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扁平足・開帳足・外反母趾・強剛母趾の対策

ゆる体操コラム

皆さんこんにちは。ゆるポータル神戸、達人調整師の中田了平です。

さて、世の中には様々な足の症状に悩まされている方々も多いと思います。

タイトルの病名はもちろんですが、特に病名が付かなくても足が疲れやすいという方まで含むと、ほとんどの人がなんらかの足回りの症状を経験したことがあるのではないでしょうか?

しかし実は、足の様々な症状はたった一つの方法で改善できます。

それは立ち方の改善です。

今日は足の様々なトラブルとその解決方法をお話ししてみたいと思います。

足の構造

まずは基本的な話からしてみたいと思います。
足は3点で体重を支える構造をしています。その3点とは母趾の付け根、小趾の付け根、そして踵です。

足裏の図

そして足の骨格はこの3点を支点とした縦のアーチと横のアーチをもった構造をしています。
実は足の様々な症状はこのアーチが何らかの理由でつぶれる事が直接的、間接的な原因となって起こるのです。

次に各症状について見ていきましょう。

足の様々な症状

1.扁平足

足のアーチの内、縦のアーチがつぶれる事で起こる症状です。無症状の場合もありますが、生まれつきの場合と、経年変化により起こる場合があります。

2.開帳足

横のアーチがつぶれる事で起こる症状です。扁平足と同様無症状の場合も多いです。

3.外反母趾

親指の付け根が小指側に向かって曲がって変形してしまった状態です。痛みがない場合も多いですが、靴を適切に選ばないと擦れたりして痛みを伴います。

4.強剛母趾

親指の付け根の関節をそらすと(医学的には伸展位)痛みが出ます。軟骨が痛んで関節の隙間がなくなってしまっていたり、逆に余分な骨が出来て周りの組織を圧迫したりすると痛みを伴います。

5.その他腱炎、筋膜炎、痺れなどの症状

アキレス腱炎や足底筋膜炎など、足裏の筋肉を酷使した時に起こります。炎症を起こしている腱の付着部に余分な骨(骨棘)が出来ている事も多いです。それらの筋肉や骨が神経を圧迫すると痺れが出ます。

原因

さて、これらの症状は生まれつきの場合もありますが、経年変化に伴って起こる場合は理由は一つです。
それは足裏の重心が正しい位置からズレる事です。
ではそもそも正しい重心の位置とはどこにあるのでしょうか?それは足の構造をよく見ることで見えてきます。

ではまず、足の構造を横から見て見ましょう。

足の骨格図
足を内側から見たときの骨格図
細かい描写は省略してあります

まず足関節ですが、内側は脛の骨(脛骨)と土台となる足側の骨(距骨)で構成されています。
脛の外側に腓骨という骨がありますが、腓骨は太ももの骨である大腿骨と繋がっていませんから、人体は構造上脛骨に体重が乗るようになっています。

下肢の骨格図
下肢の骨格図

その証拠に脛骨と腓骨を比べると、脛骨の方がかなり太いですね。

構造上全身の体重は脛骨に乗ってくるのですから、足裏の重心の位置は脛骨の真下、という事になりますね。この真下の位置はちょうどアーチになっていて地面と触れていませんが、この脛骨直下点の部分が構造上、真っ直ぐ立った時の重心の位置、という事になります。
アーチ状になっているのは東京タワーやエッフェル塔と同じでその方が塔を支えるには丈夫な構造をしているからです。
ちなみに先ほどご説明した足裏で体重を支持する3点は、あくまでアーチの支持の位置であって重心の位置ではないことにご注意下さい。
ここで皆さん一度立って自分の重心の位置を確かめてみましょう。わからない方のために確かめ方をざっくり言うと、立った時に一番地面を押している、踏ん張っている部分があればそれが重心の位置です。

いかがでしょうか?確かめてみると母趾の付け根かその周辺、という人が多いのではないでしょうか?

