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リハビリちょこっと話 ③膝・股関節
私は整形外科でリハビリをしています。
リハビリといっても怪我の回復期のリハビリをすることは少なく、やっている事はゆる体操や達人調整を利用した身体のお手入れの仕方、といった感じでしょうか。
さて、膝の痛みを訴える方は大変多いです。首肩・腰・膝が3大疼痛部位、といったところでしょうか。
膝の痛みの原因はほとんとが膝のアラインメントが狂う事、それも捻れる方向に狂う事にあります。
膝は身体の前後方向にしか動くことが出来ません。しかし誰でも様々な原因によって捻じられない膝を捻って使うようになっていきます。
捻じられないものに無理やり捻る力を加えたらどうなるか?
機械だったらすぐに壊れてしまいますよね。人間は自己修復能力がありますからすぐには壊れないで済むのですが、軟骨や半月板は基本的に修復できません。靭帯も傷んでしまえば自分で修復はできません。
膝に限らずどの関節もすり減ったりすると基本的に元には戻りません。
ですから膝は捻らないように使うのが長持ちさせるコツです。
とはいっても現実には脚を捻るような動作は日常茶飯事です。ではどうすれば膝を捻らないで脚を使えるようになるのかというと、股関節と足首がゆるんで滑らかに動いてくれれば良いのです。特に股関節の滑らかさは必要です。
脚を、どの様にどんな動かし方をしても、股関節〜膝〜つま先(運動科学の用語で言うと正確には「ケマ」)が一直線の方向を向くと、膝は縦方向にしか力がかからないのでその能力を思う存分発揮してくれます。
私がリハビリで担当している方で、以前ゆる体操教室に通っていた70代の男性がおられます。
その方はギターが趣味で、手首スリプラ体操をした時の自分のギターの音の変化に驚いて、ゆる体操はいいものだ、というふうに感じておられる方でした。
しかしなんと、どうもそれでゆる体操をわかった気になってしまって、もうコツは掴んだから家でやります、と教室を辞めてしまったそうなのです。
しかし最近は膝と股関節周りの症状に悩んでおられて、特に春にコロナに感染した後は冷え性や眼精疲労に加え、いろいろな症状に悩んでおられました。
とりあえず今はアフターコロナと言われる症状の事は置いておいて、病気などで極度の疲労や体力の低下に襲われると以前から持っていた自分の身体的な短所が強く現れることはあります。
そして一度現れるとそれがまた定着してしまう事もよくある事です。
ですから私は丁寧に股関節まわりの体操を指導しました。
踵クルクル体操にしても太腿ユッタリ開閉体操にしても、本当にできるようになるにはある程度の「鍛錬」が必要になります。
股関節に先天的な異常がある場合は丁寧にやってもなかなか難しいところはあるのですが、そういった先天的な異常がなければ、股関節や膝が悪いというのは、要するに身体意識の「転子」が無いのです。転子が出来ればかなりの場合症状は改善されます。
ただし股関節は身体の奥にあって感じることすらも難しい関節です。
感じられない物が滑らかに動くはずもなく、そういうことで股関節の身体意識化は結構困難な事です。「リハビリちょこっと話①猫背」でお話ししたように、猫背を直したければ、少なくとも丸くなってしまっている胸椎が感じられるようになることが必要です。感じられないものは動かすことは出来ません。
股関節もそれと同じことで股関節の形とその中心が身体意識化した「転子」が出来てこないとどんどん動かなくなるばかりです。
しかし股関節はタフで高機能な関節でもあるので、無茶苦茶な使い方をしても最初のうちは痛みを感じることは少なく、その分膝のほうが被害を受けてしてまうのです。
とくに変形が進んでしまってからでは、股関節にしても膝にしても症状の緩和は出来るにしても、以前のように自由に動き回ると言うことは難しいと言わざるを得ません。
先日、先ほどの方は
「たった一年半教室に通っただけででゆる体操がわかったつもりになっていたのは甘かったです」
と素直に認めておられました。
ゆる体操はとっつきやすい体操ですが、教室に通って効果がでるのは、先生が自分ができない部分をカバーしてくれているからであって、それで自分が上手くなったと思うのは大間違いです。
学校や塾で、前で先生が問題を解いてくれても家に帰って自分で出来ないのと同じことですね。
と言うことで結論は
ゆる体操を舐めんじゃねーよ!
でした(あれっ?)。