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寸胴(ずんどう)は良いことだ!
みなさんこんにちは。突然ですが、ゆる体操をやっていると寸胴(ずんどう)になるという噂(?)があります。それは本当なのか?ゆる体操でダイエット、という内容の本も昔あったじゃないか!という声が聞こえてきそうですね。
結論ですが、それは本当です。ゆる体操をすると寸胴になります!
ではこの寸胴が良くないことなのかというと、実は人間にとって寸胴というのは良いことなのです。そして、寸胴はプロポーションを破壊(!)するものではありません。
今日はゆる体操と寸胴、プロポーションの関係についてお話ししたいと思います。
寸胴は健康の証
まず寸胴(ずんどう)な体幹がどういうものなのかご説明します。
まず、寸胴とは一般的にお腹の部分が太いというイメージがあると思います。特にお腹が横に大きいので太っていることと同一視されて、現在ではあまり良くないイメージです。
それどころか「太っている」という言葉の方がわかりやすいので、若い世代では寸胴という言葉そのものを知らない方も増えてきているかもしれません。
しかしこの寸胴とは、実は腹部のインナーマッスルが前後左右均等に発達した、大きな丸い”ゆるんだ”体幹部のことなのです。
そういった正しい意味での寸胴とはこういう人のことです。
左側の女性は引退したバレエダンサーのシルヴィ・ギエムです。一目非常に太いお腹まわりをしているのがわかりますね。こういう胴体を寸胴というのです。
もちろん日本語の寸胴という言葉が生まれた時代はインナーマッスルという概念はありませんが、体幹部のインナーマッスルでも特に横隔膜筋が発達し、良く効いている胴体は必ず前後左右に太くなります。さらに腹部のインナーマッスルは腸腰筋や多裂筋などの背骨系の筋肉と、腹横筋、そして体幹の底の骨盤底筋などで構成されていますが、横隔膜筋の下垂による内側からの圧力と、骨盤底筋・腸腰筋による引き上げ、腹横筋による外側からの締まりでお腹が周りが前後左右に丸くなるのですね。
そしてゆるんでいる体幹では骨盤そのものも仙腸関節が開いて大きく広がるので、長距離系のスポーツ選手やモデルのような脂肪がほとんどない人でも前後左右に大きな体幹部になるのです。
このような人達の「細さ」は、特に現代の若い世代がもてはやすようなキューっと縮こまった体幹部とは全く違うものです。同じ体重・同じ身長で比べることができればすぐわかるのですが、アスリートやモデルの体幹部は骨盤を含めて体幹部が開いていて大きいのです。
逆に体格はそのままで一般人並みの体脂肪になると、かなり前後左右に大きな体幹部の持ち主であることがわかるでしょう。
体幹が開いているということは関節の隙間も開いているということです。隙間が多いということはそこを流れる体液の循環が良くなるということですから、代謝が良くなり、基本的に健康になります。
そうです。実は寸胴の体幹部を持っている人は健康なのです。
寸胴と引き締まった胴体
このように寸胴は胴体まわりがゆるんで前後左右に大きく開いた状態のことです。運動科学では「ゆるむ」と「たるむ」は明確に区別されている言葉で、ゆるむという言葉はコントロールが自在な状態であるという意味を含みます。
寸胴の胴体の持ち主は胴体まわりがゆるんでいるのです。ですから自由に締めたりたるめたりすることができます。
本人がその気になればお腹を細く締め上げることができます。その人が何を求めているかで胴体まわりの太さは自然と変わります。高重心でいる必要がある場合はお腹まわりよりも胸郭まわりの方が大きく開いているでしょう。
実際に運動科学総合研究所の総合呼吸法(呼吸の達人)の講座ではお腹を極限まで膨らましたり、へこませたりするトレーニングを行います。両方が自在にできないと、本当にはゆるんでいるとは言えないのですね。
ただし、やはり本当に鍛え上げれらた胴回りは必要以上に引き締まっては見えないものです。なぜならば横隔膜筋も腹横筋も腸腰筋も発達するのでどうしてもお腹の容積が大きくなってしまうからです。
