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リハビリちょこっと話 ①猫背
私は整形外科でリハビリをしています。
リハビリといっても怪我の回復期のリハビリをすることは少なく、やっている事はゆる体操や達人調整を利用した身体のお手入れの仕方、といった感じでしょうか。
身体のお手入れなので、姿勢に関する相談を受けることが多いのですが、やはり多いのはご高齢の方からの猫背の相談ですね。
「最近猫背になってきて、娘からも(何故か娘が多い)よく注意されるんですけど、いくら頑張っても気がついたらすぐに元に戻ってしまうのです。なんとかなりますか?」
という感じです。
で、そう言いながら姿勢を正す(こちらの基準から見ると全然正されてはいないのですが)のを見ていると、ほとんど固まってしまった背骨のなんとか動くところを一生懸命反らして姿勢を作ろうとしています。
猫背の人は大抵胸椎の上半分ぐらいが固まってしまって動かなくなってしまっているので、その動かないところが動かないとはっきりいってどうしようもない訳です。
しかし、この胸椎上部というところは身体意識でいうところの拘束背柱に覆われていて、まず動かすことができない。
なぜ拘束背柱に覆われるのかというと、腕を使う時に土台になるところであるという事と、そもそも背骨が肋骨に覆われていて動かすのが難しいから、という2点が大きな理由となっているのです。
ではなぜ、前に倒れてくるのかというと、そもそも背骨というものは理想的な重心線(垂軸)よりやや後ろにあります。特に胸椎は後弯していますから、垂軸の位置は胸椎より前です。ただでさえ重い頭を支えないといけない部分でもあるのに、重心の位置より支えが後ろにあれば、頭はどんどん前にいってしまいます。それを支えようとして、首から背中にある僧帽筋や背筋などが必要以上に緊張して、胸椎がだんだんと動かなくなってくるのです。
また、反対に頭の位置が前にある事が多いと、その分僧帽筋や背筋に力が入ったままになるので、その形のまま固まってしまう、という事にもなりますね。
背骨が固まってしまうと垂軸などはわからなくなり、当然センターは通らなくなりますから、センターによって作られる一番楽な姿勢、というものがそもそもわからなくなります。
このように猫背は胸椎が固まってしまってそこにセンターが通らなくなるために出来る状態ですから、根本的な解決としては
- ①胸椎をゆるめて動かせるようにする
- ②センターを通す
と言う順番しか、改善の方法はありません。
ところが流石に70歳から80歳になって猫背で身体が辛くなるまでお手入れを放っておいた状況では、胸椎が動くようになるという事はかなり難しいと言わざるをえません。(若いころから姿勢を意識していて、背筋を伸ばすようにしている人は姿勢は悪くならない場合ももちろんありますが、まっすぐのまま体は固まります。)
猫背になってしまった人は、まずは裏側ををゆるめる背モゾや腰モゾをやってもらうのですが、徐々に進んで本当に胸椎を動かしてもらおうとしだすと、もう大抵その方々はリハビリに来なくなるのです。
あまりにもこのような事が続くので、私は
「猫背は理論的には治すことは出来ますが、はっきり言って難しいです。かなり長期戦になりますが、それでも治したいですか?」
と最初にきいてみる事にしました。ほとんどの人はお願いします、と言いますが、やっぱり大抵来なくなりますね(笑)
という訳で、猫背が気になる、という程度のモチベーションでは胸椎は動かせるようにはならないということを最近なんとなく思うようになってきました。
それほど背骨の拘束は支配的なのです。私の勤め先の整形外科のリハビリは身体のケアの仕方を教えるものなので、来るかどうかは患者さんの任意です。ですから、今ものすごく困っている、という事でないと来なくなってしまうのだと思います。でも少しでも背中をゆるめること自体は疲労回復など様々な意味があるので、体操をすること自体は無駄にはなりません。
ですから、猫背に拘らずにゆる体操が好きになってもらうようにこちらがうまくリードしていかなければなりません。
こういう事もあって、結論は猫背が嫌なら一番の解決方法は猫背にならない事です。ですから私は出来るだけ早く(できれば20代から)背モゾに取り組んでもらいたいと思っています。
だから今回はこうやって脅かしておきますね(笑)