただし本当の脚と違って、骨盤の動きはわずか(むしろ根元なので動きはわずかでよいのですが)ですから、全く割腰ができていない人にとってはわかりにくいという面があります。

しかし、自分ができなくても見るポイントを押さえれば、相手が割腰が出来ているかどうかはわりと簡単に見えるようになってくるものなので、それを少しご紹介したいと思います。

3.割腰の実際

まずは以下のリンクをご覧ください。

FIFA公式動画「Lionel Messi 10 Great Goals」より

(FIFAの公式動画は直接埋め込みができないのでリンク先を開いてご覧ください。)

3分30秒頃からのメッシのドリブルですが、左右の腰がお腹のあたりからウネウネ動いているのがわかると思います。割腰と言っても実際は左右の腸骨はお腹でつながっているので、実際の見え方としてはこのようにウネウネと動いて見えるのですね。

ただし自分の実感としては本当に二つのパーツとして分かれて動いている感じがするわけです。

また3:29付近でのシーンですが、静止画にすると(下手な絵で申し訳ありませんが)割腰ができている人はこのように仙腸関節付近を中心に腰を含めた×印のラインが引けるのがわかると思います。是非ご自分でも動画を止めてご確認ください。

メッシの割腰

腰が割れていない場合はこのようにラインを引くことはできません。

このように割腰は現代ではスポーツ選手に限らず一流のパフォーマーの一つの指標ともなっているわけですね。

もちろん割腰と言ってもい出来ている、出来ていないの二つではなく、「少し出来てきた」、という状態から「完璧に出来ている」といった状態までその間はアナログに分かれている訳です。

リオネル・メッシのような超一流の選手ともなれば、その完成度もすごいレベルなわけですが、普通の人が全くどうしようもないということではなく、ゆる体操やゆるトレを続けていれば不可能ではないわけです。

「スーパーウォーク歩道」で歩く女性
スーパーウォーク歩道で歩く女性

上の写真は当サイトのインストラクターである中田ひろこの写真ですが、先ほどのイラストと同じように腰に交差したラインを引ける事がお分かりかと思います。

中田ひろこは別にスポーツ選手でもなんでもなく、むしろ元々運動は苦手な普通の女性ですから、構造として人間にある以上は割腰といえども誰でもできる可能性のあるものということですね。

このことからゆる体操をはじめとする運動科学のメソッドを丁寧にやり続ければ、誰にでも高度なパフォーマンスを達成できる可能性があるわけです。

さらに、以下の絵をご覧ください。

浮世絵にみる簡略化された「割腰」
広重・国芳 双筆五十三次 謎解き浮世絵叢書より(部分)

江戸時代の浮世絵師歌川広重(国貞と合作)の作品の一部ですが、特に一番左の人物の脚をご覧ください。

なんと脚が✖️印のみで描かれていますね。そして、その ✖️ 印が体幹部の腰のあたりまで伸びているのがわかります。他の二人の人物も腰回りと脚がつながって ✖️ 印のようになっています。

広重が割腰という概念を知っていたとは思えません。しかし、遠景の人物を簡略化した結果、その人物の脚をこのように描いたということはなのでしょう。
対象を簡略化するという作業はどこかを強調して、どこかを削除するという判断です。広重は別段考えることもなく、ごくごく当たり前にこのように描いたということは自分も含め人間の脚腰というものは特に「割腰」という特別な概念を与えなくても最初からこのように動くもの、という認識だったと考えるしかありません。

ちなみに割腰ができていない人物の脚腰であれば以下の左図のように描くしかなかったでしょう。

割腰の模式図
割腰の模式図

昔の人(少なくとも江戸時代の日本人)は割腰が普通にできていたのですね。

というよりもむしろ、これが本来の人間の状態であって、現代人の身体能力があまりにも衰えている、ということの証なのかもしれません。

それを確かめるためにさらに江戸時代の浮世絵から検証してみましょう

北斎漫画より (Public Domain)
Katsushika Hokusai (Japanese, Tokyo (Edo) 1760–1849 Tokyo (Edo)) Picture Album Transmitting the Spirit: The Hokusai Drawing Style (Denshin gafu Hokusai gashiki), 1814–78 Japan, Edo period (1615–1868) Set of nineteen woodblock printed books; ink and color on paper; each approximately: 9 × 6 1/4 in. (22.8 × 15.8 cm) The Metropolitan Museum of Art, New York, Mary and James G. Wallach Family Foundation Gift, 2013 (2013.720a–s) http://www.metmuseum.org/Collections/search-the-collections/78791
葛飾北斎の「北斎漫画」よりメトロポリタン美術館のパブリックドメインを転載しました。