その代わり骨盤まわりの中殿筋などは抜けて来るので、仙腸関節が開いていても正面から見た腰回りののシルエットは細くみえることもあります。この辺りは横隔膜筋と腹横筋の使用比率にもよりますね。
また、軸(=センター)が発達するとお腹まわりだけでなく、胸郭も含めた体幹部全体が筒状に発達しますから、上半身に比べてお腹まわりのシルエットも大きく見えます。この傾向は軸の中でも坐骨や股関節の幅を持つ大径軸が発達している場合は特に顕著です。
腸腰筋が発達しすぎてお腹が大きいという人は滅多にいません(私も筋肉のサイズは普通です)が、日本の昔の時代ではアスリートと言える武芸者や飛脚などは当然腸腰筋が鍛えられていますからやはり寸胴な胴体をしていました。これは浮世絵や江戸時代後期の写真でも確認できることです。
体幹の閉じた日本人
それにしても最近私が思うことは、現代の日本人は体が小さく縮こまってしまっていて、非常にひ弱な印象を受けるということです。
改めて言いますが、痩せている、太っているといったことを言っているのではありません。
痩せていても体が開いて大きい人もいます。私が運動科学のトレーニングを始めた頃シドニーオリンピックがあり、高橋尚子が金メダルをとりましたが、彼女は小柄で体脂肪が少ないにも関わらず体幹部が大きく、特に普通の服を着た時の雰囲気が同じような体格の一般人とは全く違う印象を受けたのを覚えています。
それに比べて現代の日本人の特に女性はとにかく痩せていることを好む風潮がありますが、痩せていると同時に体が縮こまってしまうようになるのは、開いた体幹部を持っていると、どうしてもスケール感が大きくなるのでキュートな感じではなくなってしまうことを潜在的に感じているからだと私は考えています。先ほどのギエムなどはキュートとは縁遠い体型と性格なので典型的ですね。
日本人の女性の話をしましたが、男性も結局は同じことです。ほとんどの人が体が閉じて縮こまっています。男性の方が女性よりも固まりやすいことを考えるとその傾向はむしろ酷いかもしれませんね。
こういう男性は妙に不機嫌そうな表情をしていることが多いです。中高年になって体が固まってくるのも原因の一つですが、中高年だけでなく若い人でもそういう感じの人が多くなってきましたから、最近の傾向と言えるのかもしれません。
ちなみに当サイトのインストラクターである中田ひろこには、毎週ネットで会話しているアメリカ人の友人がいるのですが、日本の文化が大好きな彼女も、日本人の女性は体が小さく縮こまっているような印象を持っているそうです。
特に運動科学の知識がなくても、体が開いていてのびのびと生きている人にはそういう事がはっきりわかるのでしょうね。
そして逆に縮こまって固まっている人は、それを体の不調として感じることはあっても、その原因が自分の体が縮こまって固まっていることなのだ、とはなかなかわからないものです。
ゆるんでいる人から見れば、その人が体が縮こまっているかどうかはすぐにわかることですが、体が縮こまっている人からはゆるんでいる人がゆるんでいるということは分かりません。
ですから、縮こまっている人はそれがいかに不健康なことかどうかがわからないのです。
このように、痩せていて細い事と体幹が縮こまっていることは全く別物なのです。スリムな体型を望むこと自体は好き嫌いの問題なので良いのですが、メディア等で痩せたいあまり体幹部を縮こませるような身体の使い方を薦めたりすることは非常に問題です。
トレンドを紹介するのもメディアの重要な役割ですが、真に正しい情報を紹介することもメディアの役割なのですからもう少し正しい知識を勉強してほしいと思います。
隠れ肥満などもある意味縮こまった体幹のパターンと言えます。表面的には痩せていても体幹内部に内臓脂肪がついていることを隠れ肥満と言いますが、不健康の典型例ですよね。
それに比べて本当の意味での寸胴は、見た目胴体が太くてもインナーマッスルの方が発達しているので健康なのです。
ゆる体操で変わる!
