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達人調整師の手

みなさんこんにちは。達人調整師の中田了平です。
この間お客様に聞かれてへぇーと思った事があったので書いてみたいと思います。

その方は工事現場で働く40代の男性なのですが、職業病ともいえるでしょうか、腰痛に悩まされていて、月2回ほどのペースで達人調整を受けておられます。

ゆる体操も知っているので毎日やっておられるようですが、仕事の疲労に対して手入れが追いつかないので、という事らしいですね。

もう1年以上通われているのですが、先日ふっと

「先生の、それ、さすってもらうのってありますよね。それをたまに妻に頼んでやってもらったりするんですが、先生と同じようにやってもらおうと思って、どういうふうな感じかっていうのを説明しようと思うのですけど、それがどうにも説明出来ないんですよ。手が平らっていうんですかね、密着する感じ?ですかね。今こうやってやってもらってる感じを説明するんですが、こちらもうまく言葉で表現出来ないので上手くやってもらえないんです。どう言えばいいんですかね?」

とおっしゃるのです。

わたしは一瞬、うーん、どう説明したものかな、と思ったのですが、とりあえず

「まず奥様にさすってもらう時に、自分の手が気持ち良くなるようにやってもらうように言ってみたらどうですか?私も常にそのようにしています。」

とアドバイスしました。

これは肩甲骨さすりといってお互いに相手の背中や肩甲骨をさすってあげるメソッドと同じ発想です。

この「肩甲骨さすり」のコツは相手よりも自分が気持ち良くなるようにやることなのです。

達人調整も根本のところはこれと同じです。

私もプロですからお客様やクリニックの患者様から調整についてお褒めの言葉を時々頂きますが、具体的に手の感じについてそのように言われたことはあまり記憶がありません。

もちろん「先生にさすってもらうと気持ちいいですね」という感想はよくいってもらいますが、実際に受け手が感じている私の手の感じについて具体的に(とは言っても具体的に言えないという話なのですが)聞いたことはあまりなかったのでちょっと面白かったですね。

達人調整を実際に達人調整の開発者である高岡先生から習ったことのある人なら、調整師が気をつけなければいけない身体の使い方は色々あることはご存知かと思います。

もちろん具体的な内容については、守秘義務がありますのでここでは詳しく述べることは出来ませんが、達人調整の技法はすべて自分がゆるむように出来ているので、当然相手をさする時は自分の手がゆるむように行うのです。

すこし思い当たることと言えば、別の時にリハビリで体操指導をしていた時のことですが、その方はばね指をはじめとした手の症状で困っていたので手スリ、手プラ、肘クルンなどをやっていただいていたのですが、かなり症状が改善してきたところで、さすりの効果を味わってもらうために、20分の指導時間の間手スリと肘クルンのさすりだけを徹底的にやってもらった事がありました。その時もちろん患者様もそのすばらしい効果を感じていただいたのですが、何より自分の前腕から手がかなりゆるんでしまって、身体意識でいうところのパーム※1が顕在的にしっかりと感じられたという経験がありました。

手をさすって近づけてみると、お互いの手の温かみが感じられるものですが、その温かみが感じられるはるか外側の空間(だいたい10㎝ぐらい外側まで)にはっきりとほわっとした柔らかい意識が感じられたのです。

「おお、なるほど、これがパームか・・・」

とその時は妙に感じいったものです。ちなみに右腕は左腕ほど強く感じなかったので、変な思い込みなどではなく、左腕にある程度強い温性のクオリティを持ったパームが出来ていたのでしょう。

その時は自分の顕在意識に上るほどの強さだったのでしょうが、普段からこれの1/10か1/100ぐらいのパームはあるのかもしれませんね。

先ほどのお客様もそのパームを感じていて、なんとかそれを表現しようとしていたのかもしれません。

もっとも私が調整を施すときには「パームの作り方」などというものは知らないので、「パームを作ろう」などということは微塵も考えませんが、手がゆるむようにということは当然意識しますし、その術技で要求される課題、さらに最も意識する事は地芯※2に乗ることと、さらには地芯からのゆるで施術ができるようにということは意識します。
実際のところ、相手の状態に左右されずに自分がその状態になるのはなかなか難しいのですが、そこは達人調整ですので、皆様にゆるんで頂きながら自分の鍛錬としても行なっている訳ですね。

このサイトでいつも述べているように、ゆるむことの根本は地芯に乗る事とも言えますから、まさに全ての動きは地芯に乗るように行わなければなりません。

先ほどのお客様の私の手に対するご感想は、パームだけではなく、そういったもの全てが合わさった結果としての私の「手」というものを、ご自分の主観として感じたものだったのでしょうね。

私もJリーガーから国家プロジェクトに関わる技術者、さらには世界を飛び回るNGOの職員、もちろん主婦の方から90歳を超えたご老人まで様々な方を調整していますが、改めて客観的に感想を言っていただけると自分のトレーニングの方向性も定まりやすいですし、もちろん励みにもなりますから嬉しいですね。

ちなみに先のアドバイスをしたあと、

「実は企業秘密も色々ありますし、自分もプロですからそれなりに鍛錬しているのでその結果としてのご感想なのでしょうけど、一番のコツは奥様にまず自分の手がゆるむようにやってあげることですよ。そうしたら奥様もよろこびますしね。」

とは付け加えておきました(笑)

※1パーム 運動科学者の高岡英夫が発見した身体意識の1つ。熱性または温性のエネルギーが手掌を中心に集まってできる。人を励ましたり、奮い立たたせることができる。また手の繊細かつ柔軟なコントロールを可能にする。(『「身体意識」から観る天才学』より抜粋)
※2地芯 地球の重力の中心が身体意識化された状態。

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