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一発鑑定!あなたはゆるんでいるか!?
ゆる体操を始めてしばらくたち、鏡の前で魚クネクネ体操をしてみたりして、
「おお、体幹部もグニャグニャしてきて結構ゆるんできた感じがする!」
というゆるマニアなあなた!
いいですね!
「魚クネ?どんな体操だっけ?」
という方はこちらの動画を見てください(笑)
でもさらに今以上にゆるみたいと思っているならばぜひやっていただきたい体操があります。
それは
両膝休み背腰ダラー体操
です。
この体操は地味で一見簡単に見えて実は大変難しい体操で、
全身がゆるんで使えているかどうかの良いチェック
になります。
サッカーゆるトレーニングに取り組んでおられるサッカー選手の方も
自分の体が本当に使えているかどうかの良いチェックになります。
ゆる体操もある程度進んでくると
一見ゆるんでいるように見えるがさほどでもない
場合と
本当にゆるんでいる
場合にわかれていくのです。
今日はその最も簡単な見分け方をご紹介したいと思います。
1.とりあえずやってみよう
くわしいやり方は後にして、まず両膝休み背腰ダラー体操をやってみましょう。
この体操のポイントは
- 肘を伸ばすこと
- 脛を地面に対して垂直に立てる
- 首~背中~腰の力を抜く
という点です。
さあ、まずは動画を見ながらやってみてください。上に挙げたポイントが意識できる方は少し気にしながらやってみましょう。
やってみましたか?
ではもう一度やりながら一つ一つチェックしてみましょう。
まず肘が伸びているかどうかですね。
伸びていなかったら伸ばしてください。
両方ちゃんとですよ!
意外に片方だけが曲がっていたりするものです。
でも、これは自分の目で確認できるので簡単ですね。
次は脛が地面に対して垂直になっているかどうかをチェックしてください。
よくあるのは脛が前傾しているパターンです。
前傾すると前ももに力が入ってしまっている場合が多いのでサッカーをはじめ、スポーツに取り組んでいる方は特に要注意ですよ。
これも自分で見ながらできますが、少しわかりにくいと思った方は鏡に写してチェックしてみましょう。
もし垂直になっていなかったら直しましょう。
さらに気持ちよくもも裏にストレッチがかかるとよいですね。
そして今度は首~背中〜腰を確認してみましょう。
これはさすがに自分ではわからないので必ず鏡に写して確認してみてください。
どうですか?意外なほど丸くなっていませんか?
そうですね。丸くなってしまう方はせめてまっすぐに伸びるぐらいに力を抜いてください。
特に腰の下の方、仙骨とその上の部分ぐらいが丸くなっていないか(ベルトをしていると丸くなっているように見えますが)気をつけてみてください。
はい、できましたね。
ではもう一度肘をチェックしてみてください。
はい、曲がっていますね(笑)
ではもう一度肘を伸ばしてみましょう。
膝はどうですか?
「あれ?前に出ちゃっているかな?」
と思った方はもう一度地面に対して垂直にしてください。
そしてもも裏を気持ちよく伸ばしましょう。
ではもう一度首~背~腰のチェックです。
???
「丸くなっているぞ?」
と気づいた方は直しましょう(笑)
首が垂れていないのもダメですよ!
はい肘はどうですか?
!!!!????
何?曲がっている?
はい、では直しましょう・・・・。
・・・・・・
とこのようになってしまった方、結構おられたのではないでしょうか?
こうなってしまった原因は主に力を入れて形を外側から矯正して直そうとしたところにあります。
2.力を入れて形を直すのではない
例えば肘を伸ばすとき、肘の外側に力を入れて無理やり伸ばすと背中に力が入ってしまいます。
そうすると背中が丸くなってしまうことがよくあります。
逆に丸くなっている背中や腰を直そうとして背筋に力を入れて背中をそらすようにすると首を垂らすことが難しくなり、加えて膝や肘にも力が入って曲がってしまったりするのです。
また、前に出ている膝を地面に対して垂直に立てようとすると物理的に腰が伸びようとするので、それに合わせて腰がゆるんで伸びればいいのですが、腰が普段から固まっている方はその状況に対応できなくなり背中が丸くなってしまい、さらに肘もそれに合わせて曲がってしまいます。
ゆる体操に取り組んでいて一見体が柔らかくなったように見えてもこの体操は全身がかなりゆるんでいないとできるようにならないほど、実は難しい体操なのです。
例えば最初に例に出した魚クネクネ体操は背骨の一部分(主に自由脊椎と言われる部分)が動き出すとなんとか体操としての最初の条件(クネクネしているように見える)はクリアできます。
ですから背骨でも自由脊椎以外の部分(胸椎の上部や腰椎の下部)が固まったままでも結構上手にできているように見えるのです。
それに比べてこの「両膝休み背腰ダラー体操」で求められているのは背骨の間が一つずつストレッチされて開いてくるような運動です。
体が柔らかく、背中をそらす動きが上手くても背骨の間が開いてこないとこの体操は楽にできるようになりません。
「背骨の間が開く」
という状態は全身の力が抜けてゆるんできた時に段々と現れるものなのです。
そうです。この体操は実は
全身の力が抜けきって始めて上手にできる
体操だったのです。
ですから私は今でもかなり難しい体操だと感じています。
3.体がゆるんでいることと体が柔らかいことは大きな違いがある
ここではっきりしておきたいと思いますが
体が柔らかいこととゆるんでいることには大きな違いがあります。
体が柔らかいというのは関節の可動域が大きいことと、動きが柔らかいという二つのイメージがあると思います。
例えば新体操の選手は両方の柔らかさを持っていますが、ヒップホップのダンサーなどは関節そのものの可動域はさほどでもなくても動きは非常に柔らかいですね。