葛飾北斎の「北斎漫画」からです。どれを見ても素晴らしい腰回りですが、割腰に関して特にわかりやすいのは左ページの中段ぐらいの絵でしょうか。

さて、この割腰ですが、どのようになれば身につくのかというと、「腰が割れる」というぐらいですから、まずは腰回りがゆるゆるの状態である事が必然です。

また、人体最強の前方力の源である腿裏を使わせる身体意識である「裏転子」をがある程度身についていることも前提として必要となってきます。

実際のところはある程度の裏転子が身についたところで腰をさらにゆるめるトレーニングをしていると、お互いが補完しながら強化されていくといった関係にありますね。

本当の裏転子は腰が割れていて初めて出来るものだと思います。

世界のメジャースポーツなら、一流の人物はこの身体操作が出来ていますから、皆さんも自分の好きなジャンルで一度動画などを見てみると良いと思います。

ちなみにスポーツに限らず一流の人物なら出来ているという例も載せておきます。

Pieter Wispelwey
「バッハ無伴奏チェロ組曲」

※リンクを押すとアマゾンの該当ページに移動します

写真はオランダ人チェリストのピーター・ウィスペルウェイです。チェリストというと座って演奏する職業にもかかわらず、腰が割れています。
前後だけでなく縦方向にも割れているので、後ろに伸びている左脚の腰が下がっていますね。
この方は良い意味で軽くそしてのびやかな美音と、前に前に進んでいくような演奏が特徴ですが、この歩き方をみると、さもありなんという感じがします。

さて、いかがでしたでしょうか。このようにスポーツ選手だけでなく、精神のあり方を含め、人類普遍の能力として必ずその分野ごとに対応した能力を割腰が発揮する事がお分かりだと思います。

さて、そろそろここで話をまとめたいと思います。

4.まとめ

  • 割腰は骨盤の部分から下半身をあたかも脚の延長として使える身体操作である。
  • 割腰が使えている人が歩いている時、腰の部分から交差したラインが引ける

最後に腰をゆるめ、裏転子を身につけ、割腰を作るためのゆる体操をご紹介しておきましょう。

  • 寝ゆる黄金の3点セット
  • 片手ハムスリ
  • 踵クル・爪先クル
  • 腰クネ
  • チャップリン

寝ゆる黄金の3点セット

みなさん大好きな寝ゆる黄金の3点セットですが、実は腰モゾと膝コゾは割腰を作るための本格的なトレーニングともいえます。

片手ハムスリ(片膝休み腿裏スリスリ体操)

ただ腿裏をさするだけの体操のように見えますが、とことんやり抜くと裏転子ができてきます。とことんと言ってもやっぱり腿裏をさするだけ(笑)ですので、一定の期間だけでも毎日やってみてはいかがでしょうか?

踵クル・爪先クル(踵クルクル体操・爪先クルクル体操)

股関節の意識を高め、腸腰筋を活性化する代表的な体操です。

腰横スリ(腰横スリスリ体操)

これも見た目は腰の横をさするだけですが、中臀筋の脱力を進める非常に大事な体操です。後のチャップリンと合わせてやりたいですね。

チャップリン(チャップリンプリン体操)

腸腰筋の中でも特に大腰筋を活性化する体操です。腰回りの力みをよく抜いた状態で行うと大腰筋が伸展され、お腹の中で左右に腰が割れてくるのがわかると思います。

これだけでも理論的には割腰ができるようにはなりますが、実際のところはもう少し高度な内容のトレーニングを学んだ方が良いと思われます。そういう方は高岡先生の映像講座をご覧になって下さい。

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