ここで中田ひろこの写真を見てみましょう。YouTubeの動画のサムネイルに使っている写真ですが、今の方がはるかに体が大きくなっています。ちなみに体重は全く変わっていないので、この体の変化は体がゆるんで体幹が大きくなった、ということにつきます。
ここ数年間の変化としては最初に胸郭まわりが前後左右に大きくなりましたが、その後お腹まわりも大きくなってきています。お腹まわりが大きくなったといっても、重心も高くなっているので骨盤回りにドテっとした感じがありませんね。
この事は正面からの写真で比較すればわかりやすいと思います。
違う体操なのでわかりにくいかもしれませんが、この写真ではむしろ骨盤まわりは細くなっているように見えます。Vゾーン体操は重心が高くなるのでより中殿筋に頼る割合が減ったからですね。
その代わりやはりお腹まわりは前後左右に分厚くなっています。
中田ひろこはスポーツは苦手だそうですが、すこしアスリートっぽい体型になってきています。ゆる筋トレの効果もあるのでしょう。
そして2枚の写真とも2023年の方が体の裏側がゆるんで大きくなっている事がお分かりでしょうか?
本人いわく、結果的には全体的に体が大きくなって服のサイズが合わなくなってきているそうです。
ちなみにゆる体操の創始者である運動科学者の高岡英夫先生は、普通の人とは骨格のポジションや筋肉のつき方が違うので、服から靴からなかなか合うものがなくて苦労しているという話を聞いたことがあります。
中田ひろこはこの間ゆる体操や高度運動科学トレーニングしかしていませんから、この変化は100%ゆる体操をはじめとした運動科学の力といえます。
さらに、ゆる体操をしていると、このように体が大きくなるだけでなく、背も伸びてきます。特に体幹部は背骨がいくつも連なっている構造をしているので、一つ一つの間が1ミリでも開くと、全体としては2センチ以上背が伸びるということも不可能ではありません。私の自宅はリビングと自分の部屋の扉の高さが実測178〜179㎝程度なのですが、ゆるんで調子の良い時ほど若い時177.8㎝だった私の頭が当たります。
私は整形外科に勤務しています。整形外科の現場では膝の関節が数年で1〜2ミリ減ったという例はいくらでもみているので、逆のパターンとして体がゆるんで関節のすき間が開けば背が伸びるということは実際にありえることなのです。
さて、これらをまとめると
胴長で寸胴こそが健康で高能力
ということになりますね!
なんと昔の日本人体型そのものじゃないですか!
ただし現代の若い世代は確実に足の長さは伸びているので、胴長でも(昭和生まれの私と違って)足が長ければなんの問題もありませんよね。
さて、ここで体幹が開いて寸胴になれるゆる体操をご紹介しておきます。
寸胴になるため?の超おススメゆる体操
フワ系体操
フワフワで開いた体幹部を開発したいならば「フワ系」の体操は必須でしょう。
一見簡単そうですが、初級から中級、さらに高度運動科学のトレーニングへと進むと、非常に奥深い内容であると分かります。
センタースパー
フワ系だけではどうしても軸を忘れがちになります。センター通しスパー体操は軸を鍛える体操としては基本的ではありますが、どんなに上達しても頼りになる体操です。毎日の日課にしたいですよね。
息ハートロ
呼吸法は優しく、確実に体幹部を開発する方法です。ゆる体操では「息ゆる」がそれに当たりますが、慣れれば人目を気にせず出来るので、基本となる「息ハートロ」でも続ければ絶大な効果があります。
寸胴な人達図鑑
ギエムは代表的に寸胴のアスリートですが、結局は世の中の優秀な人は皆基本的に寸胴です。そういった人たちをご紹介しておきたいと思います。
バスケ 八村塁
画面左は八村塁です。
近年のバスケットボール、特にセンターやパワーフォワードの選手は寸胴の傾向が強いですが、日本人としては彼を紹介したくなりますね。
一見してドラム缶か丸太のような体幹部をしています。