動きが柔らかいとゆるんでいるという感じがしますが、動きが柔らかい人でも動かしやすい部分がぐにゃぐにゃ動く(代表的な部分は自由脊椎)程度ではとてもゆるんでいるとは言えません。
もちろんヒップホップのダンサーがゆるんでいないというわけではなく、実はゆるみ具合は人それぞれです。
ヒップホップのダンサーでいうとアマチュアレベルでも動画で有名になるような方は動きが柔らかいですが、ゆるみ具合でいうとそれほどでもない場合も多々あります。
逆に世界で名前を知られるようなダンサーになるとちょっと肩を動かしただけで肋骨や背骨が細かく揺動したりするのです。
これがゆるんでいるということです。
4.体を動かす2つのプログラム
ゆるんでいるとはつまるところ脳のプログラムの問題なのです。
このようにゆる体操で正しく要求されている内容を(といっても初級のリードの通りなのですが)自然にコントロールできる脳のプログラムを
「フリーなシステム」
と言います。
逆に両膝休み背腰ダラー体操での
「あっちを立てればこっちが立たず」
という脳の状態を
「スティフなシステム」
と言います。
これは一見運動が得意で体が柔らかそうな人かどうかはあまり関係ありません。
スティフなシステムの代表的な体使いをいくつか挙げると
- 背中を反らして力を出そうとする
- 立っている時に太腿の前側と横側に力を入れている
- 肘や膝を自然伸展して使う事が出来ない
- 強く、早く動こうとすればするほど腰や背中の上部に力が入る
等があります。
これらは部分的にそういう傾向があるというのではなく、(システムというぐらいですので)全体の特徴として同時に起こってくるのが脳のプログラムとしてのスティフなシステムの特徴なのです。
ですからスティフなシステムの人は両膝休み背腰ダラー体操を正しくやろうとしても、全体としての脳のプログラムがそのように出来るように元からなっていないので、先ほどのようにあっちを立てればこっちが立たずという状況に追い込まれてしまいます。
これに対してフリーなシステムの特徴としては
- 背中の力が抜けていて必要に応じて背骨が自由なポジションを取れる
- 立っている時に太腿の裏側(もも裏)を使っている
- 必要に応じて肘や膝を自然伸展して使う事が出来る
- 早く、強く動こうとするほど腰や背中の上部の力が抜ける
等があります。
スティフとすべてが反対になっていますね。
ただし必要に応じて自由なポジションが取れる事が大きな特徴です。
ですから背中を反らしたり、肘や膝を曲げて使わないといけない時はいつでもそのように出来るし、むしろスティフなシステムの人よりもうまくできます。
お気づきと思いますが、両膝休み背腰ダラー体操はこれらの要素がすべて要求される体操ですので、これを正しくできることでより自由な体使いができるようになります。
そして
ゆるんでいるという事は見た目の柔らかさではなく、フリーなシステムの体使いが出来るという事なのです。
ですからただ体がぐにゃぐにゃ柔らかくても、また関節の可動域が広くても、この体操のポイントが守れるかどうかで本当にゆるんでいるかどうかを簡単に判定できます。
サッカーでいうとメッシとC・ロナウドは体の見た目の感じは全く違います。
メッシは見た目も柔らかそうですがC・ロナウドは一見するとバキッと硬そうな感じがするときもありますね。
でも二人とも、ものすごくゆるんでいるのです。
それはフリーなシステムで体を使えているということです。
ですからお二人に両膝休み背腰ダラー体操をやっていただければきっとものすごく上手いのは間違いありません。
このように見た目の柔らかさとゆるんでいる、ゆるんでいないは一致しないことがあります。
私は何人もの方にこの体操を指導してきましたが、魚クネクネ体操やいるかクネクネ体操が比較的上手で一見ゆるんでいるように見える方でも、この体操の姿勢が全くできないという方にはたくさん出会いました。
また、10代のスポーツ選手の方でも先程の「あっちを立てればこっちが立たず」の状態の方もたくさんおられました。
疲労がたまってきたり老化が進んできたりするとこの体操の姿勢が綺麗にとれなくなってきます。
そういう意味ではトレーニングの進み具合だけでなく、自分の現在の体の状態をチェックするには最適の体操と言えます。
ですからスポーツ選手は試合の数日前から時々やってみて体調の管理に使ってみるのも良いと思います。
また普段からやり慣れていると、試合直前にこの体操をする事で体全体のコーディネイトを一気に高める事も出来るようになります。
そして、片膝休み腿裏スリスリ体操などをプラスするとよい状態で試合に臨めるようになりますよね。
運動科学者の高岡英夫先生は
昔の日本人は皆ゆるんでいた
ということをよくおっしゃっています。
昔はスポーツもありませんし、普通に生きれば日常生活に必要な動作以外はしないで一生を終わる人も多かったでしょう。
サッカーが出来なくても両膝休み背腰ダラー体操のような(実は)条件の厳しい体操をうまくできる人は皆ゆるんでいるということなのですね。
そして、絵や写真で見る限り昔の日本人は確かにそういう体を持っている人が多かったようです。
両膝休み背腰ダラー体操のような姿勢は本来誰にでもきるもののはずなのですが、現代人はこの姿勢が取れないほど身体能力が衰えているということなのでしょう。
4.まとめ
- 両膝休み背腰ダラー体操は本当にゆるんでいるかをチェックするには最適
- 柔らかいとゆるんでいるは同じではない
- 体の使い方にはフリーとスティフがある
- 昔の人の方が現代人よりはるかにゆるんでいた
ゆる体操で老化をできるだけ防ぎたい人、また専門種目があってそれに活かしたいと思っている方は時々この体操をやってみて、正しいやり方でご自分のゆるみ具合をチェックしてみてください。