足の構造と重心線
足の構造と重心線

人体の構造上、静止立位での重心の位置は脛骨直下点以外ありえません。東京タワーの塔の部分をわざわざ前倒しにして設計する人はいないでしょう。重心のチェックで脛骨直下点以外だった人はそれだけ重心の位置が本来の位置よりずれているということになるのです。
運動科学では脛骨直下点の足裏の部分を「ウナ」と言いますが、このウナの部分に重心が乗ってないとどうなるのでしょう。

足裏の重心の正しい位置と間違った位置

もう一度足の骨格図を眺めてください。

足の解剖図

ざっくりと見てみると、前より後ろ側の方が太くて丈夫な骨が多いですね。
逆に舟状骨・楔状骨・中足骨・・・と、先の方に行けば行くほど骨は細く繊細になっています。
ということはやはり足の先端部分は体重をしっかり支えるようには出来ていないということなのです。

これは手で考えてみるとわかりやすいです。
腕で身体を支えてください、と言われると、ほとんどの人は手根部から手の平をついて身体を支えると思います。まさか指で支えようとする人はいないでしょう。

足先も手と同じように5本に分かれていますが、この部分に体重がのると足が体重を骨格で支えきれずに潰れてしまいます。
実際に母趾球支持と脛骨直下点支持で足先の写真を比べてみましょう。

足先の写真 ウナ加重
脛骨直下点支持での足先の写真
足先の写真 母趾球加重
母趾球付近支持での足先の写真

一枚目が脛骨直下点支持、二枚目が母趾球支持の足先をほぼ同じ高さから撮影したものです。
写真はわかりやすく横つぶれの比較となっていますが、縦にもつぶれます。横につぶれるのが開帳足、縦につぶれるのが扁平足です。

不思議なもので、手で身体を支えて、と言われると指で支える人はいないのに、足は指で支えるのが普通になってしまっているのですね。先ほど確認したように足先の指は細く5本に分かれていますから、そもそも長時間体重を支えるような構造にはなっていません。
手の指で長時間身体を支えるのが困難なように、足の指でも長時間身体を支えるのは困難なのです。
ですから長時間足先で体重を支えると縦アーチがつぶれる扁平足や横アーチがつぶれる開帳足になってしまうのです。

さらに横につぶれた状態で靴を履いていると、靴先の形状にもよりますが、ひらいた足先が靴に入らなくなってくるので、親指の付け根の部分が身体の外側の方向に折れ曲がって変形します。これが外反母趾です。外反母趾が女性に多いの重心が前にズレやすく、足先がすぼまったヒールを履くことが多い為ですね。
また、長時間親指の付け根で踏ん張っている状態が続くと、親指の付け根の関節内で軟骨がすり減ったり、余分な骨ができたりして痛みを伴うようになってきます。これが強剛母趾です。

ですから、足の変形はすべて重心の位置がずれる事による足の負担からくる経年変化が原因なのです。

さて、そこまでいかなくても足が疲れやすいとか、痺れるとかそういった症状で悩んでおられる方もいると思いますが、それも全く同じ理屈で説明できます。

静止立位での足裏の重心の位置がウナから外れると、棒を真っ直ぐ立てていない時と同じで、前側か後側かに身体が倒れていく事になります。
ですから足裏や脛ふくらはぎまわりの筋肉を使って倒れていかないように固定しなければなりません。
足回りの筋肉は太ももや体幹に比べて大変細いですから、本来は倒れていく体重を支え続けられるようには出来ていません。

ですから余分な負荷が筋肉にかかって、疲れやすいのです。ずっと緊張しているので、代謝も悪くなって足がむくみますし、ある部分に癖が強いと、その周辺の神経を圧迫してしまって痺れがずっと続くような状態になってしまいます。

足の痺れは好発部位があって、それは第3趾(中指)周辺です。その部位に痺れがでる症状をモートン病といいますが、要するにその周辺の筋肉でふんばっているので、神経が圧迫されて痺れが出ているのです。足根管症候群のように他の部位に痺れが出たとしても大抵は重心の位置のズレによるその人の癖によって神経が圧迫されて(※1)できるものです。

このように、疲労や痺れも足裏の重心の位置のズレから説明できるものがほとんどなのです。

治療と対策

さて、対策や治療ですが、足の治療が得意な整形外科ならオーダーメイドのインソールを作って足が潰れないように矯正をかけます。
インソールで大事なポイントは、そもそも潰れた足に矯正をかけることが目的なのですから、アーチがしっかりしていて、しかも足が靴の中で無駄な動きをしないように、固く作られているものが良いです。
特に土踏まずから踵にかけては体重を支えられるように固く作ってあります。
勘違いされている方が多いのですが、特別な理由がない場合はこの部分にクッションは基本的に不要です。

砂地を歩くと普通より疲れるように、変にクッションがあると地面からの反発をもらえなくなって足が疲れやすくなります。
クッションは自分の本来は身体がしてくれるのであって、足底はしっかりしている方が良いのです。
ちなみに現代人は足裏が固くなっているので、固いインソールを作ると最初は足裏が痛くなってしまう人が多いようです。