服のしわの関係上、No8の番号のあたりが特に内側から外側に向かって圧が効いているのが確認しやすいかと思います。
ですが、意外なぐらい脚が細いのにも注目です。寸胴の体幹部は腸腰筋が発達していて相対的に大腿四頭筋(いわゆる「前もも」の筋肉)を使う比率が減るので、正面から見た時のシルエットは細くなるのです。
野球 大谷翔平
MLBのスーパースターである大谷サンももちろん寸胴です。No17の高さのあたりが異常に横に太いのがお分かりだと思います。
おそらく巨大なインナーマッスルをしていると思います。
また、ANGELSの文字の下部のあたり、みぞおちの部分も内圧で広がっていますね。
現代人は軸が通っていないので、この辺りで体が折れ曲がって凹んでいる人が圧倒的に多いです。
横隔膜筋が発達して立位姿勢に関与しているとこのようなお腹まわりになるのです。
この写真では特に首の下部、デコルテのあたりが胸から背中にかけてフワーッと広がっている感じもわかりやすいと思います。よく味わってみてください。
きっと呼吸の能力も高いのでしょうね。
サッカー リオネル メッシ
コミックのフットボールネーションでも紹介されていましたが、メッシは寸胴です。この大きく広がった腰・骨盤まわりをよく味わってください。
それだけでなく上半身もフワーッと丸く・広く発達しています。大谷もそうでしたが、MESSIの文字のあたりが上下左右に柔らかく広がっているのがお分かりかと思います。寸胴も極めると体幹裏側の腰や背中も大きく広がって丸くなるのです。
女神 サモトラケのニケ
上の写真はサモトラケのニケです。この角度から見ると、体幹部どころか脚も含めて筒状に身体が発達しているのがわかります。優秀な人間がそうなのですから、神はいわんや、と言うことなのでしょうが、こういうものは(潜在意識下でも)はっきりと作者がそれを認識していないと決して出来ないものです。
例えばこの写真を模写して寸分違わずコピーできたとしても、このような筒状の体幹を身体意識レベルで表現できるかどうかは全く別問題です。もちろん彫刻としてコピーした時でも同様です。
ちなみにニケはギエムと似た体型ですが、アスリートではないので少しふっくらしている分、余計に大きく見えますね。
まとめ
さて、そろそろ話をまとめたいと思います。
話が多岐に渡りましたが、私が今回一番強調したかったことは、寸胴という言葉が悪い意味で使われていることへの懸念です。言葉にはいろいろな意味があって良いですし、言葉の意味は変化するものです。しかし、
寸胴(体幹部が太い)=太っていて格好が悪い
というステレオタイプの考え方はとんでもない間違いなのです。
インナーマッスルが使えていることがなぜ健康に通じているのか?ということはこのサイトでも何度か語っているのでここではこれ以上述べませんが、要するに寸胴の身体は健康なのです。
極度に太っていることはいいことではありませんが、多少の脂肪はついているがインナーマッスルが使えている結果、寸胴で健康な身体と、痩せて一見スマートに見えるがインナーマッスルが使えていない不健康な身体はどちらが良いのか?という話です。(もちろん肥満体でインナーマッスルが使えていない身体はいろいろな意味で不健康なのですが・・・。)
現代社会の身体に対する考え方は見かけの良し悪しか、もしくは病気かそうでないかということしかなく、あまりにも乱暴すぎるのです。特に見かけの良し悪しの価値観は時代によって変わります。
それよりも大事なことは、昔の日本では優れた身体運動家(当時では主に優れた武術家のことを指しますが)は寸胴である、ということに気づいていたということです。
そして、現代でもその原則は何ら変わらず、ここまで見てきたように優秀なアスリートは皆寸胴なのです。
この記事を読まれた皆様がおかしな誤解を解かれて、本当に健康な身体を手に入れられるように願っています。
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