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リハビリちょこっと話 ④腰

私は整形外科でリハビリをしています。

リハビリといっても怪我の回復期のリハビリをすることは少なく、やっている事はゆる体操や達人調整を利用した身体のお手入れの仕方、といった感じでしょうか。

さて、腰痛は私の勤めている整形外科でも「本丸」とも言える症状です。
私が研修中に院長先生から聞いたことをいきなりバラしてしまいますが、

「実はほとんどの整形外科にとって、腰痛は鬼門でね。ヘルニアや狭窄などの所見がなければやる事がないんだよね」

という事なんだそうです。

やる事がない、といっても湿布と飲み薬ぐらいは出してくれます。それで良くなればまあ良いですし、実際にそれでよくなる方も多いのですが、慢性化してしまって痛みがなかなか取れなくなっても、画像の症状に変化がなければそれ以上はする事はありません。

変形性腰椎症といっても骨が少しぐらい変形したからといってそれが痛みの原因になっているかどうかは別問題です。また筋筋膜性腰痛症などというものは要するに

「腰の筋肉が痛みを発していますね」

と言うことを病名にしただけで、症状の状況を説明しているのであって原因を表している病名ではありません。
原因がよくわからないからとりあえず腰の筋肉が痛んでいる症状に対して、大人の事情で(⁉︎)名前をつけているにともいえますね。

整形外科的な本格的で専門的な腰痛の治療というのは、怪我や骨折やすべり症などが無ければ神経痛になって初めて始まるとも言えます。具体的な病名で言うと、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による神経痛といったものですね。
これらはゆる体操ではどうにもなりません(実はどうにかなると思っていますが、正確に言うと今の私では自分の症状も他人の症状もどうにも出来ません)。
とはいってもヘルニアや狭窄も全てが神経痛を起こしているわけではなく、神経痛があっても筋性痛も同時に起こっていることも多いので、その割合によっては神経痛とみられる症状がメインでもゆる体操で緩和する事ができます。

わたしは最近リハビリで数か月前からヘルニアの症状に悩んでいる中年の男性を担当させていただいていたのですが、その方は数年前からヘルニアによる下肢の痛みや痺れに悩んでいておられて、それまでの主治医の元で神経痛専用の処方を内服していたのですが、それもあまり効果がなく、あまりの辛さに転院してこられたのでした。

その内服自体はいわゆる椎間板ヘルニアに対する標準的な治療で、前のクリニックでの治療そのものはけっしておかしな事はなかったのですが、痛みが引かないのでだんだんとご本人の薬の飲み方もいい加減になり、どうしたらいいのかわからなくなっていたのですね。

こういう事は時々ある事なのですが、実は本当はもう神経痛の症状はおさまってていたのですね。

私の勤めているクリニックの院長の見解によると、ずっと続いていたのは筋性痛と、もっと厄介な脳の下降抑制系とよばれる中枢神経が、疼痛をコントロールする能力の低下によるものと考えられます。
ですから神経痛の薬が効かないのです。でも確かにヘルニアはあったので神経痛の薬を出すことは間違いでは無いのです。

ヘルニアや狭窄による痛みはかなりのものですから(私は何度も経験済みです)痛みを我慢することで筋肉の緊張を呼び起こし、それが普通の腰痛や下肢痛を引き起こすことは普通にあります。

さらに痛みがずっと続くと脳が痛みをコントロールする能力が鈍ってしまい、中枢神経が正しい判断が出来なくなる事もあります。

こう言う場合はゆる体操にも出番があります。

その方は最初は膝コゾコゾ体操も出来ないほど脚や腰が辛かったのですが、意外に身体の柔らかさがあった事と、体操を丁寧にやろうとする感じが見られたので、このパターンを何人も過去に担当して来た私にはやれる自信がありました。

もちろんDrの診察と連携しながらというのが前提ですが、少し前に撮ったMRIでもヘルニアが吸収されている事がわかっていましたし、内服のコントロールでも神経痛の要素が少ないことはわかっていたので、自信を持ってゆる体操をご指導することが出来たのです。

膝コゾがなんとか出来るようになった時は一安心でしたが、最近は何となく歩くのも楽になってきたと言われるようになりました。

ま、そちらの方がゆる体操の本当の効果と言えるかもしれませんね。

ゆる体操・達人調整は治療の体系ではありませんので、本来は日常生活が自分でできる健康な人に対して効果を発揮するものです。
リハビリでの使用は応用・転用の部類に入りますが、整形外科の現場でも確実に役にたつ、と言えるでしょう。しかし過信は禁物です。具合が悪い時はご自分が信頼している医者に早めにかかるのが良いと思います。

特に持病をお持ちの方は主治医をお持ちになって、定期的に経過観察を受けるのが良いと思います。

ご自宅でゆる体操を学びたい方へ(毎月5日配信)

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