使っていると慣れるのですが、こういった理由で市販のインソールはクレーム対策として固く作っていないものが多いです。

インソールのアーチの角度にしても日本人は外国人に比べて元々扁平足気味の人が多いので、市販のインソールでアーチを高くしてしまうと最初は痛みが出てしまうので、これもクレーム対策で浅く作って場合があります。

その結果、扁平足、開帳足対策になっていないという本末転倒の製品が国産では多いようです。とはいっても靴底やインソールが硬すぎると、その人の他の関節の状態(例えば膝や股関節をすでに壊している等)や趣味で長距離を歩くような方にとっては、逆に疲労に耐えられない場合もあるかもしれません。そのあたりは臨機応変に考える必要もあると思います。

整形外科でオーダーメイドでインソールを作れば良いのですが、海外は足の健康についての理解が進んでいるので、市販品のインソールならシダスや、靴そのものではビルケンシュトックぐらいの固いインソールが入っているものが目安になると思います。また、ベースになる靴そのものは有名メーカーの一万円を超えるクラスのものなら、土踏まずから踵をしっかり作ってあるのでそのクラスで好きなメーカーのものを選んでいただければ良いと思います。

ちなみにビルケンシュトックは直販店にいけば試着をさせてくれるので、(買うと安くはありませんが!)一度行って硬さを確かめてみるのも良いかと思います。
(ただし厳密にいうとビルケンシュトックは脛骨直下点(ウナ)に乗れるような設計にはなっていません。)

さて、しっかりしたインソールでアーチを作っても、実は重心が前のままだと、そのアーチを乗り越えてしまって身体を支えるので、せっかくのインソールも結局のところ意味が無くなってしまう場合もあります。
ですから本当のところは、自分で脛骨直下点(ウナ)が身体意識化されて、潜在的に使えるようにならないと意味がないのです。

ウナを使えるようにするワークはゆる体操の中には直接的には含まれていませんが、運動科学総合研究所の無料動画で紹介されているので、それをご自分でやっていただくのが一番かと思います。

外部リンク

ウナに乗れるようになるとその瞬間からその人なりに足のアーチが改善します。縦のアーチは踵骨の地面に対する角度、横のアーチつぶれ具合は中足骨の第1趾と第5趾の角度で測りますが、ウナに乗った瞬間からわずかでもアーチが改善する(横幅が狭くなる)のです。それは先ほどの写真でもご覧になられた通りです。

そうすれば外反母趾や強剛母趾の原因になっている足の力が取れるので、変形してしまった関節は元には戻りませんが、負荷をかけないようにすると炎症は取れていくので次第に痛みは引いていきます。

ウナに乗れるようになると母趾で踏ん張る必要はなくなりますから、次第に痛みは引いていくと思われます。

ちなみに登山愛好者の方には外反母趾が多いと聞きましたが、階段や坂のように不安定な場所の移動が多いと、心理的に体重を前にかけたくなるものです。それで母趾で踏ん張ることが多くなり外反母趾が増えるのだと思います。

ゆる体操でも足回りのケアの方法はたくさんあります。

足足系と言われる体操がそれにあたります。長年のポジションの悪さで足回りが固くなって、踏ん張る癖が取れない方はウナのワークをやっても効果が十分に出ない時があります。そういう方は足足系の体操に普段から取り組まれると、さらに素晴らしい効果が期待されますし、ゆる体操だけでも足回りの様々な症状はかなり改善されます。

もちろんその上で良いインソールを使用されると鬼に金棒ですよね。

また、腰や背中が力むと重心が前にずれやすいですから、そうならないように寝ゆる黄金の3点セットや背モゾ・肩甲モゾを普段からしておく事も大変重要です。
また身体の軸(=センター)はウナを通りますので、これらのワークとセンター通しスパー体操をやっておくとさらに良いと思います。

2024年7月発売の高岡先生の書籍、「背骨1分ゆる体操」にはそのあたりの話題も書いてありますので、そちらを読んでいただくのもおすすめですよ!

もちろん達人調整でも皆様のお役にたてると思います。

今回は何故重心の位置がずれるのかという話は難しくなりすぎるので割愛しましたが、いずれはその件についてもお話し出来ればと思いますので楽しみにお待ちください。

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(※1)足の痺れは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が原因の場合もあります。

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